はじめてのおさぼり？｜リアクション

はじめてのおさぼり？

●寝子ヶ浜海岸、時々サンマさん

　ののこ一行は綾辻綾花の希望で、寝子ヶ浜海岸へやって来ていた。
　海水浴シーズンなだけあって、多くの観光客で賑わっている。

　寄せては返す波を眺めながら、綾花は波打ち際に拾った木切れで、走るサンマさんのイラストを描いた。
「わあ、綾花ちゃん上手」
「ふふ、ありがとうございます」
　覗きこむ皆の賛辞に気を良くして、綾花はコミカルなサンマさんの後ろに、猫のイラストを描き加えた。
「こうすると、猫に追いかけられて逃げてるようにも見えますね……」
「ほんとだー」
　頭をつき合わせて、くすくす笑いあう。
「余裕な表情のサンマさんが、かっこいいです。何かセリフを入れてみましょうか？」

　考えた末、綾花は
　猫に「好きだにゃ～」、サンマさんに「モテすぎて困るぜ！」と入れた。

「あおいちゃんや、ののこちゃんもサンマさんに、何か喋らせてみませんか？」
「うーん、じゃあこういうのは、どうかな？」

　「一口ちょうだい！」「やれやれ、積極的な仔猫ちゃんだぜ！」

「あは、やっぱり食欲に寄っちゃうんですね」
「さっすがサンマさん。見てよし、食べてよし！　だねー」
　なんとも長閑な、ののこの感想に和むこと、しばし。

「うむ、しかしさぼりかー」
　桜庭円は波にネコパンチを繰り返す、にゃーくんを眺めながら、うーんと腕組みした。
「ののこちゃん、どうしよっか？　また誰かに見つかった時のために、口裏も合わせとかなきゃだよねー。例えば……しゅ、祝日だと思ってたとか……そういう風な？」
「テスト休みだと思ってた、なんていうのはどうかしら？」
　詠坂紫蓮がズバリ本丸に突っ込み、小山内海がペンを握る手が沈黙した。
「わー、それいい！　そういうの、ある学校もあるらしいもん。紫蓮ちゃん、頭いいねぇ。それで行こう♪」
　何も知らない夢宮瑠奈は、無邪気に手を叩いて賛同した。
「よし、じゃあそれ採用！」
　円がピッと指を立てて、皆に頭を寄せるよう身振りで示す。
「後は、逃げる時に路地裏をジグザグに走って撒くのは基本かな。見つかったらバラバラに逃げて、メールで集合場所を決めて集合って感じ？」
　円陣を組んだ皆も、うんうんと納得する。
『りょうかい』
「わー、何か楽しくなってきたー」
　特に、ののこはご満悦だ。
「あ、じゃあメルアド交換しなきゃ……」
　恵御納夏朝がスマホを取り出した。
「そっか、送るから返してー」
「了解～♪」
　普堂しおりもポチポチと、キー操作する。
「こういうの、考えるだけでも結構楽しいねー」
『スリルあるね　どきどきしてきた』
　さっきのは、別の意味でのスリルだったけど。海はスケブで、口元を隠した。
「ねー」
　それぞれにメルアドを交換して、一行はまた歩き出した。