【ネコミケ】修羅場を超えろ！寝子島大爆発！（芸術的な意味で）｜リアクション

【ネコミケ】修羅場を超えろ！寝子島大爆発！（芸術的な意味で）

　追分義一は桜花寮４階の自室で、宝の地図を必死に紐解いていた。
　ルームメイトに迷惑が掛からぬように、学習机の明かりだけをつけながら、だ。
　彼はネコミケのサークルカタログ（冊子版）で『魔法少女ネッコロガリーナ』という作品のサークルチェックを入念に行っていた。
「あ、このサークル、今年の新刊はR18本か、残念だな」
　追分は無表情のまま赤ペンで×印を付けた。
　彼はエロ要素のある本は除外している。
　エロネタは吐き気がするほど苦手な彼は、サークルカットで肌色率が高いページは最初から見ない。
　全年齢向けのオールキャラ本を中心に、気に入ったサークルを会場マップ（宝の地図）に書き写していく。
「ああネコミケ楽しみだ。寝子島ばんざい。――二次元に生きてきてよかった」
　ネコミケに気持ちが飛びすぎて、「三次元で生きている」という現実の事実まで忘却の彼方へ置き去りにしてしまう追分。
　彼は常日頃から二次元へ入り込めないか真剣に考えるほどの二次元オタク（そして重度の３次元アレルギー）なのだ。
　そんな彼に、神魂の効果が来た！
「ん？　なんだ、この無性に力が沸いてきて何かを描かなきゃいられないような気分？」
　気が付けば追分は、部活で使っているスケッチブックを広げていた。
「鉛筆は……、今はシャーペンしかないか、それでも俺は描く！」
　無表情の追分の目に創作の炎が宿った。
　しかし、何を描こう？
　そう思った矢先、カタログの『魔法少女ネッコロガリーナ』の挿絵が目に飛び込んできた。
「うおおおおお！　ネッコロガリーナのヒロイン４人組を描かざるを得ない！」
　追分は無表情で叫ぶと、赤・青・黄・紫の４人のヒロインを一心不乱に描き出していく。
　隣で寝ているルームメイトへの気遣いなど、もはや二の次。
「そうだ、俺は今、ネッコロガリーナたちを創造したいんだ！　二次元最高！　俺、描き上がったら４人と友達になるんだ！」
　神魂効果で最高にハイテンション（でも無表情）な追分は、朝まで魔法少女たちを様々なカットで一晩中描き続けていった。
「やべぇぜ、公式設定本を引っ張りだしてもう一度読み返さねぇと気が済まないぜ」
　同作品の公式設定本に掲載されているラフスケッチを見るやいなや、追分の脳内で着色済みで思い浮かんでくるではないか。
「うおおおおお！　俺が！　全てを！　描き上げていくんだ！」
　やはり無表情で熱の篭った雄叫びを深夜の桜花寮に響かせていった。

　翌朝、７時。
　神魂効果が途切れ、冷静になった追分は自分の描いた魔法少女たちのイラストを見て驚愕した。
「おいおいおいおい。俺って人体もまともに描けたんだな……。普段、無機物ばっか書いていたから気が付かなかったぜ……」
　たとえ神魂の効果とはいえ、描けた事実に彼自身の心境の変化があったかもしれない。
　エロを好まない追分の描く魔法少女たちのフリフリミニスカートは、パンツが見えるか見えないかのギリギリの絶対領域を死守するという徹底ぶりだった。

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