ようこそ、木天蓼自動車学校｜リアクション

ようこそ、木天蓼自動車学校

◎合宿の夜は更けて　～

　教習を終えて、杏は合宿所の自室に戻ってきました。
　さっき食堂で一緒になった謡と同室です。
　入口の名札を眺めて、思い出したように謡は言いました。
「読めない苗字はともかく、杏って……きゃわわな女の子と同室なのかと焦ったぞ」
「ハハハ、よく言われるよ。君の名前もけっこう珍しいよね？」
「読めるっしょ、いきなしかゆきなしかの違いくらいで。ヤンキー教官読めてたけど、あれはフリガナふってあるからだな」
「ヤンキーって……あの怖いオニカワteacherのことかい？　資料眺めて渋い顔してたよ」
「怖い？　けっこーウブで面白いっしょ？　まああれは読めないでしょオオミソカさん」
「度胸あるなあ……あ、俺の苗字、ヒナシだから」
　棒読みで無表情な謡ですが、なかなか面白い反応に杏との会話は弾みました。

　路上教習の疲れを癒すべく、水樹は合宿所のお風呂に浸かっていました。
　背が高く均整のとれた身体つきをしたモデル体形に、羨望の眼差しが集まります。
「あら、さっきの。お疲れ様」
　食堂で一緒になったベガがやってくるのを見て、水樹が声をかけました。
　幼く見えるのは童顔だけではなく、やせているためでもあるのでしょうか。無駄な肉のない体つきです。
（ネコホームのみんな、どうしてるかな）
　ベガはお風呂で１人になって、ネコホームの子供たちのことが気がかりになっていたところでした。
「瑠璃条さんだったかしら。あなたはバイク教習だったわね……順調？」
「はい。えーと、城山さん？」
「そうよ。いいわね……私は実技で失敗して３度目の挑戦なの」
「そうなんですか……自動車って、難しいんですか？」
「少なくとも私にとってはね」
「あたしは、教習所代を出してもらってるので……規定オーバーして迷惑かけちゃうわけにはいかないんです」
「そうなの……」
　童顔と明るさに似合わずこの子は結構苦労しているようだ、と水樹は気づきます。
「私も寝子高ＯＧなの。普通科だったんだけど、あなたは？」　
「あ、あたしも普通科です」
　年齢も境遇も違う二人ですが、同じ合宿仲間、そして裸の付き合いということもあるのでしょうか。
　次第に友達のように打ち解けあい、ふざけあうのでした。
「免許取れたら、一緒にスイーツ食べに行きましょうよ。私がおごるわ」
「はい、それじゃごちそうになります」
　水樹の疲れが、そしてベガの寂しさがいつしか消えていきました。
　「きっと大丈夫」という自信が生まれていたのです。

　こうして、合宿所の一日は終わるのでした。

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あとがき

担当マスター：茄子りんこ
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茄子です。ご参加ありがとうございました♪
自動車学校で苦労した経験をこんなところで生かせるとは思いませんでした。

基本的に合否は書いていないのですが、それぞれ所要時間に個人差はあっても無事自動車学校を卒業されたと思っていただいて大丈夫です。
後は学科試験を頑張ってくださいませ。
それでは皆様、よいドライブを！

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