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二人だけの時間
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晴天が災いしたのか。日曜日の森繁美術館に人は疎らであった。
館内のひんやりとした大気は季節感を狂わせる。林立する石膏の裸像は寒さに震えることなく、のっぺりとした目を虚空に向けていた。
その中を展示品のアンティーク人形のような二人が漫ろに歩く。
エレノア・エインズワース
は黄土色のワンピースに紫色のカーディガンを羽織っていた。手にした日傘は杖代わりにして辺りに硬質な音を響かせた。歩きながら女性の半裸像に冷ややかな翠眼を向けて、ふふふ、と微笑んだ。
「締りのない身体ですね」
エレノアの挙動を背後から碧眼が窺う。
花風 冴来
であった。白いロリータワンピースに身を包み、何かを警戒するような態度を崩さない。金色の長い髪には青い薔薇を飾り、微妙に棘を含んだ声で言った。
「ねぇ、前から気になっていたことを聞いてもいいかしら」
「その為に私を美術館に誘ったのですよね、冴来さん」
展示物のガラスの容器を見ながらエレノアは答えた。冴来は銀製品のナイフに目を落とす。
「貴女は何故、そんなにも皮肉屋なの? 皮肉が好きという以外に理由でもあるの?」
エレノアは長い灰色の髪を横に振るようにして向き直る。冴来の目を見て薄く笑った。
「私の人生において、皮肉は手段に位置づけられます。目的は一つ、『人間らしく生きる事』です」
「本当に人間らしく生きられる?」
眉を寄せる冴来にエレノアは、はい、と揺らぎの無い声を返した。
「私の『人間らしさ』は二つの観点から成り立っています」
エレノアは人差し指を一本、立てて見せる。冴来の興味を十分に引き付けて言葉を続けた。
「一つ目は『動物的な肉体快楽の厭離』です。厭離を拒絶に置き換えてもいいですよ。二つ目は『人間だけに許された行動の選択』ですね。皮肉を求める行動は後者に含まれます。私がジョークを披露する時、不条理劇の語り部であると同時に観客にもなるわけです。凡庸な日常から価値を見出し、物語を創造して鑑賞します。動物には真似の出来ないことですよね」
「……どうして不条理劇なの? 物語はそれだけではないはずよ」
「その通りです。ハートフルコメディもありますね」
エレノアは薄い笑みを作った。多少の苦手意識があるのか。冴来の目は展示物へと流れた。
「不条理劇は善や悪とは違って、狂気だからです」
不穏な言葉に冴来の目がエレノアを捉えた。予測していたと言わんばかりに言葉を紡ぐ。
「狂気は純粋ですよ。博愛精神は人助けをする自分に酔っているだけです。見返りの無い愛は存在しません。悪事を働く輩は欲望に振り回されて自分を見失っています。そのような不純物を看過することは思考放棄と同じです」
エレノアは持っていた傘の先端を床に打ち付けた。高い澄んだ音の中、背筋を伸ばす。
「そして思考放棄は人間的ではありません」
「……なるほど、よく分かったわ。そう、そうかも。貴方の言う通りかもしれない」
今は観客の立場にいるのだろうか。エレノアは笑みを湛えて言葉に耳を傾ける。
「純粋な愛は存在しない。愛なんて、混じり物で薄汚くて、酷く重苦しくて」
「珍しく意見が合いますね」
「……見たくなくても見せつけられて、理想と現実の差にもがき苦しむことも、きっと人間にしか出来ない事よね」
それまでとは打って変わって冴来は強い視線を向けた。エレノアは傘を自分に立て掛けて拍手を送った。
「どういうつもりよ」
「心からの称賛ですよ。私の言葉に完全に同意すれば、それは思考放棄で人間的ではありませんから」
冴来は顔を背けて展示室の奥の方へと足早に歩いていった。耳が赤く色づいている。
「この絵は……」
額に飾られた絵の前で冴来は立ち止まった。身を寄せ合う二羽の鳥が地味な色合いで描かれていた。
「愛らしい鳥の絵ですね」
「そうね」
二人は横に並んで絵を鑑賞した。閉ざした口を先に開いたのはエレノアであった。
「この鳥は姉妹でしょうか」
「どうかしら。仲は良さそうに見えるわね」
「上辺だけかもしれませんよ」
冴来はポケットに音もなく手を忍ばせた。横目をやるとエレノアは絵を見た状態で微笑んでいる。
「私は貴方たち姉妹の話は一切していませんよ」
「確かに、そうね。私が悪かったわ」
冴来はポケットから手を抜いた。スカートの裾でそれとなく掌を拭った。
エレノアに気にした様子は見られず、壁際に置かれた休憩用の椅子に腰掛けた。持っていた傘の先端を冴来に向ける。
「貴女の愛情も純粋ではありませんね。私の狂気を手本にすれば、全ての悩みは淡雪のように消え去り、見たい物だけを見ることが出来るようになりますよ。こちら側の人間になりませんか、花風冴来さん」
心の揺れが身体にまで表れた。冴来は目を伏せて、少しずつ言葉を吐き出した。
「貴女の、その誘いはとても魅力的で、心が惹かれるわ。でも、私は狂気に染まるわけにはいかないの」
「どうしてでしょう」
「……私が狂気に染まれば、私の誰よりも愛しい人が胸を痛めてしまうから。いえ、もしかしたら手遅れで、優しい狂気に溺れてしまっているのかもしれないけれど――」
エレノアは立ち上がった。滑るように歩いて冴来の目の前に立つ。
「貴女は純粋ではありません。狂気を実践している私が保証しますよ」
エレノアは出口に向かった。傘が立てる音は遠のいて、ふいに止む。
「冴来さん、ランチをご一緒しませんか」
「これから私と?」
「他に誰がいるのですか。それに純粋ではなくても、悩む貴女はとても人間的ですよ」
微笑みを浮かべたまま、展示室を出ていった。
「もう少しだけ」
自分に言い含めて歩き出す。徐々に足は速くなり、冴来は眩しい夏空の下に戻っていった。
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2人まで
シナリオジャンル
オールジャンル
定員
20人
参加キャラクター数
20人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2014年04月02日
参加申し込みの期限
2014年04月09日 11時00分
アクション投稿の期限
2014年04月09日 11時00分
参加キャラクター一覧
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