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- 00月00日生 00歳
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『跪いて、崇めよ』
「ひとーつ、控えい控えーい！ ふたーつ、この御印が！ みっつー、はァー、目に、入らぬかぁ！！ 金太郎侍！！」
その日鴉取 荘助は、既に何十回と流されたのであろう国民的時代劇の再放送を眺めていた。まともに内容を見ていたかといえば、答えはノーだ。
ただなんとなく付けた番組がそれだったというだけに過ぎない。紅玉の瞳はどんよりと曇り、目の前の景色を機械的に映しているだけだった。
けれどチャンバラが始まった瞬間、彼の瞳は本来の輝きを取り戻す。
「そうだ信乃さんの足を愛でよう！」
ただし血しぶきも決めポーズも目に入ってはいない。彼は一心にちらりちらりと翻る袴の裾――覗く白い脚――を見つめていた。
「……正面から眺めるのもいいけど、やっぱりチラリズムと言うのは大切だ。
となると、ここは和服にしようかな。信乃さんもきっと喜んでくれると思うし！」
言うが早いか、荘助はすぐさま信乃に合うサイズの着物を用意して信乃の元へ急ぐ。
着物自体に凝るべきか少しばかり悩んだが（当然のように袴という選択肢はない。だってあれじゃ生足チラチラできないし）、信乃を言いくるめるために説得するときに、余計なものはない方がいい。
ごく平凡と言ってはなんだが、稽古着にも普段着にもありがちな簡素な藍染のものを選ぶことにした。当然カメラもスタンバイ。
そうして押しかけてみれば想像通り小犬丸 信乃は承諾しながらも疑問符を浮かべたが、荘助は笑顔と勢いで押し切った。
「じゃあ敵が上手に２人、下手に１人って感じの動きでお願いしますね」
設定もその場で思いついた口から出まかせに過ぎない。
けれどその設定に信乃はより興奮し、可愛らしい、今すぐ抱きついてぺろぺろしたくなるような笑みを浮かべた。でも抱きつかない。一所懸命に練習している信乃も可愛いから。余計なことはしないのが一番だ。
「よし、準備できたぞ」
（こっち向いた。可愛い）
そんな感情を一切表に出さずに、荘助は涼しげに頷く。
信乃の呼吸が整うまでしっかり見届けて。
「……アクションスタート！」
荘助の合図に合わせて、信乃は颯爽と動き出す。
彼の大胆な動きに合わせて、着物の裾が大きく翻る。
しなやかな脹脛が、太腿が剥き出しになったかと思えば、焦らすように藍色が隠し、隠れたと思えば、再び生白い肌が露わになる。
（はー！ 生足ッ最ッ高ッ！！）
カメラを持つ手が震えないよう、しっかりと左手で肘を支える。
前のめりにならないよう、震えるほど腹に力を込める。
表情が緩まないよう、声を上げないよう堅く唇を引き結ぶ。
そんな懸命な努力の甲斐あって、荘助の表情は、平常通り人好きのする穏やかな状態で固定されていた。
（はー！！ 信乃さんが大きく足を踏み込むたびに、ちらちらと着物の裾から合わせから覗く足ッ！！
素足が床を踏みつける瞬間の、足首の捻りとか力強さもたまらないッ……！
あー、あとぐっと体重をかけられた親指の動きとか、躍動する筋肉の……なんていうのかな？
こう、若い牡鹿のような溢れる生命感っていうの？ くぁ～ホントたまらないなー！
あ、今太腿見えた！）
一人、二人、三人。技を、足を見せつけながら信乃はあっという間に演舞を終え、最後風を切った音だけが道場に木霊する。
盛り上がった筋肉に沿って、つつ、と汗が脹脛を伝った。
「どうだ荘助！ 上手く撮れたか！？」
瞬間、弾けるような笑みを浮かべて、信乃が荘助を振り返る。着物の乱れも直さず、ただ一心に荘助の言葉を待っている。
（はー！！ はー！！）
叫びそうになるところをどうにか堪えて、荘助は信乃の健闘を称える。
「すごいバッチりでしたよ、信乃さん上達してる」
信乃は荘助の邪な賛辞を純粋な言葉として受け取った。
脚を曝け出したまま、大きく胸を張り――それによって、余計に太腿が肌蹴たことも知らず――はしゃいでいる。
「今度はローアングルで撮りたいな」
「ろー……」
悪魔の提案とも知らず、信乃はその言葉をじっくりと咀嚼する。
（断られたら、諦めるさ。断られたら……ね）
荘助は波一つ立たない水面のように、静かに穏やかに信乃の答えを待った。
「おお、つまり下からだな！ いいぞしかとおさめろ！」
それは快諾以外の何者でもない。
「はい！ 仰せのままに！」
荘助は快活な返事を口にしながら――
（はー！……はー！……はー！……はぁぁあああー！！）
その仮面の下で、一人狂喜乱舞していた。
もう、彼の足以外、何も目に入らない。
その日鴉取 荘助は、既に何十回と流されたのであろう国民的時代劇の再放送を眺めていた。まともに内容を見ていたかといえば、答えはノーだ。
ただなんとなく付けた番組がそれだったというだけに過ぎない。紅玉の瞳はどんよりと曇り、目の前の景色を機械的に映しているだけだった。
けれどチャンバラが始まった瞬間、彼の瞳は本来の輝きを取り戻す。
「そうだ信乃さんの足を愛でよう！」
ただし血しぶきも決めポーズも目に入ってはいない。彼は一心にちらりちらりと翻る袴の裾――覗く白い脚――を見つめていた。
「……正面から眺めるのもいいけど、やっぱりチラリズムと言うのは大切だ。
となると、ここは和服にしようかな。信乃さんもきっと喜んでくれると思うし！」
言うが早いか、荘助はすぐさま信乃に合うサイズの着物を用意して信乃の元へ急ぐ。
着物自体に凝るべきか少しばかり悩んだが（当然のように袴という選択肢はない。だってあれじゃ生足チラチラできないし）、信乃を
ごく平凡と言ってはなんだが、稽古着にも普段着にもありがちな簡素な藍染のものを選ぶことにした。当然カメラもスタンバイ。
そうして押しかけてみれば想像通り小犬丸 信乃は承諾しながらも疑問符を浮かべたが、荘助は笑顔と勢いで押し切った。
「じゃあ敵が上手に２人、下手に１人って感じの動きでお願いしますね」
設定もその場で思いついた口から出まかせに過ぎない。
けれどその設定に信乃はより興奮し、可愛らしい、今すぐ抱きついてぺろぺろしたくなるような笑みを浮かべた。でも抱きつかない。一所懸命に練習している信乃も可愛いから。余計なことはしないのが一番だ。
「よし、準備できたぞ」
（こっち向いた。可愛い）
そんな感情を一切表に出さずに、荘助は涼しげに頷く。
信乃の呼吸が整うまでしっかり見届けて。
「……アクションスタート！」
荘助の合図に合わせて、信乃は颯爽と動き出す。
彼の大胆な動きに合わせて、着物の裾が大きく翻る。
しなやかな脹脛が、太腿が剥き出しになったかと思えば、焦らすように藍色が隠し、隠れたと思えば、再び生白い肌が露わになる。
（はー！ 生足ッ最ッ高ッ！！）
カメラを持つ手が震えないよう、しっかりと左手で肘を支える。
前のめりにならないよう、震えるほど腹に力を込める。
表情が緩まないよう、声を上げないよう堅く唇を引き結ぶ。
そんな懸命な努力の甲斐あって、荘助の表情は、平常通り人好きのする穏やかな状態で固定されていた。
（はー！！ 信乃さんが大きく足を踏み込むたびに、ちらちらと着物の裾から合わせから覗く足ッ！！
素足が床を踏みつける瞬間の、足首の捻りとか力強さもたまらないッ……！
あー、あとぐっと体重をかけられた親指の動きとか、躍動する筋肉の……なんていうのかな？
こう、若い牡鹿のような溢れる生命感っていうの？ くぁ～ホントたまらないなー！
あ、今太腿見えた！）
一人、二人、三人。技を、足を見せつけながら信乃はあっという間に演舞を終え、最後風を切った音だけが道場に木霊する。
盛り上がった筋肉に沿って、つつ、と汗が脹脛を伝った。
「どうだ荘助！ 上手く撮れたか！？」
瞬間、弾けるような笑みを浮かべて、信乃が荘助を振り返る。着物の乱れも直さず、ただ一心に荘助の言葉を待っている。
（はー！！ はー！！）
叫びそうになるところをどうにか堪えて、荘助は信乃の健闘を称える。
「すごいバッチりでしたよ、信乃さん上達してる」
信乃は荘助の邪な賛辞を純粋な言葉として受け取った。
脚を曝け出したまま、大きく胸を張り――それによって、余計に太腿が肌蹴たことも知らず――はしゃいでいる。
「今度はローアングルで撮りたいな」
「ろー……」
悪魔の提案とも知らず、信乃はその言葉をじっくりと咀嚼する。
（断られたら、諦めるさ。断られたら……ね）
荘助は波一つ立たない水面のように、静かに穏やかに信乃の答えを待った。
「おお、つまり下からだな！ いいぞしかとおさめろ！」
それは快諾以外の何者でもない。
「はい！ 仰せのままに！」
荘助は快活な返事を口にしながら――
（はー！……はー！……はー！……はぁぁあああー！！）
その仮面の下で、一人狂喜乱舞していた。
もう、彼の足以外、何も目に入らない。
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
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- 2017年01月13日
- 参加申し込みの期限
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- 2017年01月20日 11時00分
- アクション投稿の期限
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- 2017年01月20日 11時00分
