寝子高七不思議シリーズ：存在しない教室の存在｜リアクション

寝子高七不思議シリーズ：存在しない教室の存在

『要は、弁天に音を立てさせ、影牛の餌食にすれば良いワケだ。弁天の注意をひく方法を民間伝承からいくつか考えてみたんだ』
　民谷の言葉に、ひふみ達が頷く。
『①弁天は嫉妬深い→カップルのふりしてイチャイチャする』
　それを見た利平は、大賛成だと全身でアピールする。
　悩んだひふみは仕方がないと、凛の腕を取って教壇へと向かった。
（何でっ！？）
　利平は思わず声を出しそうになり、慌てて口を押さえた。
　凛と一緒に弁天さまの前に立ったひふみは、ぎゅうっと凛を抱きしめ様子を伺う。
　しかし、弁天さまは、一度ちらりとこちらを見ただけですぐに琵琶へと視線を戻してしまった。
（やっぱり、女子同士で嫉妬させるのは、無理があるのかしら）

　凛とひふみが失敗したのを見た小麗が、皆の為にひと肌脱ごうと利平の手を取り、ひふみ達と入れ替えに弁天さまの前に進み出た。
　先ほどひふみが凛にやったように、利平にぎゅっと抱きつく。
（なっ！？　なんという幸運っ！！）
　音が鳴らないように鈴を抑えている為、片手が塞がっているのが残念でならない。
（だが、これもここから脱出する為だ！…むっはぁ、女子のいい匂い…）
　大義名分を言い訳に、小麗の肩に手を回そうとした利平は、ひふみの殺気を感じて手を引っ込めた。
　女子に不埒は許さないと、ひふみの目が雄弁に語っている。
　ひふみと利平の攻防も知らず、弁天さまの反応がないのを見て失敗したと思った小麗は、さっさと利平から離れ、皆の元へ戻った。
『嫉妬はダメだったのだ』
　小麗がノートに書き込む。
　それではと、民谷が次の提案をする。

『②銭洗弁天など、財の神としても信仰されている→お金（音が出ないようにお札がいいと思う）を供える』
　それぞれがポケットを探り出し合ったお金を、アリーセが教卓に備えて弁天さまを拝んでみたが、弁天さまは手元の琵琶を優しく撫でただけで、お金には目もくれなかった。
『これも違うみたい』
　戻ったアリーセは、持ち帰ったお金を皆に返した。
　目を閉じて、今まで蓄えてきた知識に考えをめぐらせた民谷は、悩みながら第３の提案をした。

『③裸弁天像もある→「ストリップお願いします」とか？（見たくないけど）』
　女子が眉を顰める。
『津止の裸踊りなんか見たくねー。＆脱がした所でどうするんだよ？』
　利平がもっともな意見を書き込んだ。
　さすがの民谷の知識もネタ切れか、鉛筆がノートをさ迷う。
『あとは、弁天の神使・化身は蛇とされるし、蛇が苦手とする物を使うという手もありかも』
『蛇が苦手なものってなんだ？』
『民話ではよく蛇退治に煙草等を用いるが、…無さそうだな』
　利平の問いに、少し考えて民谷が答えた。
『諦めるのは早いわよ』
　そう書いたひふみは、何事かを思いついた表情を見せた。
『煙草より、ライターの方がいいわ。不良なら煙草を喫うのに必ず持ってるはず！』
　ひふみはノートにそう続けると、急いで席に戻って行った。

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