人生模擬演習遊戯『一生ゲーム』｜リアクション

人生模擬演習遊戯『一生ゲーム』

●５年目

２月
【再会】
『背中をポンっと』
　綾辻綾花は参考書を買うため本屋に立ち寄ったところ、早川珪先生と遭遇した。
　偶然の再開に、綾花の胸がとくんと跳ねる。
　先生のことを、恐る恐る「早川さん」と呼んでみた。
「ああ、綾辻さん」
　また、胸が高鳴る。
　心臓の音が先生に聞こえてしまわないように、綾花は懸命に取り繕う。
「ちょっと待ってて。これ、支払い済ませてくるから」

宛先：七夜あおいちゃん
件名：ど、どうしよう！
本文：
　今日、偶然早川先生に会ったんです。
　それで、先生のこと早川さんって呼んじゃったんです。
　…変に思われてないでしょうか？
　もしかすると、私の気持ちに気付かれてしまったかもしれません。

　まだ、心の準備が……どうしたら、いいと思います？

　×　×　×

宛先：綾辻綾花
件名：RE:ど、どうしよう！
本文：
　　告白したらいいと思うよ。

　告白。
　その二文字を何度も何度も読み返す。
　結論が出せないのに、早川先生は戻ってきてしまった。
「綾辻さん時間ある？　よかったら、どこかに入って、最近の話を聞いてもいいかな？」
「は、はい！」
　せっかく早川先生に会えたのに、集中できないまま、時間ばかりが過ぎていく。

　携帯電話の番号を交換したことだけは、覚えている。

【留学先にて】
『カーニバル』
　会えなかった日々を埋めるように霧生深雪と芽森菜々緒はデートを重ねていた。
　もちろん学業を疎かにすることはなく、だが。
「週末にニースのカーニバルに行かない？」
「ニースのカーニバルか……」
　ヨーロッパの三大カーニバルの一種。毎年『なにかの王様』をテーマに、華やかな祭りが繰り広げられる。
「……みゆは、社交ダンスって踊れる？」
「……さぁ」
「じゃあ練習しましょ。……腰に手を回して。そう」
　ひとまず週末までは楽しい時間になりそうだ。

３月
【卒業後】
『2人の道』
　月居歩と芽森菜々緒は無事、卒業を迎える。
　歩は小物や雑貨を扱う会社にデザイナーとして就職することとなった。
　菜々緒は本格的に絵を描いて生きていくことを決めた。
　2人はそれぞれの道を進みながら、ゆっくり、ゆっくり、距離を詰めていった。

４月
【入学式】
『寝子島中学校』
　戌井創は初めて袖を通す制服で興奮していた。
　今は138cmしかなくてクラスの中でもダントツで小さいけど、きっとこの先身長がぐんぐん伸びるからと、やや大きめのものを購入した。
　ブカブカの制服が嬉しくて、鏡の前でこっそりピースを掲げる。

５月　
【GW】
『伝説の』
　先週封切りとなった映画『神様は寝子島にいる』。
　無名の女優を起用したにも関わらず、総来場者は先週第2位。
　そして評判が評判を呼び、みるみる間に来場者数を伸ばしていく。

　城山水樹の伝説が、ここに始まる。

『ひとときの』
　御巫時子は毎日忙しい日々を送っていた。実験、研究、臨床――薬学部での毎日は怒涛とも言えた。
　そして恋人の五十嵐先生も同じように忙しかった。
　やはり高校教師ともなれば授業の準備にも時間が掛かるし、その上そもそも休みが圧倒的に少ない。
　そんな中2人が会える時間は、GW中でさえ1日しかなかった。
「……すみません」
「いえ、いいんです」
　時子は口ではいいんですと言いながらも、本当は不安でたまらなかった。
　たまらなくとも、その感情でせっかくの2人の時間を潰すことも出来なかった。
「映画でも観ましょうか」
「……はい」
　手を繋いで映画館まで向かう道が、たまらなく嬉しい時子であった。

６月
【初恋】
　4歳になった嘉島和穂ちゃんは、保育園の先生が大好きです。
　将来、お嫁さんにしてくださいと頼むことにしました。
　そしたら、先生には奥さんがいることを知りました。
　とっても、とっても悲しくて、1日だけ保育園をおやすみしました。

７月
【夏休み】
『毎日が部活』
　バスケット部に入部した戌井創は、今日も今日とて部活のために学校に向かう。
　1年生の上に部内で1番小さい創はスタメンからもベンチからも遠かったけど、誰よりも一所懸命に練習に取り組むのだった。

『成すべきこと』
　高校2年生になった鳳翔皐月の夏休みは忙しかった。
　すでに受験勉強は始めていたので日々勉強漬けであったし、
　夏休み中に秘書検定等いくつかの資格を取ることを母によって決められていた。
　それから福祉施設へのボランティア活動も週に1回は行くことと父に定められており、毎日は飛ぶように過ぎていく。

８月
【ますます夏休み】
『夏の思い出』
　夏休みに小山内海、御剣刀、橘千歳の3人は寝子島に集まり、海水浴を楽しんでいた。
　海面に大きな浮き輪を浮かべて泳ぐ海と海に合わせてゆったりと泳ぐ千歳と刀。
「ふう……喉が渇いたから、何か飲み物を買ってくるわ。2人は何がいい？」
「俺はお茶で……小山内は……そうか。橘に任せるそうだ」
「わかったわ」
　長い付き合いの中で、筆談をせずとも多少の意思疎通ができるようになっていた。それほど3人の絆は深くなっていた。

『真夏のビーチ』
　宮祀智瑜は数少ない桐島義弘の休みに合わせて、海水浴に来ていた。
　だというのに――
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
　義弘は水着の美女（のおっぱい）観察に夢中になっていた。
　智瑜だって、自慢ではないが胸は大きい。だというのに、他の人の胸を……。
　智瑜はおもいっきり、義弘の二の腕をつまむ。
　痛みで我に返って謝ったところで、許してあげません！

６年目に進みます。
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