箒星は夜闇を駆けて｜リアクション

箒星は夜闇を駆けて

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まだピークまでには時間があるから――と御巫時子は星座の本を開いていた。
描かれた星図と夜空に浮かぶ星と見比べる。
「あれが夏の大三角でしょうか……」
ひときわ明るく輝く三つの一等星、指で結ぶとちょうど図と同じような三角形を描く。
そんな時子の様子を見て、フクロウさんが言う。
『ふむ……やはり人間と言うのはおもしろいものですな。星を結んで、空に絵を描くとは』
「鳥さんたちの間では……、星座のようなものはないんでしょうか……？」
少し考えるように、バサリと翼を広げるフクロウさん。
『寡聞にして聞いたことはないですな』
知識人、いや知識鳥のフクロウさんが知らないということは、やっぱり無いのだろうか。
「ヨタカさんは……」
返ってきたのは短い鳴き声。どうやら、聞いたことはないらしい。
納得したように小さく頷く時子に、
『トキコさん、セ、セーシャ……』
「星座……です、ね……」
『そうソレじゃ、セ、セイザ。他にどのようなものがあるのか、ご教授願えませんかな』
やっぱり、未知のものは気になるらしい。期待に満ちた声色に、時子もなんだか楽しくなってきた。
「ええ……、勿論です……」
たった今指でなぞったばかりの夏の大三角を、もう一度なぞる。
「これが……夏の大三角です……。星座ではありませんけど……夏の空で明るい三つの星を結んだもの、ですね……」
デネブ、アルタイル、ベガの三つの星をゆっくりと指す。樹上から指の動きは見えているだろうか、と少し心配になってフクロウさんの方を見る。
『ホッホッホ、御存知の通り私たちフクロウは夜目がききますからな。しっかり見えておりますぞ』
それを聞いて安心しつつ、時子は話を続けた。