おいでませ！　おひとりさま｜リアクション

おいでませ！　おひとりさま

　お猫様というものは、どうしてこんなに可愛いのだろう？
　五百部遥は物陰に潜みながら、じっと目を凝らす。
　くりくりとした黄色い瞳に写るのは、野良猫たち。
　遥の家の近所の猫たちは、最近、遥を見ると逃げ出すのだ。
　だからこうして、物陰からこっそりと眺めるのだ。
（こんなにも愛してるのににゃぁ……）
　じっと手を見る。
　高校生とはとても思えない小柄な遥の手は、お猫様を撫でるのに適した柔らかくて小さくて可愛らしい手なのだ。
　この手で撫でられたお猫様は、それはそれは気持ちいいはず。
（お？　餌に食いついたにゃ！）
　遥の仕掛けた猫餌に食いつくお猫様を見て、遥は心の中でガッツポーズ。
　そう、遥の顔を見るだけで何故か逃げていくお猫様たちも、餌には弱いのだ。
　じりっ、じりっ……。
　そうっと、そうっと。
　遥は物陰から姿を現す。
　じりっ、じりっ……。
　お猫様たちは餌に夢中で、にじり寄る遥かに気づかない。
　じりっ、じりっ、じりっ……がしっ！！！！
「にゃあああああああ？！」
「よしっ、捕まえたにゃっ！」
　後ろから羽交い絞めにされて暴れるお猫様と、大好きな大好きなお猫様を抱きしめてご満悦な遥。
　事態を察して散り散りに逃げいていく他の野良猫たち。
「もふもふもふもふっ、幸せだにゃぁっ♪」
「にゃーいにゃにゃぎにゃーっ！」
　幸せそうにもっふもふ撫でまわる遥と、涙目で暴れるお猫様。
　引っかかれようと噛み付かれようと、遥は決して離さない。
　だってお猫様が大好きだから。
「そっかそっか、そんなに僕になでられるのが嬉しいのにゃ？　餌をあげるにゃぁ♪」
　誰がどこからどう見てもお猫様は嫌がっているのだが、遥はまったく気にしない。
　最愛のお猫様のお口に、罠用に余ってた餌を、ぽいっ。
　餌付けされたお猫様は懐いたのか落ち着いたのか、それとも諦めたのか。
　みゃぅうと鳴いて、遥かに黙って撫で回された。
　その様子を見ていた別のお猫様がうっかり近付いて、速攻で遥に捕獲され、夕暮れまで抱きしめられていたとかなんとか。

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