暴走ベビーカー？！　ちょっとまって赤ちゃん！！｜リアクション

暴走ベビーカー？！　ちょっとまって赤ちゃん！！

　【ボクシング部】で買い出しに来ていた桜庭円、笠原ひびき、大山田団十郎、本宮虎治の４人は、買った備品を確認していた。
「ざっと、こんな物かな」
「じゃねぇか？　しっかし、今日は賑わってるなぁ」
　円が中身とメモを見比べている傍ら、虎治が辺りを見渡す。と、見覚えのあるような若者もちらほら見かけたからだ。
「やっぱ新学期だからじゃ？　俺たちみたく備品とか買ってるんだろ？」
「そうだろうね。……ん？」
　団十郎もまた周りを見て頷いていると、ひびきが何かに気づいた。微妙に騒がしいような気がしたのだ。
「何か……周りがおかしくねぇか？」
「おい、な、何だあれ！」
　虎治が首をかしげている横で、団十郎が声を上げる。彼女の視線の先には、自動車並みのスピードで走るベビーカーと、それを追いかけるボクシング部顧問・牛瀬の姿が……。思わぬ出来事に４人は唖然となる。
（手をむぎゅむぎゅさせてる……？）
　赤ちゃんの様子を見た円が、その事に気付きつつ手早くアウトレットモール付近の地図を呼び出す。
「そんな坂でもないのにベビーカーのあのスピード、普通じゃありえないし……」
　ひびきも不思議に思い、ねこったーもチェック。すると、幾つもの目撃証言や、進路に関する予測などが流れていた。
「ってぼさっとしてる場合じゃない！」
「めんどくせぇ、けど、しゃあねぇ！！」
　団十郎と虎治が駆け出し、円とひびきも追いかける。顧問が必死になって追いかけているのだ、自分たちが動かなくていつ動く！

　必死になって追いかける顧問の姿に若干の違和感を覚えながらも、最初に動いたのは団十郎と虎治。その姿に、巧は驚いたようだった。
「なんや、本宮君と……大山田さんか？」
「ったく、アンタの赤ちゃんだったのかよ！！」
　虎治が力強くアスファルトを蹴り、ベビーカーをどうにか追い越して反対側から体当たりしてみる。しかし、なにせ自動車並みの速度で動いている。痛みが走り、跳ね飛ばされてしまった。それでも、打ち身すらないのは当たり方がよかったからだろうか？　一方、団十郎も取っ手をどうにか掴んで引きとめようとした。が、踏ん張ろうにも引きずられ、靴がぼろぼろになりそうだ。それでも速度がわずかに落ちたように思える。追いついた円とパンチ受けミットをつけたひびきも加勢するが、なかなかうまくいかない。
「くっ、誰か手伝ってくれ！　そこのお前らとか！」
　団十郎の声に、虎治が再び動く。どうにかサイドから止めようと手をかけるも、速度はほんの僅かしか落ず、巧が反対側から抑えても足がもつれそうになった。
「あれ？　牛潮先生ー！どうしたの！？」
「あれ、ワシの息子や！　急に泣き出したち思ぅたらこうなってん！」
　たまたま一人で買い物に来ていた高梨彩葉が彼らに追いつく。巧がベビーカーを指差し、短く説明する。それだけではあるが彩葉は一緒に走りながら
（それだったら……合図タイプのろっこんかな？）
　と推測する。彼女もまたねこったーで情報を流しながらベビーカーを追いかけるのだった。

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