美味しい実験体験、みんなで実験をしよう！｜リアクション

美味しい実験体験、みんなで実験をしよう！

【カルメ焼き　膨らみそれは、情熱による究極の律動のごとき一品】

　一番初めにアガサが見て回ったのは、伊藤佳奈、花咲里瑞樹、柏田貴弘、七草八兵衛の４人の場所であった。
　４人は思い思いに挑戦しており、八兵衛を除いて苦戦しているようだ。
「私、料理は、苦手……なんだけども……」
　料理ではなく実験です。瑞樹は、そんなアガサの脳内のツッコミは聞こえてないようだ。
　周りは知らない人だらけ、それで緊張してしまうのもわからなくはないが、これはどうだろう。
　ザラメは入れすぎ、水も多い、卵白を入れようとして皿も割る。
「あれ、少ない、じゃあ足して、あ、今度は多すぎる？　あれ？　あれ？」
　佳奈の方も苦戦中、しかし表情は真剣である。
　佳奈の思い出の中にある漫画で、一度は食べてみたいと思った漫画の中でしか見ることができなかったものが自分の目の前でゆっくりと形になりつつあるのだ。
　その佳奈の想いを知ってか知らずか、ものを飛び散らせたり、実験の失敗を何度かしたりしているが、少しばかり妖精的行為をしたアガサのせいか、ゆっくりとカルメ焼きになってきている。
　一方貴弘も、必死になって実験をしている。
「さて、カルメ焼きが何故膨らむのかだが……」
　修の声が聞こえる。
　重曹の熱反応からの他物質の熱反応例を説明しているのだが、それを耳にした貴弘は似たようで全く別のことを考えていた。
「普段大気圧は約１０１３ｈＰａ、大型台風並みに低い時でも９６０ｈＰａ程度、しかし俺ならそれを一気に０まで持っていける……つまりカルメ焼きを超膨らませることだって可能！」
「「「な、なんだってー」」」
「……ありがとう。ふふふ、超カルメ焼きの立派に膨らんだ姿が目に浮かぶよ」
　八兵衛や、佳奈が反射的にお約束のセリフを言った。
　瑞樹はおずおずと言ったような気がする。
　その様子に、なごむアガサ。それぞれの反応が返ってくるなか、さて、実験の方はいかがだろうか？
　そして貴弘の【のーもあおきしげん】はゆっくりと発動された。
「こ、これは……！」
　その瞬間、ずもももももっと勢い良く膨らむカルメ焼き。
「お、大きくなっていくねぇ」
　八兵衛はのんびりとそう呟く。
「あれ、でも」
「はぅ！　膨らみすぎだよぅ」
　佳奈も瑞樹も自分の実験の手を止めてそちらに意識を向けてしまう。
「おぉ」
　思わずアガサも助けるのを忘れて見つめてしまうほどカルメ焼きはどんどん膨らんでいく。
「か、カルメ焼きに食べられるのかなぁ」
「いや、それはないない」
　佳奈に律儀に突っ込みつつ、焦る心を押さえようとする貴弘。
　しかし、その間にどんどん膨らんで行き、もはやお玉では支えきれない。
「もうだめかねぇ？」
　そう言った八兵衛を誰も責められない。
「……あ」
　と、小さく慌てて水をたそうとした瑞樹が器を滑らせ、それがガスバーナーに直撃する。
「元栓！　元栓をしめて！」
　佳奈が慌てて叫ぶ。騒然となるテーブル。その瞬間、クラスも違う全員が一丸となってガスバーナーを止める。
「さすがにびっくりだねぇ」
　八兵衛がのんきに呟く。
「失敗したか。うまくいくと思ったんだがな」
　と貴弘が申し訳なさそうに言う。
「多分、無理かな……なんて……でも、頑張りたい……だから、その」
　そんな貴弘に言葉をかけようとするも、うまく言葉が見つからない瑞樹。
「瑞樹ちゃんいいこと言った。失敗は成功につながるよ、ほら見て！」
　と、自分のカルメ焼きを出す佳奈。わぁっと目を輝かせる瑞樹。
「次は俺も手伝うよ何しよか？」
　そう言って参加する八兵衛。
「そうだな、今度こそ頑張ろう」
　そう言ってまた実験に戻っていくのであった。

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