私を野球に連れてって！｜リアクション

私を野球に連れてって！

逆転サヨナラという劇的な試合の興奮冷めやらぬ中、選手とファンの交流会が行われている。これ以上ない勝ち方をしたとあって、選手もファンも表情は晴れやかだ。そもそも、勝つこと自体が珍しいチームなのだが……。
「あ、イクチーだ！可愛い！一緒に写真撮ってもらってもいいですか？え、僕でいいのかって？もちろんです！」
　しおりは水樹のほうを向く。
「すみません、写真撮っていただけますか？」
「いいけど……貴女ちょっと変わってるわね、イクチーが可愛いなんて」
「そうですか？可愛いと思うんだけど……」
　イベントの楽しみ方は、人それぞれのようだ。

「いやー、イケメンの鳥羽選手と握手できて良かったです！ぶちょーは誰のサインが欲しいんですか？」
「そうだなあ……どの選手も好きだけど、守備の要、犬飼捕手かな。ちょっと並んでくる」
　美咲紀と修はうきうきした気持ちを抑えきれない様子で動き回っている。
「あ、マスコットと写真撮影もできるんだ！でも、あんまり遊んでると遅くなるかな……」
「帰りは、うちの車で送ってくよ」
「お、さすが八神ぶちょー！ ……えっと」
　美咲紀は、ふと口調を改める。
「野球は全然知らなかったですけど、今日はすごく楽しかったです！あの……また、遊びに連れて行ってくれますか？」
「もちろんさ。こういうのでよければね」
　二人はお互いに顔を見合わせ、笑った。

「お疲れ様でしたー！」
　スタッフルームに集まったアルバイトスタッフたちは、無事仕事を終えられたことを祝し、お互いを労いあっていた。
「試合も引き締まっていて、お客さんも楽しめたと思います。スタッフの皆さん、お疲れ様でした」
　飲食物販売の責任者のおばさんが、代表して挨拶する。長い一日だったが、これにて解散だ。陽太、勘三郎、夏朝の三人も、もちろんスタッフの中に混じっている。
「ところで、話は変わりますが」
　おばさんは言葉を切る。
「試合後、スタジアムのあちこちに絵を置いていった人がいるのですが、心当たりはありませんか？」
「絵？なんだいそれ」
　勘三郎が首を傾げると、夏朝が口を挟んだ。
「僕も、拾ったよ」
　夏朝が差し出したのは、切り取られたスケッチブックの紙だった。盗塁成功の瞬間がスケッチされている。
「ゴミとして置いていったわけじゃないねぇ。スタッフにあげようとしたのかな？」
　陽太が不思議そうな顔をする。
「多分、そうだと思う……」
　夏朝は、誰が書いたのかわからないその絵をじっと眺めている。
　絵の隅には、小さく「T」の字だけが書かれていた。

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あとがき

担当マスター：三城俊一
ファンレターはマスターページから！

寝子電スタジアムでの年に一度のお祭り、いかがでしたでしょうか？
今回は最下位ドルフィンズが首位タイタンズに一矢報いる試合となりました。
皆さま、観戦お疲れ様でした。

今回のシナリオでは、アクションにやや面倒なお願いをしてしまいましたが、ふたを開けてみれば多彩なアイデアがあって、試合展開を考えるのがとても楽しい作業になりました。試合の描写の配分がおかしかったりはしますが、どうかご容赦のほどを……
ご参加いただいた皆さま、本当にありがとうございました。

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