寝子高七不思議シリーズ：存在しない教室の存在｜リアクション

寝子高七不思議シリーズ：存在しない教室の存在

　その時、円の抵抗もむなしく、最後のシールが剥がされた。
　同時に振り払われた円が机にぶつかり音を立てる。
　勢い良く現れた牛が、嬉々として円に突進し、そのまま床へと沈める。
「わぁぁぁ！　そんなに甘く無いかぁぁぁ！」
　自由が聞くようになった弁天さまが、椅子から降りようと入り口の枠に手を掛けた。
　――あと１５センチ。

　力いっぱい椅子を押したアリーセ、凛、小麗が揃って影に捕まった。
「嫌ーっ！！」
　凛は叫んで、影に必死に抵抗しながら、弁天さまを乗せた椅子にギュッとしがみついた。
　アリーセは身体をねじって影に手を伸ばす。
「黒い影、牛、見なきゃ、正体を、せめて…」
「牛ー！！　離せなのだーっ」
　必至に抵抗する小麗の足が、偶然にも抵抗する弁天さまの手を入り口の枠から叩き落した。
　――あと、５センチ。

　このまま、助からないのかと思われた瞬間、圭花が後ろから力いっぱい椅子を押した。
　教室を追い出されそうになった弁天さまが慌てて椅子から逃れるのを見計らって、圭花はひふみが残し、八神が託した紙飛行機をその着地点に滑り込ませた。
　同時に、牛が圭花をも突き刺し、床へと沈み込む。

　――くしゃり
　弁天さまの足が、紙飛行機を踏んで音を立てた。

「あらら……ざーんねん」