【Side：？？？】乱戦

　バンビエッタは偶然にも闇の皇帝と遭遇していた。
　正気を失っていた皇帝をムチでしばき上げ、芸術的に捕縛するとようやく大人しくなった。
「……皇帝って、恋愛経験なさそうよね」
「うぅ……」
　バンビエッタの言葉が図星だったのか、しょげる皇帝。
　その皇帝の顔面をヒールで踏み付けるバンビエッタ。
「じゃあ教えてあげる。本物の恋愛って、ちょっと暴力的なの……♪」
「そこまでだ、弘明寺……」
　ヤガ＝ミンが止めに入った。
「えっと、七夜 あおいさん？」
「違う、ヤガ＝ミンだ。……似ているのは気のせいだ」
　現在のヤガ＝ミンのイメージ図が以下のとおりである。

　深層意識がきっと働いたのであろう。
「陛下ー！　大変っすー！　女王様がさらわれたっすよー！　女王様ピンチじゃん！　助けなくていいの！？」
　そこへイオリが戻ってきた。
「どういうことだ？」
　ヤガ＝ミンは説明を聞くと、思わず舌打ちをした。
「……自分の兵士たちを、幻覚で全員洗脳しておくべきだったか」
　既に闇側の兵士たちが離反していることにヤガ＝ミンは気が付いていた。
　これが忍者の仕業だったことに苛立ちを隠せない。
「修ちゃん話は聞いたのだ女王助けるのだ？」
　マオが兵隊を連れて駆け付けてきた。
「だからヤガ＝ミンだ！　この際、本物同士とくっつけてしまおう」
　ヤガ＝ミンは実際落胆していた。
（俺の考えた作戦が……全部台無しじゃないか！　忍者許さん！）
　彼女は当初、『空城の計』を発動させようとしていた。
　結婚式を終えたあと、工程と花嫁を安全な場所へ避難させ、敵兵力を城の中へ迎い入れる。
　そこでヤガ＝ミンが城の柱をろっこんで分解！

　瓦礫の下に光の軍勢を押し潰すという華麗な作戦だった。
　だが、全て忍者によって台無しにされた。
　これほどの屈辱はない！
「だが、女王の居場所が分からないぞ？」
「ヤガ＝ミン、心配無用です。私のストーカー歴を舐めないでください。ナナの居場所なら、魔力でこの島中どこでも探知できますよ」
　皇帝はドヤ顔だ。
「自分でストーカーって認めたわね、今……」
　バンビエッタはゴミを見るような目付きで皇帝を睨んだ。

　基本世界の寝子高がある場所付近。
　魔法世界では勇者シトラス・ガムダンの石像が建っている場所だ。
　常闇以外のチーム朧月はそこへ集合し、女王の処遇を話し合っていた。
　殺してしまうか、それとも奴隷として里でこき使うか？
「ひとまず、餌にして皇帝おびき寄せようじゃん？」
　朧月は仮面を被ると、再び透明化。
　各自は散開すると、拘束した女王を像の前に放置して様子を見ることにした。

「ふふ、いい子達ね♪」
　牡丹太夫は闇堕ちした魔法少女たちを手懐けていた。
　棘が刺さった恵御納 夏朝は裏人格『夏夜』となって、牡丹太夫の口車に乗せられていた。
「陣営？　忍者？　結婚式？　知らないね！　夏朝の敵は、全部纏めて殲滅だ！」
　行動目的が似通っていたのも一因している。
「さぁ、準備は整ったわ。女王を助けに来る魔法少女と皇帝、そして待ち受ける忍者たちをまとめて倒しましょ♪」
「ああ、とにかく潰して回る……！」
　夏夜も戦輪を握り締めて憎悪を燃やす。
　……はずだったが、後ろから伸びる２つの影に愕然とした。
「な、なんだこいつら！？」
　魔女２体、牡丹太夫の巨乳を潰しに参上！
「な、魔女ですって？　魔女は、私よぉ！」
　牡丹太夫も巨大化！
　包帯で魔女を縛り上げ、必殺技を放つ！
「愛と混沌の魔女が天に命じ、地に命じ、人を害し、理を壊し、捻じ曲げ、膿みを顕現させよう。来たれ、混沌！　ヘルヘイム！」
　この戦闘で亡くなった魂が牡丹のもとへかき集められると、それを媒介に包帯まみれの魔獣が召喚される！
　腐敗と愛憎洗脳の呪いを放つそれは、２人の魔女に飛び掛った！
「ブシャアアアア！」
　しかし、フラウは魔獣を鷲掴みにすると、頭上の餅の中へ放り込んだ！
「巨乳死すべし！」
　それをカーフェンが杵でこねると、あっという間に魔獣入り餅の完成！
「……嘘でしょ？　私の怨念より、彼女たちの怨念の方が強いって言うの！？」
　牡丹は戦慄した。
「一体、貴女たちは何を憎んでいるの！？」
『そのぶら下がったおっぱいだー！』
　カーフェンの包丁が光ると、牡丹はあっという間に三枚におろされてしまった。
「ガリガリ！　ガリガリ！」
　骨だけの牡丹に喜ぶ魔女２人。
　色々とカオスである。
「愛とは痛みと憎しみを同居させた無償の心……。駄犬共、私の愛に抱かれて……逝け」
　とういうか、おっぱいの悩みに負ける私の怨念て、一体……？
　失意の中、牡丹の肉体は消滅していった。
「うわー、僕、巨乳じゃなくて本当に良かったよ。あの魔女たち、僕のこと眼中にないもの……」
　夏夜は思った。
「逃げよう。もう知らないよ、こんな世界……」
　彼女は逃走した。
　あ、振り回して「MAP兵器～」とかやりたかったな、とちょっぴり後悔したりした。

　添木 牡丹：裏人格→失意の中、再封印＆脱落
　恵御納 夏朝→逃走（その後、正気に戻って再び光の力を取り戻した模様）＆自動帰還

　全魔法少女たちは女王救出のために、シトラス・ガムダン像の前に集結した。
　拘束された女王は像の前で叫ぶ。
「罠です！　私のことは諦めなさい！」
　だが、皇帝はズカズカと歩を進める。
「罠だと知っています。でも、私は貴女を助けるためにここに来ました！」
　皇帝が女王まであと５歩手前まで近付いたその時！
　隠れていた忍者たちが一斉にアンブッシュ！
「イヤーッ！　イヤーッ！　イヤーッ！」
　皇帝は女王を庇ってアンブッシュを受け止めた！
「グワッ！　ギャァ！？」
　皇帝の足元が真っ赤に染まった。
「皇帝、お別れだ！」
　フェニックスの太刀が皇帝の首を刎ねた！
「サスガ！」
　透明化している朧月も思わず賞賛の声を上げてしまった。
「……おかしい。手応えが全然ねぇ！」
　だが、斬った本人は違和感を感じた。
「空気を斬っているかのようだった……、って何！？」
　突如、忍者を襲う波動砲！
「軍師といえど、攻撃も可能だ」
　ヤガ＝ミンの魔法だ！
　その隣には、女王を抱きかかえた皇帝の姿が！
「説明してやろう。この美少女魔法軍師ヤガ＝ミンがな！」
　かっこいいポーズで眼鏡を掛けると、ヤガ＝ミンは俺様モード……ではなく、魔法少女らしくぶりっ子になった。
「うんとね？　ヤガ＝ミンの魔法の『光像再生』はぁ、幻を映像としてストリーミング再生が可能なんだょ！　忍者が見たのはね、『皇帝をやっつけたイメージ』を映像として再生したってことだにゃん♪」
　……メガネを外したヤガ＝ミンがクールに言った。
「さぁ、観念しろ、忍者ども！」
「……締まらないな、正直」
　スノウがボソッと呟いた。
　忍者たち、万事休す！

「お困りのようだな？」

　天から降る野太い声。
　そして逆噴射でぶっぱなされる放屁の爆風！
「我が名は漸羅！　光も闇も諸共に飲み干す羅刹なり！」
　そして股間のご立派を振り回した。
「このご立派は両刃直剣の刀身・漸羅性刃（ゼンラセイジン）！　だが、これを抜くまでもないわ！」
　彼の陣羽織から無数の触手が生えだした。
「魔法少女と触手は切っても切れぬ関係！　ならば参ろう、固有結界『触手庭園』！」
　この隙に忍者たちは山へと逃走！
　魔法少女たちは、変態と強制的に戦う羽目になった！