乙女と女王と花百合の森｜リアクション

乙女と女王と花百合の森

◯夢の

　真っ青な――高貴な色のマントを羽織り、お気に入りのフリルのあしらわれたレオタードを身につけていたルーシー・R・マクミラン。フリルがある分スタイルが悪く見えるのにも関わらず、ルーシーは文句なしの美少女だった。
　そんな彼女は見た目とは正反対なほど、豪胆な女性でもあって。
　実際、このお茶会の秘密を知っても、彼女は迷わずお茶を飲み干した。
「む……？」
　まだ、身体に変化はない。
「黒子ちゃんもお茶、飲まないと？」
「どうしても嫌なら……ねぇ、私に食べさせてくれない？」
「や、やめろ、やめてくれ……」
　けれど、笠原七穂と芽森菜々緒に挟まれた吉祥寺黒子の悲鳴が少し遠くで聞こえるような気がした。
「火照って、しまいました、わ」
　剣崎エレナが頬を赤らめ、息を湿らせているのはやけに近く感じる。
　すでに効き始めているということだろうか。
　あくまでも冷静に受け止めていると、ついにその時がやってきた。
　ドクン、ドクンと心臓が跳ねて、耳の側まで鼓動を響く。
「ぁ、……ぅウ」
　じわり、じわりと額に汗が滲んできた。
「少々……身体が熱く……」
　熱を逃がそうと、息を吐く。
「ぅ、ン」
　もう。限界。
　ルーシーの白い肌は、すっかり桜色に染まってしまった。
　それが、堕ちた合図だ。
「――あぁ、何故我は美しい己が身体をこの世界でも隠しておる？」
　開放を待ち望んで、胸がグッと布地を押す。
「美しいものは見せてこそ……であるな」
　レオタードの肩部分に、細い人差し指を滑りこませる。
　そうして姿を見せた、なだらかな肌色の曲線。
「にゃ、そんなの駄目だよ……！」
　隣のテーブルの天馬ひびきが目を見張る。だが彼女もまた、七夜あおいに、綾辻綾花に阻まれて動くことさえままならなかった。
　残るエレノア・エインズワースは、ルーシーの肢体をじっと見つめるだけ。
　つまり邪魔をするものはいなかった。
　そうして順々に薄っぺらい布から身体を開放して――ルーシーは、生まれたままの姿になる。かろうじて、マントが大切な部分を隠すが、それはいっそうルーシーの美貌を掻き立てるだけだ。
「まぁ。素晴らしいわ」
　ストリップ、なんて言葉は似つかわしくないほど、いやらしさのない脱ぎっぷりを女主人は褒め称えた。
「なんて綺麗な肌なのかしら」
「……お褒めに預かり光栄だ」
　ルーシーは慇懃に頭を下げて見せる。女主人はますます嬉しそうに鼻を鳴らした。
「よろしければ、この蜜をお嬢さんたちのまぶたに塗ってご覧なさい」
　そう言って女主人は人指し指でたっぷりと蜜をすくい取り、ルーシーの小さな蕾のような唇に塗りつける。
　それは甘い、そしてほのかに苦い、花の蜜。
「ほぅ、」
　頭が、目の前がくらくらする。
　耳の奥が麻痺するほど身体が熱い。
　それでも。
「この茶会、気に入ったぞ」
　ぺろりと唇をなぞる舌の、そのザラザラとした感触に震えて、ルーシーはまたさらに頬を染めた。

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