朝顔の咲くころ｜リアクション

朝顔の咲くころ

◇朝は元気なあいさつから

　後木真央、寝子高体育科の一年生。
　野性味、もとい、元気あふれる健康優良児だ。
　猫が好きで、見つけるたびに後をつけていくというが、そんな彼女自身も好奇心旺盛。
　今朝も彼女の頭のなかは、やりたいこと、ためしてみたい事でいっぱいだ。

　薄ら明かりの中、布団を蹴飛ばしてはね起きる。
「朝なのだー！」
　真央は手早く着替えて、まずは寮の裏庭にある鶏小屋へと向かった。
　鶏小屋のドアの前では、朝ごはんが待ちきれないのかニワトリたちが忙しなく右往左往している。
「ささ美、てば崎、おはようなのだ♪　ラン卵とはんぺんもちゃんと起きててえらいのだー♪」
　今にも食卓に並びそうな名前のニワトリたちは今朝も変わらず元気そうだ。

　ばらまいた餌にニワトリが群がった隙に、小屋のたまったものをホウキで手際よく掃いていく。
「今日の卵はどんななのだ～？　おおっ、うみたてなのだ♪」
　ワラを敷き詰めた巣をのぞきこむと、真新しいタマゴが見つかった。
　まだ温かく、手触りはざらざらしている。
　貴重なタマゴを割れないよう布でくるみ、餌に夢中のニワトリたちに声を投げかける。
「ラン卵がそのうちダチョウ並のおおきい卵を産んでくれるの、大期待なのだ♪　いっぱい食べて大きく育つのだー」
　動きまわるニワトリの尾羽をはさまないようにゆっくりと小屋の扉を閉め、鍵をかける。

　卵を部屋においた所で、ぐうっと彼女の腹の虫がなった。
　朝の分の食材はある。だがここで、真央は重大なことに気がついた。
「そういえばお昼ごはんの食材が足りないのだ……」
　冷蔵庫を何度覗いてみても、ないものはないし増えるはずもない。
　
「そういえば朝顔って食べられるのだ？」
　食べようという発想にまず敬意を表したい。
　スマホで検索をかけてみると、やたらと難しそうな漢字が出てきた。
「牽、牛、子……素人は食べちゃダメって書いてあるのだ、ちぇ～」
　落胆する真央。だがここで諦める彼女ではない。
　朝がダメなら昼である。
「おおっ、昼顔は食べられるのだ！」
　もはや食べられれば何でもいいといった風だが、飢えてしまっては元気を出せるはずがない。
　決断の早い真央は、早速とりにいくことに決めていた。
　頭のなかにはすでに、昼顔のおひたしが食卓にならぶ光景が浮かんでいた。
「きっと海岸あたりに咲いてるのだ！　ついでに畑で食べられそうなもの物色するのだー」
　えいえいおー、と元気に拳をかかげる真央。
　朝はまだ始まったばかりだ。