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- 学年：職業
- 00月00日生 00歳
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私を野球に連れてって！
「お姉さん、ビールとナッツ、頼む！」
背後から呼びかけられた恵御納 夏朝は、いそいそと声のした方向に向かう。「お姉さん」か……。小柄な夏朝にはちょっぴり嬉しい言葉である。試合前にレクチャーを受けたときは、飲食物販売の責任者のおばさんから「声が小さいよ」と言われてしまったが、夏朝なりに頑張って売り歩いているつもりだ。
「520円になります」
「はい、ちょうどね」
声の主は、長身で筋肉質な青年だった。彼の周辺のグループは、性別や年齢層の差を感じさせない、なんとも和気あいあいとした雰囲気に包まれている。何のグループなんだろう？ 疑問を持った瞬間、ふとこちらを振り向いた少年の顔を見て、夏朝ははっとした。
「八神くん……？」
「あれ、恵御納じゃないか。今日はバイトで来てるのかい？」
八神 修とは、「以前異世界で共闘した」という風変わりな縁がある。だが、今日はあくまで仕事で来ている。
夏朝は平静を装い、すまし顔で言った。
「飲食物の販売中です。おひとつ、いかがですか？」
修は微笑んで答えた。
「それじゃ、ポップコーンをもらおうか」
商品と引き換えに代金を受け取ると、夏朝は何事もなかったように客席の間を歩き始めた。
「おいしいジュースやスポーツドリンクはいかがですか～？」
修のいたグループみたいに、皆試合を楽しめていたらいいな、と考えながら。
「さぁて、このへんで重鎮選手の一発が見たいもんだねぇ！」
「なんの！ タイタンズの誇る左腕、宮崎をなめたらいけませんよ！ 一回に四球は出しちゃったけど、ドルフィンズ相手ならノーヒットノーランなんて軽いもんですよ！」
宇佐見 満月と北 玄の舌戦はヒートアップの度合いを高めていた。
「タイタンズの今日のノルマはコールドゲームですよ！」
「北さん、プロ野球だから点差つけてのコールドはないっすよ……」
志波 高久の突っ込みも耳に入っていない。
「おっと！ ４番・猪瀬のお出ましだ！ かっとばせー、い・の・せ！」
「ふん！ 宮崎が三振をとってくれるに決まってますよ！」
前列の席では、修の解説が始まっている。
「猪瀬選手は、ドルフィンズ一筋10年以上のベテランで、ホームラン王をとったこともあるよ」
「へーえ……さすがぶちょー、よく知ってますね！」
「対左投手の打率は3割5分以上！ 宮崎にとっては嫌な相手だろうね」
「おお、頭脳派なところも見せちゃって……さすが、球技大会での監督兼選手！ あ、ところで」
解説を聞いていた美咲紀はおもむろに後ろを向いた。
「この人、球技大会で『代打・俺』ってのやったことあるんですよ」
「ええっ！」
後ろの大人三人はあっという間に食いついた。
「八神君、けっこう大胆なことするなぁ」
「そんな漫画みたいな展開、ほんとにあるんですね！」
「修君、見かけによらず面白いとこもあるねぇ」
「そんなに受けなくても……あの時はなんというか、周りが期待してるムードがあって……もう、笑い転げてないで試合見ろよ、椿」
火消しに躍起な修だったが、４番・猪瀬がバッターボックスに入ると自然と皆の目はグラウンドに戻った。
「慎重にサインを交換するバッテリーも、いい絵……」
月詠の方は、一人マイペースに鉛筆を走らせていた。
１ボール２ストライクからの４球目。内角低めの直球を、猪瀬は迷わず振り抜いた。
快音とともに、観客は総立ちになる。打った瞬間それとわかる打球だった。
「出たあ！ すかっと一発！」
満月は真ん前の修の座席に片足をかけ、派手にガッツポーズを……取りかけて、高久の方を意識してやめた。
「いやあ……高久さん、まずドルフィンズに点が入りましたね！」
「ええ、今のは技ありのホームランですよ」
一方、玄の方は当然面白くない。
「ま、一試合に一回くらい打たれることくらいありますよ！ 宮崎ならすぐ修正できますよ！」
「お、続いては出塁の名手、猫田の登場さね！ かっとばせー、ね・こ・た！！」
満月は派手にメガホンを振りかぶる。そして―――隣の高久をちらりと見て、そっとメガホンを下ろした。
宮崎と猫田の対戦。今度は初球、甘く入ったスライダーだった。ライナー性の打球はライトスタンドへ―――
「キャアアア！ ２打席連続ホームランさねぇ！」
興奮のあまり、満月は手近にいた人に抱きついた。
「ええ……なかなか見れないっすね、こういうのは……」
満月が我に帰ったとき、目の前には苦笑いする高久の顔が……。
「はわわーっ、ごめんなさい、私ったら……」
「いいですよ満月さん、そんなに慌てないで下さいよ」
とにかく、ドルフィンズは首位相手に先手を取り、観客席はお祭り騒ぎとなったのだった。
〈２回裏 ドルフィンズ２－０タイタンズ〉
背後から呼びかけられた恵御納 夏朝は、いそいそと声のした方向に向かう。「お姉さん」か……。小柄な夏朝にはちょっぴり嬉しい言葉である。試合前にレクチャーを受けたときは、飲食物販売の責任者のおばさんから「声が小さいよ」と言われてしまったが、夏朝なりに頑張って売り歩いているつもりだ。
「520円になります」
「はい、ちょうどね」
声の主は、長身で筋肉質な青年だった。彼の周辺のグループは、性別や年齢層の差を感じさせない、なんとも和気あいあいとした雰囲気に包まれている。何のグループなんだろう？ 疑問を持った瞬間、ふとこちらを振り向いた少年の顔を見て、夏朝ははっとした。
「八神くん……？」
「あれ、恵御納じゃないか。今日はバイトで来てるのかい？」
八神 修とは、「以前異世界で共闘した」という風変わりな縁がある。だが、今日はあくまで仕事で来ている。
夏朝は平静を装い、すまし顔で言った。
「飲食物の販売中です。おひとつ、いかがですか？」
修は微笑んで答えた。
「それじゃ、ポップコーンをもらおうか」
商品と引き換えに代金を受け取ると、夏朝は何事もなかったように客席の間を歩き始めた。
「おいしいジュースやスポーツドリンクはいかがですか～？」
修のいたグループみたいに、皆試合を楽しめていたらいいな、と考えながら。
「さぁて、このへんで重鎮選手の一発が見たいもんだねぇ！」
「なんの！ タイタンズの誇る左腕、宮崎をなめたらいけませんよ！ 一回に四球は出しちゃったけど、ドルフィンズ相手ならノーヒットノーランなんて軽いもんですよ！」
宇佐見 満月と北 玄の舌戦はヒートアップの度合いを高めていた。
「タイタンズの今日のノルマはコールドゲームですよ！」
「北さん、プロ野球だから点差つけてのコールドはないっすよ……」
志波 高久の突っ込みも耳に入っていない。
「おっと！ ４番・猪瀬のお出ましだ！ かっとばせー、い・の・せ！」
「ふん！ 宮崎が三振をとってくれるに決まってますよ！」
前列の席では、修の解説が始まっている。
「猪瀬選手は、ドルフィンズ一筋10年以上のベテランで、ホームラン王をとったこともあるよ」
「へーえ……さすがぶちょー、よく知ってますね！」
「対左投手の打率は3割5分以上！ 宮崎にとっては嫌な相手だろうね」
「おお、頭脳派なところも見せちゃって……さすが、球技大会での監督兼選手！ あ、ところで」
解説を聞いていた美咲紀はおもむろに後ろを向いた。
「この人、球技大会で『代打・俺』ってのやったことあるんですよ」
「ええっ！」
後ろの大人三人はあっという間に食いついた。
「八神君、けっこう大胆なことするなぁ」
「そんな漫画みたいな展開、ほんとにあるんですね！」
「修君、見かけによらず面白いとこもあるねぇ」
「そんなに受けなくても……あの時はなんというか、周りが期待してるムードがあって……もう、笑い転げてないで試合見ろよ、椿」
火消しに躍起な修だったが、４番・猪瀬がバッターボックスに入ると自然と皆の目はグラウンドに戻った。
「慎重にサインを交換するバッテリーも、いい絵……」
月詠の方は、一人マイペースに鉛筆を走らせていた。
１ボール２ストライクからの４球目。内角低めの直球を、猪瀬は迷わず振り抜いた。
快音とともに、観客は総立ちになる。打った瞬間それとわかる打球だった。
「出たあ！ すかっと一発！」
満月は真ん前の修の座席に片足をかけ、派手にガッツポーズを……取りかけて、高久の方を意識してやめた。
「いやあ……高久さん、まずドルフィンズに点が入りましたね！」
「ええ、今のは技ありのホームランですよ」
一方、玄の方は当然面白くない。
「ま、一試合に一回くらい打たれることくらいありますよ！ 宮崎ならすぐ修正できますよ！」
「お、続いては出塁の名手、猫田の登場さね！ かっとばせー、ね・こ・た！！」
満月は派手にメガホンを振りかぶる。そして―――隣の高久をちらりと見て、そっとメガホンを下ろした。
宮崎と猫田の対戦。今度は初球、甘く入ったスライダーだった。ライナー性の打球はライトスタンドへ―――
「キャアアア！ ２打席連続ホームランさねぇ！」
興奮のあまり、満月は手近にいた人に抱きついた。
「ええ……なかなか見れないっすね、こういうのは……」
満月が我に帰ったとき、目の前には苦笑いする高久の顔が……。
「はわわーっ、ごめんなさい、私ったら……」
「いいですよ満月さん、そんなに慌てないで下さいよ」
とにかく、ドルフィンズは首位相手に先手を取り、観客席はお祭り騒ぎとなったのだった。
〈２回裏 ドルフィンズ２－０タイタンズ〉
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
-
- 2014年06月01日
- 参加申し込みの期限
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- 2014年06月08日 11時00分
- アクション投稿の期限
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- 2014年06月08日 11時00分
