ようこそ、木天蓼自動車学校｜リアクション

ようこそ、木天蓼自動車学校

　筋肉モリモリ、髪を金髪に染めた虎沢健太は、大型自動二輪車の教習を受けに来ていました。
　普通自動車と普通自動二輪車の免許を一か月前に取ったばかりです。
「あんま久しぶりって感じはしねーな。さて、教官の指名は姫野ちゃんっしょ！」
　木天蓼自動車学校では通学の場合教官を指名できるのですが、表立ってはそのことを教えてくれません。
　そりゃあ人気のある教官に指名が集中しますからね……
　先輩教習生に教えてもらったり、他人が指名しているのを見て気付くことが多いようです。
「前回はクソチンピラの鬼川と半々だったけど今回は全部姫野ちゃんでいかせていただきますグヘヘ。さて、教習だぜ」
　強面の健太の顔が幸せそうにニヤけます。
「おっす、姫野ちゃん！　今日もセクシーだな！　あ、今日空いてる？」
　開幕早々、慣れ慣れしく教官の肩に手をまわそうとしつつナンパです。
「あら、虎沢くん。また来てくれたの？　だめよ、夏休みは忙しいんだから」
「へへっ、姫野ちゃんに会いたくってさ！　っと、教習車はNYA750Lか？　あんまかっこよくねえな。CAT750Lが生産中止されちゃったからこれになったんだっけ？」
（免許取るために教習所通うのかおっぱい見るために教習所通うのかわかんねえけど。俺、今幸せ）
　姫野教官の巨乳やお尻を眺めながら、健太はそんなことを考えています。
「そうねえ、NYA750Lはホイールベースが長いから回転半径が大きくなったわ。
　バンク角は少し浅めにしないとガードを簡単に擦るから気をつけて」
　微笑む姫野教官。
（なんか長いとか擦るとかいう単語が聞こえるんだけど。うらやましい……）
　それを少し離れた場所から指をくわえて見ているマコトです。
　歳相応のスケベさと若さを持て余しているようです。
　が、蛇沼教官に睨まれ教習を始めました。
　
「さて、それじゃまずバイクを起こしてもらいます」
　ムチムチな巨乳を揺らしてバイクを倒し、姫野教官は健太に言います。　
「あ？　バイク起こし？　ふええ～　、僕バイク起こせないよ～！　姫野さん僕に手取り足取りで教えてぇ……！」
　急に子供っぽい声になって甘える健太。
「もう、虎ちゃんたらしょうがないわね～」
（密着してあの巨乳とか尻を堪能するチャンス！　姫野ちゃん、石鹸の香りがするんだよなー）
　とほくそ笑む健太ですが。
　横からバシッ！　と竹刀を叩きつける音と共に、彼を捉える鋭い視線に気づきました。
「げ、鬼川……」
　さすがにそう甘くはなさそうです。
「虎沢！　てめえチョーシこいてんじゃねえ！　そのガタイで何言ってやがるドスケベ！」
　鬼川教官の額に青筋が浮かんでいます。
「と言うわけだから、頑張ってね、虎沢くん」
「へいへい、おー軽くなったねこれ」
　すんなりバイクを起こす健太。
「大体てめえは前の教習の時から……」
　まだ何か言おうとする鬼川でしたが。
「担当教官が姫野ちゃんにほの字かもしれない運転(ぶおんぶおん」
　無駄にいい声とエンジン音が聞こえ、慌てて振り向きます。
「い、行梨てめえ！」
　謡がコースを一周して戻ってきたところでした。
「えっとー乗る時はあれでしょ？　右から人が飛び出してくるかもしれない、みたいな感じでかもしれない運転を心がけるんでしょ？　だから」
　ケロッと棒読みで言う謡です。
「おおーよく見たら見知った顔もいるじゃんじゃん。安本とかゴリラ先輩とか。皆がんばれーゴリラ先輩は転べー」
「行梨も来てたのか。なんだと！」
　苦笑するゴリラ先輩こと健太です。
「担当教官が意外とウブかもしれない運転(ぶおんぶおん」
「や、やめろ！」　
　半分泣きそうな顔になり逃げるように、バイクを追いかけて鬼川教官が走り出しました。
「さすが行梨」
　マコトも感心しながらバイクを走らせます。
（そういやさー。寝子高だけじゃなくて他のガッコも一般の人もいるんだよな。
　食堂とかで仲良くなれたらいいなー。学科でわかんないとこ教えて合うとかさー。
　もしかしたら可愛い子と仲良くなって付き合うようになったりして！）
　教官は所詮高嶺の花、でも教習生同士なら仲良くなりやすいかもしれません。
　暑さを忘れて、妄想に胸を脹らますマコトでした。

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