【身体測定】ドキドキ体育館☆乙女の秘密は危険がいっパイ！｜リアクション

【身体測定】ドキドキ体育館☆乙女の秘密は危険がいっパイ！

●局地戦（２）●

【体育館２Ｆ東側・卓球場】

　剣道部員の伊藤佳奈は、旧市街の剣道道場の一人娘でもある。竹刀を持たせれば、そこらの男子などには負ける気がしない。
「う〜、風紀委員長さんも倒れちゃったし、
　ここはあたし達で乙女の聖域を死守するしかないよ。
　竹刀があれば負けないんだけど……」
　と辺りを見回し、はたと気が付いたのは２階にある卓球場だった。
（うん、無いよりはましかも！）
　と測量部の侵入と同時に卓球場に走り、ラケットを借りて小太刀代わりに構える。そして身を乗り出して、１階にわらわらいる測量部員たちに向かって叫んだ。
「さあ、そんな所で迷ってないで。
　１年２組の伊藤佳奈、この寝子高の九夜山を測りに来ちゃいなさい！」
　率先して敵を引き付ける佳奈の声に釣られて、数人の測量部員たちが２階に上がってきた！
　しかし……
「……どう思う、同志よ？　あのちっぽけな隆起は、九夜山と言うより」
「ウム。強いて例えるなら、あれは鈴島……猫の額ほどの面積……」
　佳奈のバストを見て、ゴニョゴニョと相談する測量部に、
「もー、何よその目は！　あたしだって好きで小さいんじゃないんだから！」
　とプンスカぶち切れる彼女。

　　伊藤佳奈ＶＳ測量部員。

「さぁ、いつでも来るといいんだよ！」
「シャー！！　シャー！！」
　気を取り直した測量部員のうちの１人が、ムチのように操るメジャーの端っちょを、
「お小手っ！」
　と卓球ラケットでビシバシ迎撃する佳奈。道場で鍛えた秘伝の足捌きの見せ所、
「って、あ痛たたっ」
　しかしこの卓球場は、実家の道場のように広くはない。配置してある卓球台に開き足がぶつかり、あるいは台に遮られて、思うように相手との間合いを詰められない状況に、
「もー、こうなったら、えいっ！」
　イライラした佳奈は、卓球台のテーブルの１つに跳び乗った！
「さあ、どこからでもかかって来なさい！」
　いっしょに跳び乗ってきた測量部員の頭を、ラケットでぽかりと叩いてはたき落とす。
「これは乙女の胸のサイズを守る聖戦なんだから。
　死屍累々築いても大丈夫だよね！」
　近接戦では、佳奈に分があると見た測量部たちは、四方に分かれると、残りの卓球台の上に腹這いに寝そべった。
「え、何？　もう降参？　やった！」
「シャシャシャシャーーーーーーー！！」
　すると目の前の卓球ネットをスリングショットのごとく用いて、その弾性エネルギーで次々に測量部員たちが、メジャー本体を撃ち出した！
「なっ……きゃあっ！」
　しゅるる、るるるるるるる……
　巻尺の尾がホーミングの軌跡を描いて、四方から佳奈のバストめがけて襲いかかる！
「しまっ……！？」
　危うしピンチだ、乙女の聖域！　しかしそのホーミングのことごとくをバドミントンのラケットで絡め取り、佳奈のピンチを救った女子がいた。
「ふむ。測量部とは手強い相手のようですね」
　メガネをキラーン☆と光らせ、ガットに絡み付いた巻尺をまとめて引っ張る風紀委員──薄野五月の参戦だ！
「女生徒を守る為にも、風紀委員の一人としても、
　何とか測量部の方々の野望を阻止せねばなりますまい」
　貧乳狩りの騒ぎで、一時は正気を失っていた彼女だったが、ようやく蕎麦屋の娘としての矜持を取り戻したようだ。バドミントンのラケットを麺棒のように器用に操り、そうしてグイと引き寄せる測量部員たちの頭を、ぱかぱかと佳奈が連携で叩いていく。
「ありがとう……た、助かったよ」
　卓球のラケットとバドミントンのラケット、お互いが選んだ武器をちらりと見て、笑みを交わす２人。気が合いそうだ。お互いの背中を付けて、凛と立つ佳奈と五月。
「さあ、もう負けないんだからね！」
「男の子って本当、しょうがない方々ですー」
「シ、シャー……、シャー……」
　その２人にたじたじとひるむ測量部、
「デヤッ！」
　そこにさらに参戦したのは、１年９組の奈良橋博美だ！　

　　奈良橋博美＆薄野五月＆伊藤佳奈ＶＳ測量部員。

　２階の騒ぎを聞きつけた博美が、ろっこん【トンビの飛翔】で、直接１階からこの卓球場まで、ジャンプしてきたのだ。あのトライアスロン大会の時より、さらに跳べる飛距離と高度が増しているようだ。
「☆！！？」
　いきなりの博美の出現に驚く測量部員を、金的蹴りの一撃で仕留めると、
「数が多いな……少しでも、女の子の被害者を減らすぜ」
　八艘跳びのような身軽さで、次々と卓球台の上をジャンプしていく博美。【トンビの飛翔】の着地の衝撃で、腹這いになっていた測量部員たちが、ばたん・ばたん・ばたん！
「「ぷぎゃ！」」
　トラバサミの罠のように２つ折りに挟まれ、次々と断末魔の悲鳴を上げる。あっという間に２階の測量部を一網打尽にした博美の活躍に、佳奈と五月が礼を述べた。
「強いね、ありがとう！」
「なに、格闘家を志すものとして、この事態はほっとけないさ。
　しかし、胸なんて脂肪の塊だろうに、何をありがたがるんだろうな」
　と首をかしげる博美。彼女にとってバストとは、あれば修練にジャマなだけのものなのだ。
「俺にはわからないけど、測られるのを嫌がる女の子のために全力を尽くそう」

　こうして博美たち３人、鉄壁乙女Ａチームの活躍によって、乙女の秘密は守られたのだった。
　何が鉄壁でＡなんだという、野暮なことを聞くのはよして下さい。
　だって乙女の秘密は、守られたのだから！

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