●３年目

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１月
【初夢】
『一富士二鷹三……？』
　恵御納 夏朝：一富士二鷹三コナツ(ΦωΦ)

　高城 律：絵を描く夢だった。一富士、二鷹、三茄子、四扇、五煙草、六砂糖。惜しい。

　本条 小萩：一小萩二小萩三小萩。小萩がいっぱい。

　北条 冬華：一富士二鷹三ナンパ

　桃原 空音：富士×鷹

　白浜 渚：一富士二鷹三波

『片・思い』
　小山内 海は初夢を見た。寝子島神社の境内で木刀を振るう、御剣 刀の右横顔を。
　そして橘 千歳も夢を見た。寝子島神社の階段を駆け上がる、御剣 刀の左横顔を。
　御剣 刀も夢を見た。けれど夢の内容を思い出すことはできなかった。

『眼帯の少女』



（とても……楽しい。友達にいっぱい囲まれて……幸せだと思います）
（なのにどうして私は全然楽しそうじゃないのでしょうか？）
（どうして、眼帯をしてるのでしょうか？）
（……もっと楽しそうにしたらいいのに）

２月
【古本屋】
『スカウト』
　実家の古本屋で看板娘として城山 水樹は緊張感のない日々を過ごしていた。
　そんなある日、かつての読者モデルとして活動していたときの所属事務所のマネージャーが店先にやってきた。
「水樹ちゃん、お願い！　映画に出て！　どうしてもモデルが一人足りないんだ」
「へ？　いや、急にそんなことを言われても……」
「セリフも一言だけのモデル役なんだけどね。監督のこだわりで本物のモデルを使いたいっていうことで……」
「そんなの他にいるんじゃないですか？　出たがる人いっぱいいますよね？」
「今、売り出し中の子を出すはずだったんだよ。でもそんなセリフのない役、嫌だって言ってさ。で他の子は穴埋めは嫌だって言ったり、監督がOK出さなかったりで……頼む！　水樹ちゃんしかいないんだ！」
　結局元マネージャーに負けて水樹は映画に出ることになった。
　総出演時間7秒。顔がまともに映ったのは3秒。

３月
【噂】
『噂の2人』
　迷子になるたびに邪衣 士は桃原 空音の目の前に現れる。
　そしてその迷子になる頻度が異常に多いせいで、学校中でこんな噂が流れだした。
「邪衣 士は桃原 空音のことが好きだ」
　ふざけるな。とんでもない。士はその噂を耳にする都度否定した。
　けれど否定を上回る勢いで、噂というものは広がっていく。

『週刊春分・見開き特集』
　右1ページを使って新曲のイメージ画像を掲載

　本文▽
　今や知らない人はいない超国民的アイドル『るるか（最上 るるか）(22)』。
　最新曲の「バタフライガール」のPVで素肌をちらつかせたことでも話題の彼女だが、驚くほどスキャンダルがないのでも有名だ。
　本記者は、対談を通じて彼女の素顔に迫ってみることにした。
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　残念ながらスキャンダルらしいスキャンダルが飛び出すことはなかった。
　彼女を射止めるラッキーボーイはいったい誰なのだろうか。それともすでに……？
　いずれにしても、まだまだ『るるか』から目は離せないそうにない。

４月
【新生活】
『新入社員』
　寝子島の観光協会で働くことになった九条 翔。
　まさか自分がこんなことをする羽目になるなんてな……。

『海外留学』
　霧生 深雪は、高校卒業後海外の音楽大学に留学することとなった。
　奇しくも、そこは想い人が留学している国。
　会うはずはない。
　自分に言い聞かせながらひと月を過ごし、やはり会うことなく日常に馴染んでいくのだった。

５月
【フリーマーケット】
『イベントステージ』
　寝子高芸術科で絵の勉強をしていた小萩だったが、その作品は絵だけにとどまらない。
　自分で作った服に曲。なんでもありの小萩のフルコースを店に出していた。
　とはいえ無名の小萩の作品を買ってくれる人はあまりおらず、時間ばかりが過ぎていく。
　そんなとき、アイドルを目指す友人がイベントステージでライブパフォーマンスをすると聞いた。
　小萩も応援に言ってみるが――なんだそれはと拍子抜けの残念パフォーマンスだった。
　そんなものなら――
「小萩ならできちゃいます！」
　むしろ小萩の方ができちゃいます！
　友人が踊っている間に、店から自分で描いた絵を持ってきてステージに飾っていく。
　それから衣装、曲の準備をして、１番良いポジションの三脚でスマートフォンを固定する。
　戸惑う友人の曲が終わるタイミングで、小萩は自作の曲を流し始めた。

「小萩のパフォーマンス、楽しんでいってくださいね！」

　即興で歌詞と振付を考え、振付しきれない部分では絵を描いていく。
　この大胆かつ不思議なパフォーマンスを見るため、どんどんまわりに人が集まってきた。
「なんだあれは」と聞かれれば「小萩でーす！」と答え、
「いったい何をしている？」と問われても「小萩でーす♪」と答え続けた。
　そうして10分程度の小萩大パフォーマンスは大盛況に終わった――

　後日、撮影しておいた映像をネットで公開したところ。なんと1日で再生回数100万回突破！
　小萩はマルチアイドルとしてデビューすることが決まったのだった。
「ぬー、ハイテクはこわいと思っていたのですが、便利なところもあるみたいです」
　同時にハイテク世界にも足を踏み入れた小萩なのであった。

『裏フリーマーケット』
　寝子ヶ浜海浜公園で大規模なフリーマーケットが行われる一方。
　近くの建物ではそこそこ規模の大きい同人誌即売イベントを行っていた。
　桃原 空音は春休み返上で準備をした同人誌を売捌き、あと一冊で完売。
　そして最後のお客が現れた。
「いらっしゃいませ、お買い上げありがとうございますっ！」
　空音の涙の結晶をパラパラと読み始める最後のお客は――
「……って、士くんだ！」
　当然ごとく士は同人誌を買わずに、その場を去っていった。
　けれど何度も空音の前に現れるものだから、「やっぱり欲しいけど、お金を忘れてきちゃったんだね！」ということで仕方なくプレゼントすることにした。

７月
【進路相談】
『指導室』
　放課後、宮祀 智瑜は進路指導室に呼ばれた。
　指導室で待っていたのは、智瑜が所属する3年1組の担任・桐島 義弘先生。
「進路にまだ迷っているようだな」
「はい」
　大学で何を学ぶべきか。――それとも進学を諦めて祖父母の青果店を手伝うべきか。
「宮祀なら無利子の奨学金が間違いなく通る。勉強も頑張っているからある程度の選択肢はある。時間はないが……だが、焦らなくていいからな」
「……はい」

『理科室』
　御巫 時子は、3年生になっても五十嵐 尚輝の元に手作り弁当を届けていた。
「いつもありがとうございます。……ですがいいんですか？　御巫さんは受験生ですよね」
「……志望校に合格しても、先生がこれ以上痩せてしまっていたら、嬉しい気持ちが吹き飛んでしまいます」
「そうですか……じゃあ、僕も、頑張って、お昼を食べるようにします。なので……御巫さんも、勉強、頑張ってください」
「……はい」
　自分のために努力してくれる。そのことに胸が騒ぎ出す。
　けれど会いに来る口実を失ってしまったことも、時子の胸を騒がせた。

９月
【和菓子屋『萩屋』】
『生きる』
「名物のおはぎです！　どうぞ！」
　すっかりツッパった様子はなくなり、和菓子屋『萩屋』の売り子を務める矢萩 咲。
「んまー、んまー」
　その傍らにはよちよち歩きの幼子。強気なつり目は咲譲り。あのとき、お腹にいた子どもだった。
「誠もおはぎが食べたいのか？……かわいそうだが、まだ君には早い」
「んまー！」
「駄目だ」
　女手ひとつで育てているとは言わない。姉妹や従業員の手助けを受けながら、咲は精一杯、我が子と生きていた。
「……あとで君用のを用意してあげるから、それまでお利口にしていてくれるかな？」
「んー？」
　優しい声色で宥め、柔らかい髪を撫で付けてやる咲だった。

１０月
【神無の捜索】
　１０月は別名神無月。
　なんと落神・野々 ののこと落神・テオドロス・バルツァが消えてしまった！

『フツウを死守せよ』
　小山内 海、御剣 刀、橘 千歳は力を合わせて、ののことテオを探す。
　そうして見えてきた事件の真相は『ののこ達が消えたのではなくて、自分達が異世界に飛ばされてしまっていた！』。

１１月
【心残り】
『残り香』
　早川 珪先生のお気に入りの本が破れていることに気が付いた綾辻 綾花。
　あんなにぼろぼろになって……新品をプレゼントしようかな……？
　悩んだ結果、図書委員会で培った修復技術を駆使して、直してあげることにした。
　自分のことになるとついつい忘れがちな先生を、ますます愛おしく思いながら。
「ありがとう」
　修理のお礼にシャープペンシルと受験の御守をもらった。
　頑張って、無事に合格したらその時は……。
　綾花はひっそりと誓いを立てる。

１２月
【大晦日】
『カウントダウンコンサート』
　最上 るるかは男女歌合戦に前半出場した後、カウントダウンコンサートを開いた。
　そして、彼女の想い人・篠崎 響也も歳末クラシックコンサートに出演していた。
　そんな2人は、コンサート終了後、ついにお互いの気持ちを打ち明け、結ばれることとなる。

『コタツぬくぬく』
　鬼河内 萌は今年のクリスマスに晴れて恋人関係となった野菜原 ユウと一緒にコタツでぬくぬく中。
「ユウくん、年越し蕎麦食べる？」
「お、いいじゃん！　天ぷらあり？」
「ありあり！」
　当然のごとくカレー蕎麦。
「うっまそー！　あーん」
　すぐさま食べようとするユウにデコピン！
「ちょめッ☆　ちゃんと、いただきますしないともう一発だぞっ！」
「悪ぃ。いただきます！」
「いただきまーす！」

萌ちゃんお手製カレー蕎麦天ぷら付：★★★☆☆

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４年目に進みます。
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