夏だ！　海だ！　大雪だ？！｜リアクション

夏だ！　海だ！　大雪だ？！

「ふむ、危険だな」
　お猫様を探して三千里。
　浜辺を捜索していた月詠と美咲紀が出会ってしまったのは、麗子。
　二人の目の前で、カップルが思いっきり情け容赦なく吹雪きで吹っ飛ばされた。
「これはなんということでしょう？！　この異常気象は、あの美女の仕業だったのです！！」
　美咲紀が記者魂で状況を見守る。
「飛んでったカップルは自業自得だろう。だがあまり周囲を巻き込むな。特に海の家はな」
　冷静に麗子を止める月詠。
　だがそんな言葉に耳を傾ける麗子ではない。
「わたしに指図するというの？　いい度胸ね。身の程を思い知るがいいわ！」
　ぶんっ！
　二の腕から鋭い吹雪が月詠目掛けて繰り出される。
（やれやれ、面倒な）
　軽い溜息とともに、月詠は避ける事無く吹雪に『触れる』
　正確には、彼女が持ち歩いていたスケッチブックに吹雪が触れたのだ。
　その瞬間、吹雪は彼女の絵の中に閉じ込められた。
「どうゆうこと……？」
　麗子は困惑を隠せない。
　無論、全ての吹雪が消え去ったわけではない。
　月詠を狙った鋭い吹雪だけが封じられたのだ。
「今、一体何が起こったのでしょうか？　吹雪が、スケッチブックの中に消えていきました！　この勝負、どうなるの？！」
　固唾を呑んで見守る美咲紀。
　睨みあう麗子と月詠。
　先に動いたのは月詠だった。
「スレンダー美人というのは、高嶺の花と見られがちだ」
「急に何を言い出すの？」
「まぁ、最後まで聞いてくれ。君のような美人がそのまま攻めても、相手が釣り合わないと思って逃げてしまう。違うか？」
　今までを思い出してみるがいいと、月詠は促す。
　月詠から目を逸らし、過去を振り返る麗子。
　優しくて読書好きだったＡ君。
　振られた言葉は『僕みたいなのと……？　からかわないで下さいっ』
　太っちょだったけれど、道路に飛び出した猫を必死で助けた勇敢なＢ君。
　振られた言葉は『俺なんかっ……』
　成績はいつも最下位。それでも毎日放課後頑張って勉強していた努力家のＣ君。　　
　振られた言葉は……。
「ああああああ、もう、思い出したくもないわっ！」
　麗子の両目から涙が溢れた。
　いつもいつもいつも、一体何が悪いのか。
　麗子は振られ続けるのだ。
　自分の気持ちを正直に伝えただけなのに。
「相手に自分が合わせよう。そうすれば上手くいくと思う」
　月詠のアドバイスに、目を見開く麗子。
「合わせる……？」
「それは素敵なアイディアですね！　読書好きな男性なら一緒に読書をしたら感想で話が弾みそうですし、太っている男性なら一緒に美味しく食事とか。うーん、頭が悪い方なら、勉強を教えてあげるとかどうでしょうか」
　美咲紀がうんうんと頷く。
「……わたしに足りなかったのは頭脳でも美貌でも魅力でもなく、相手に合わせる努力だったのね……」
　気づかせてくれてありがとう。
　麗子がそう呟くのと、吹雪が止まるのは同時だった。　
（まぁ、適度なオチどころってやつかぃ？）
　いつの間にかちゃっかり杖子を巻いて戻ってきていた瓢は、にやりと笑った。

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