熱血！　寝子島不良伝　～坊主来襲～｜リアクション

熱血！　寝子島不良伝　～坊主来襲～

【陽動をかける者たち　天井編】

「屋敷野、足下に気をつけて……静かに」
「きゃっ！　とっと……」
　倉庫の天井にある鉄骨の足場に逆巻天野と屋敷野梢はいた。梢の方は時折引かれる手に、そっと視線を移してドキドキしていたりするが、天野はどこ吹く風といったところだ。二人は倉庫内の様子を観察する。
「下は完全に乱戦になってますねー」
　ちょうど、下ではオカマハリケーンが炸裂し、寝子高生たちが倉庫内になだれ込んだ最中だった。
「これじゃ、機材もダンボールも落とせない」
「とりあえず、人質は倉庫の中にいないようですねー知らせませんと」
「……鷹司に教えないとな」
　鷹司とは、天野の知り合いの鷹司凜太郎のことである。
「千手丸という人は、遠目から見てもわかりますねー違和感しかありません」
　二人はそう言いつつも、倉庫の中をゆっくりと見回していく。
「……あそこの扉だな。千手丸とやらの近くだな……風紀委員から見て左手側か」
　とりあえずは、待機といったところだろう、と天野は言おうとした。
「……何をしている？」
「……すいません、捕まっちゃいましたー」
「おーおー、まさか上から攻撃する目的の奴がいるとはなぁ、へっへっへ、ツいてるぜ」
　不良の一人が、梢にナイフを突きつけていた。
「違いますよー。敵に向かって上から爆竹とか煙球とか、適当なのを投げつけようとしてただけです」
「ダンボールや元から上にあった機材を落とすだけだぞ？」
「それは立派な攻撃だッ！　というか人の話を聞けッ！　いいかこの……」
「捕まるのって結構ドキドキしますねー」
「なかなか出来ない体験だな」
　マイペースで話す二人、不良は完全に頭に来たのか思いっきりナイフで梢を掻っ切ろうとしたが……。
「ぎゃっ！　な、ナイフが」
「ヤマアラシの針は当たると痛いよ」
　天野がダーツの要領で、鉄針でナイフを弾いた。当然のように、ナイフは飛んで、何処かへ飛び去った。
「くっ、お、覚えてやがれッ！」
　そう言って、負け惜しみを残して去っていく不良。
「……無事か、屋敷野」
「あ、無事ですよー？」
「そうか、次は気を付けてな」
　そう言って、再び観察に戻る天野。
（まったく……）
　心の中では色々と複雑な梢。しかし、今はそればかり考えていられない。
　梢は頭を切り替えると、すぐに次の行動を考え始めた。

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