◆花百合に誘われて――それは夏の夢の入り口
神城 凛はこの日、偶然古書店の前を通りかかった。
それは本当に偶然の出来事だった。
一冊の埃をたっぷりと被った本が彼女の目に留まった。
表紙には、かすれて読みにくいが『夏の夜の夢のつづき』と書かれている。
(夏の夜の夢……の続き?)
なんとなく気になってその本のページをめくってみることにした。
ある真夏の夜のこと。深い森に住まう女主人は心にもない恋をすることになり、――それを喜劇として描く人も居たけれど――そのことで深く傷ついた彼女はその傷跡が癒えるまで眠りについてしまった。
けれどさみしがりやの彼女はもうひとつまじないをかけてしまう。
『ねぇ、こっちへいらっしゃい。お茶を用意して待ってるわ。花の蜜をたっぷり入れたね!』
そこまで目を通した時、カクン、膝が折れる感覚がした。
(え、)
どうして。
そう思う間もなく、彼女の意識は夢の入り口まで落ちていく。
◆百合の森の女主人――それは長い長い夏の夢
凛が気が付くとそこは真っ白なヤマユリの咲き茂る森の中だった。
(あれ……? ボクは本屋の前に居たはずだが……)
何故こんな所に。そう思う前にすらりと背の高い、ワンピースドレス――それこそ辺りのヤマユリのように清楚な純白の――を着た女性が凛の目の前に現れる。高い位置でまとめられた長い髪も、品が良い。
「いらっしゃい、わたくしのお茶会へようこそ。歓迎するわ」
女性はゆったりとしたほほ笑みを浮かべ、凛を美しい茶器や可愛らしいお菓子の並ぶテーブルへと案内する。それから優雅な仕草で椅子を引いてくれたので、凛は自然と椅子にかけていた。
「この花の蜜のほのかな香りと甘みがお気に入りなの。お茶に入れて召し上がるといいわ」
そう言って差し出したのは半透明の液体が入った小瓶。うっすらと赤みがかったものや、黄色っぽいもの、薄紫のものと色鮮やかだがどうやら味わいは同じらしい。
「お菓子にもたっぷりと練り込んでいるの。
それと。
この蜜をまぶたに塗ると――ふふ、素敵なことが起こるのよ?」
それがなにかは試してからのお楽しみ。
女性は唇に人差し指を当てて微笑んでからくるんと踵を返した。
そのとき凛はようやく気がついた。
このお茶会には女性しか参加していないことに。
しかもやけにそれぞれの距離が近い。
指を絡めているものや、顔を寄せあってささやき合っているもの、抱き合っているものまでいる。
(ここはいったい……、なん、だ?)
疑問を抱いていたはずなのに、違和感を覚えたはずなのに。
凛は気が付くとカップを手にとっていた。
ガイド本文にご登場下さいました神城 凛さんありがとうございました。
もしもご参加頂けなかった場合は、無事元の世界に戻ってきて後遺症もなく過ごしているということになりますのでご安心下さい。
*概要*
突然、寝子島の女性たちが眠り込んでしまうという事件が発生しました。
女性が全員眠りについたわけではなさそうですが、眠ってしまった女性はなにをしても起きません。
どうやら眠りこけてしまった女性たちは、『夏の夜の夢の続き』の物語の中に囚われてしまったようです。
(女装男子がこの症状に陥ることもあるようです。)
というわけで、このシナリオは、
女性推奨、高確率で百合描写が発生します。
そして男性が参加する場合は問答無用で女性化することになります。
お茶会を楽しんだり、百合を楽しんだり、楽しめないから全力で帰る方法を探したり……それぞれのお茶会を楽しんで下さい。
PL情報
『ねぇ、こっちへいらっしゃい。お茶を用意して待ってるわ。花の蜜をたっぷり入れたね!』
「この花の蜜のほのかな香りと甘みがお気に入りなの。お茶に入れて召し上がるといいわ」
・ガイド上で女主人が言っている花の蜜とは惚れ薬です。それをまぶたに塗ると最初に見た相手に恋をします。
・女主人は隙あらばPCのまぶたに花の蜜を塗ろうとします。
・飲んだ場合は恋をしたい気分になったり、色っぽい気分になったり、頭がぼーっとしたり、酔っ払ったような気分になります。
*注意事項*
・物語に囚われた女性たちは、個人差はありますがぼんやりとした感覚に包まれています。
・結末次第では、すぐには眠りから覚めなかったり、後遺症(一定期間、夢を見る度に、このお茶会に招かれる等)が残ったりすることもあるかもしれません。
ただちに他のシナリオに影響するわけではありませんが、ご留意下さい。
*NPC*
以下の女性NPCが登場する可能性があります。
指名はできません。ただし登場する場合に備えて友達設定をしておいていただけると助かります。
・桜栄 あずさ
・笠原 七穂
・樋口 弥生
・富士山 権蔵
・鷲尾 礼美
・剣崎 エレナ
・七夜 あおい
・芽森 菜々緒