プリントヘルin寝子島高校｜リアクション

プリントヘルin寝子島高校

「そろそろ出来上がってるかもしれないって、先ほど浮月先輩と渡辺先輩が取りに行ったんですよね？」
「それにしても、帰って来るのが遅いような気がするわ」
　相槌を打った椿美咲紀も少し心配そうに溜め息を付く。珪もまたちらり、と壁の時計を見て心配そうな顔になった。
「思った以上にプリントが多かったのかもしれない。一応助っ人として数名先に印刷室に行くように言ってはいたんだけど量が量だからね。様子を見に行ってくれないか？」
　彼の提案に、多くの者が手を上げる。真央、岬、圭花、刀、巴、しおり、美咲紀の７人だ。刀はそろったメンバーに頼もしい笑みを向ける。
「紙の量もけっこうあるし、力仕事なら任せておけ」
「それは頼もしいわ♪　楽しみにしてるわね」
　岬にそういわれ、刀としては少し照れくさい。そんなやり取りをみつつ、珪は台車を１つ持っていくように言うと７人を見送った。また、美術室の様子を見てきて欲しいと頼めば綾花と目があう。
「綾辻さん、お願いできるかい？」
「は、はいっ！」
　こんな風に頼まれるとは思わず、綾花の顔は更に赤くなってしまう。けれども大好きな先生のためにしっかりしようと思う綾花なのであった。

　プリントを取りに行った面々は、何故しおり作りに参加したのかという話で盛り上がっていた。切欠は真央が教室で発した言葉である。
「こういう時は自発的に準備を手伝っとくのさ。そうすりゃ、多少の無茶は目を瞑って貰えるってもんだからね」
「もしかして、無茶をする気まんまん？」
「というか、無茶するなよ……」
　巴が不敵に笑い、圭花は少し笑みを強める横で刀が肩を竦める。
「私は、泉先生のファンなんだ。でも、絵とかデザインとか出来ないから製本の方に回ったの。椿さんは？」
「私？　ふふーん、新聞部として臨海学校と林間学校の秘密に迫れると思ったからよ！」
　しおりに話をふられ、美咲紀はくすっ、と笑って答えれば傍らの真央が「さっすが新聞部員なのだ！　見習わなきゃなのだ！」とテンションを上げる。こんな風に仲良く印刷室へと向っていたのだが……、その途中で見覚えのある女子生徒が歩いてくるのが見えた。
「あら？　どうしたのかしら？」
　岬が不思議に思って杖を突きながら歩み寄る。と、清楚な印象を持つ２年生の女子生徒、浮月綾世がちょっとふらふらした様子で歩いていた。辺りをきょろきょろしている様子から何かを探しているらしい。ぶつぶつと「猫……猫……」と言っている。
「あれ？　浮月先輩どうしたんですか？　猫耳萌えなのかな？」
「あんた、プリントを取りに行ったんじゃなかったのかい？」
　しおりが不思議そうに首を傾げ、巴が呆れた様子で声を掛けると、綾世は急に我に帰ったような表情で巴を見返す。
「ご、ごめんなさい！　私、プリントに触った途端急に猫と遊びたくなってしまって……。自分でも何がなんだか判らないのですが、猫を探しに行ってしまって……」
　申し訳ありません、と少ししゅん、とすれば巴は小さく溜め息を付く。綾世の言葉に嫌な予感を覚えた７人は皆もれいびであり、『フツウ』を守るナニカを自称する刀は特に反応する。
「また神魂の所為か？」
「大体こういう時は神魂の所為なのよね」
　刀と圭花は何気なく顔を見合わせて言い合う。その間に美咲紀が綾世から事情を聞こうとしていた。
「プリントを触っただけで……？　一体何が起こっているの？」
「先ほどプリントを取りに行ったのはいいけど、印刷機が暴走して沢山のプリントを吐き出していて……。渡辺さん、大丈夫かしら？」
　その言葉に、全員何となく理解した。

　――ま　た　神　魂　か　！

「早く行った方がいいかもしれないね」
　しおりの言葉に全員が頷き、印刷室へと速やかに向った。

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