【ネコミケ】修羅場を超えろ！寝子島大爆発！（芸術的な意味で）｜リアクション

【ネコミケ】修羅場を超えろ！寝子島大爆発！（芸術的な意味で）

　桜庭円は旧市街にある自宅の縁側でゴロゴロしていた。
「選択課題、何にしようかなー、ねー、にゃーくん？」
　愛猫のにゃーくんに話し掛けてみるが、いい考えは思い浮かばない。
　仕方がないので、寝子島書房の『動物と拳で語ろう』『某は猫で候』『察してくれニャ！』を読み漁っていた。
　そのまま午後四時を迎えた時、桜庭は突然上体を起こした。
「すごい！　今、にゃーくんを見た瞬間、天啓が降りてきた……」
　桜庭は自然と涙をこぼしていた。
「なんて美しいシステムなんだ……！　これはなんとしても後世に残さねば！」
　桜庭はにゃーくんを抱き上げると、急いで自室へ向かっていった。
「ボクはッ！　天から貰い受けた美しいシステムを用いてッ！　猫と遊べるボードゲームを作りあげる！」
　……どうしてそうなった？

「猫の目にも認識しやすいようなつくりに、興味を引きやすいように！　そして行動学から、猫にも解る様なシステムを再現するんだ！」
　桜庭の紅い目が大きく開き、口角は目一杯まで釣り上がっている。
　最高にハイテンションである。
　適当な空き箱を展開し、ボードゲーム用の厚紙として用いる。
　更に数十枚に切り分けたカードに、記号と文章を書き込んでいく。
「課題をクリアするたびに猫と人間双方が双方にご褒美が！　抱き上げたり、昼寝したりできる！　猫にも理解できるような記号とコマ、説明書も付けよう！　そして、このカードが猫と人間のゲーム中の意思疎通を可能にするコミュニケーションカードだ！」
　まっさらな手帳は、今や複雑なルールがどのページにもびっしり書き込まれ、ボード版はまるでTRPGめいたコマとイベントで埋め尽くされている。
　カードはイベント時に使用するようで、クリアした時のご褒美も明記されている。
「うぉぉ！　時間が惜しい！　何時この天恵が再び現れるという保証は無いよ！　寝てなんていられない！　一気に作り上げるんだ！」
　夕食もそこそこに、桜庭は自室に篭もりきり。
　だが、ノンストップで作業したせいか、徐々に睡魔が彼女を襲う。
「フフフ、初めて使う……。寝子島書房刊『初めてのツボ、ヤバイ編』の眠気を先送りするツボ、“ネムネムプッツオフ”を今こそ押すとき！」
　桜庭は眉間の中央に鉛筆を宛てがうと、躊躇わずに一気に穿った！
「ハァッ！」
　プスッと１cmほど先端が突き刺さっているが、桜庭は痛がるどころか晴れやかな表情だ。
「悪くない、悪くないぞ！　これでまだ戦える……！」
　眠気を先送りにした桜庭は、一気にボードゲームを仕上げていく！

　桜庭はいつの間にか眠りこけていた。
「あれ？　ボク、いつの間に寝ちゃったんだろう？」
　眠気まなこをこすりながら、目の前に出来上がったボードゲームの箱を眺めていた。
「いつの間に、ボクはボードゲームで遊ぶにゃーくんの写真をフォトショ●プで箱にデザインしているんだろう？」
　彼女は昨日の記憶が若干あやふやだった。
　箱を開け、説明書を読んでみる。
「……あれ？　昨日は理屈が分かっていたのに、今読んでもまったく訳分からないよ……」
　神魂効果が抜けた今、“美しいシステム”をキレイさっぱり忘却してしまった桜庭。
　とりあえず、にゃーくんとともに遊んでみると、キチンと遊べてしまっている事実に驚愕した。
「ふ、普通に遊べている……だと……？　しかも、メモ書きで詳細まで載ってる……。意味不明だけど、やろうと思えば量産が出来てしまう……！」
　これどうしよ、としばらく腕を組んで悩む桜庭であった。