暴走ベビーカー？！　ちょっとまって赤ちゃん！！｜リアクション

暴走ベビーカー？！　ちょっとまって赤ちゃん！！

　団十郎の声が聞こえ、同時に頭痛に襲われる風宮悠（かぜみや　はるか）。彼女のろっこん『ヒズミノイタミ』は一定距離内で他者のろっこんが発動した際、頭痛として知覚するものだ。最も、悠自身はまだその事実に気づいていないのだが。
「……大変な事に、なっているな……」
　悠の頭痛も心配しつつ、志波拓郎が見かけたボクシング部の様子に呟く。ねこったーを見れば騒動についてのコメントが次々に現れる。その中には知り合いである彩葉からのもあった。
（ならば……）
　そう思った時、拓郎は既に動き出していた。自分の足で追跡し情報をねこったーで知人に送ろうと考えたのである。自分のろっこん『ハイヤードジャンパー』を使う際は人目を避けよう、と考えつつも巧みに人を分けて追いかけていく。
「できるだけ安全に止めないと……」
　痛む頭を押さえつつ悠も走り出す。流石陸上部だけあって、その走りは様になっている。彼女もまたベビーカーへと駆け寄るとサイドからスピードを落とせないか、タイミングを見図ろうと並走を始めた。

『なんだか、ちょっとさわがしいね』
「そういえば工事中の場所があったっけ」
「確かそんな風にも張り紙があったよ」
　買い物中に東中居陽二と出くわした十条寺達磨と小山内海が、インフォメーションに貼られた張り紙を思い出してそんな会話をしていた。そういえば、最近トラブルがあったっけ、等考えていると、どこからともなく赤ちゃんの泣き声が聞こえてくる。
『あかちゃん？』
　海が走り出し、続けて陽二と達磨もストリートへと出てみると、勢いよく走るベビーカーと、それを追うボクシング部の面々（顧問含む）などに気づく。
「ああ、成程……。牛っちの赤ちゃんってわけね」
「ともかく、どうにかしないと！」
　ねこったーで状況を確認した達磨の説明を聞き、陽二と海が、それぞれ何ができるか考え、行動をはじめる。
（工事現場に行く可能性もあるんだ。だったらこっちの方に）
　陽二が人ごみをかき分けて走るのは、ベビーカーの進路から推理して海の方。しかも、工事現場の方だった。海もまた買ったばかりの画材を手に走り出す。先回りして、どうにか自分のろっこんで止められないか、試す事にした。
その様子を見、同時にねこったーの書き込みを見て、達磨は小さく笑った。
（どう考えても１人じゃ無理。寝子高の仲間もけっこう来てるみたいだし、協力して解決できたら……）
　彼は一つ頷くとベビーカーへ向かい走って行った。

（なんだか、騒がしーと思ったら……そういう事だったんですねー！）
　屋敷野梢はねこったーで状況を把握し、ため息をついた。アウトレットモールへ遊びにきた所だったのだが、これは買い物どころではない。生物部部員としても、放っておけなかった。
「誰もいませんねー」
　自分がもれいびである事を秘密にしている梢は人がいない事を確認すると、すぅ、と呼吸を整え、なりたい姿をイメージする。
（蝶サイズになって羽を生やしてー）
　梢のろっこん『胡蝶の夢』は目を閉じたまま前方へジャンプする事で、身につけた物ごと、一匹の蝶に変身する物だ。故に、不完全にコントロールすれば、妖精のような感じになれるのではないか、と考えた。
　しかし、思い切って前へジャンプするも、完全な蝶になってしまったり、手が羽根になってしまったり、と失敗ばかりが続いてしまう。
（うーん、思い通りには行きませんねー）
　仕方なく、手間ではあるが蝶の姿で状況を把握し、人に戻ってからねこったーを使用することにした。

『あのベビーカー、どこを通ってる？』
『今、ブティック街の方を走ってる。タイムセールに巻き込まれそう』
『牛瀬先生と何人かで追いかけてるけど、捕まりそうもないな』
『赤ちゃんはもれいびかも。ろっこんは合図型っぽいような』

　こうして、アウトレットモールを舞台に幕を開けた追跡劇。そこへ彩葉や拓郎、ひびき、梢などが情報を拡散し、それを見た者達が助けようと立ち上がる！

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