ようこそ、木天蓼自動車学校｜リアクション

ようこそ、木天蓼自動車学校

◎国際免許Get目指すよ　～

　気さくな性格の雰囲気イケメン、十二月晦日杏は、大学受験当日スノボー大会に出場していた為、1浪したという経歴の持ち主です。
　浪人中、アメリカに一時滞在していた事もあり、帰国子女かと思われるくらい英語はぺらぺらで日常会話でもたまに英語が飛び出すほどです。
　男性に声をかけられることは珍しくない水樹でしたが、この青年からは下心は感じられませんでした。
「君も合宿参加？　学生だよね」
「ええ……あなたは？」
「俺は木天蓼大二年のヒナシ　アンズだよ。ねえ、筆記試験の問題出し合いっこしない？」
「ごめんなさい、疲れてるからそういう気分じゃないわ」
「それは残念。じゃあ、そういう気分になったら一緒にやろうね♪」
　杏はあっさり引き下がりました。

「USAで免許は持ってるからね！　日本でも使えるよう国際免許Get目指すよ。有効期限もまだ大丈夫だし、テストも一段落ついたし合宿で一気に取るよ！」
　と自動車学校にやってきた杏でしたが。
「国際免許の有効期間は１年間ですよ。またすぐに更新しなきゃならないですから、日本の大学生なら日本の免許に切り替えたほうが楽ですよ」
　と受付の人に勧められました。
「日本の免許証を取得していれば、国際免許は手続きだけで即日発行できますから」
「んーそういうことなら」
　そんなやり取りの後、杏は初めての日本の自動車学校を興味深げに眺め、男女問わず仲良くなりたいと積極的に話しかけていました。
「俺より若い子ばっかりだね！　早めに取れるなら取っておくに越した事ないしね」
　他の人が運転する車にも乗れたら乗りたいと思っていました。

「俺の番来たね！　アメリカ仕込みの運転技術の見せどころだよ」
「まずは、教習所のコースを一周しろ。腕前を見てやる」
　鬼川教官が隣に乗り込み、さっそく怒鳴られます。
「コラ、ウィンカー右じゃない、左に出るんだろうが！」
（Boo……怖いteacherに当たっちゃったかな？）
「うーん、左ハンドルの右側通行に慣れてる所為かすっごい運転しづらいよ先生！
　左側に寄せなきゃいけないのが変な感じだ」
「ここは日本だ！」
　が、ハンドル捌きや運転センスは抜群の杏です。左右さえ気をつければ運転は安定したものでした。
「回ってるだけじゃつまんないよティー……センセイ」
「ふん、いいだろう、路上出てみろや。スピード出すなよ」
「ＯＫ！　任せて」
　杏は海沿いの道を気持ちよく走ります。
「標識いっぱいだー、不思議な感じ」
「あ、コラ！　信号無視すんなバカ！」
　赤信号を右折しようとして、思い切り教官にブレーキを踏まれます。
「え、赤信号でも安全じゃないか！　右折は可能だろう？　ＵＳＡではOKなのに……」
　突っ走って行くべきじゃないのかい？　後ろ詰まってるよ！」
「ここは右折ゾーンじゃねえんだよ！　そんでＵＳＡじゃねえ、日本だ！」
　長い一本道を走ることが多かったＵＳＡと違って、日本の交通ルールはなかなか難解なようです。
「あ、コラ、スピード２０キロオーバーだ！」
「えー？　Ｗｈｙ?」
「英語使うんじゃねえ！　ああっ、ちゃんとサイドミラー見れバカ！」
　鬼川教官にとっては血圧の上がる日のようです。