こんな綺麗な空の下｜リアクション

こんな綺麗な空の下

　　【樹上の楽園】

　「この～木何の木　気になる木～♪」
　鬼河内萌が目を覚ましたのは、何とバランスを崩したら落ちかねない樹の上だった。
　それでも萌は、そんなこと些細な事とばかりに頭上に大きく伸びをした。
　「……何か忘れているような気がするけれども、きっと気のせいだよね。大事な事は普通覚えているものだもんっ」
　萌は、辛い事がある時、悲しいことがある時、常に記憶から感情を消す事で対処してきた。
　無意識のうちに沢山の事を捨て去ってきた。
　その分の笑顔は変わらないが、均衡が崩れるのはいつの日か。

　そんな危機感も無く、萌は辺りを見渡した。
　辺りは一段どころか、更にもう一段高いところから見渡せる。
　空気も、若干涼しく感じる事が出来た。

　そんな中、目に付いたのはあちこちに生っている、胡桃に似た木の実。
　「おなかすいたな……非常食に取っちゃえ」
　萌は非常食としてその生っている内の２つ３つをブチンッともぎ取りポケットにしまっておく。

　そんな中、奇妙な声が響き渡った。
　「ふぉうっ！！　動物がいると思っていたら、人がいたのだっ！
　おネコさまではなく、ホモサピエンスがいたのだっ！」
　「──ボク、ホモじゃないもんっ！」

　「木の上から見たらもっと広くナニカ発見できるかもなのだ突撃なのだ～」そう叫んで、するすると樹の上に上ってきた後木真央。
　何かが間違いすれ違った萌の訴えも気にしない。
　「こんにちはなのだ！　同じように木の上に何か隠れていると踏んだのだ？
　お主もなかなかやりおるのぅ」

　そんな、時代劇などに出て来そうな独特の言い回しをしながら、真央が萌の正面に器用に座る。
　「で、肝心の動物は何かいたのだ？」
　「ううんっ、ボク最初からこの場でお昼寝していたから分からないや」
　「そうなのだ……叶うなら異世界初の動物の丸焼きが真央ちゃんを呼んでると思ったのに……」
　「あっ、胡桃なら持っているよ！　この木の実みたいだけど、殻を割ればきっと美味しい木の実が──

　パキッ──

　二人が二つに割れた胡桃の中身を覗き込めば、中には触れば指が真っ黒になりそうな炭が入っているではないか。
　「えっ？　え……これじゃ食べられないよ！？」
　「さっき、二本足のネコがこの樹は揺すって木の実を落とすのだ！って言ってい───」
　
　ゆさゆさっ！

　「うわっ、この樹結構揺れるのだっ！！」
　「ボクを落とそうとしているのは誰！？いじわるしないでよぉ～！！」
　