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- 学年：職業
- 00月00日生 00歳
- AAA000000
＜CI@SP＞マヌカノイドはリアル・ワールドの夢を見るか
●飽和するこころ●
PM14:30過ぎ、こばと幼稚園。
お迎えの時間が始まって、園庭からは賑やかな声が響いていた。
「チカちゃーん、大家のおばちゃんがお迎えにきたわよー」
「はーい。あ、おばちゃーん！」
先生の声に、ひまわりの名札が付いた半袖スモックを着た、おかっぱの女の子が元気に出てくる。
チカは下駄箱近くの廊下で座っている、同じひまわり組の女の子を振り返った。
「まゆみちゃん、また明日ね！」
溢れる笑顔に、まゆみと呼ばれた少女は黙ったままチカの背をを見送る。
その表情には何かが欠けている気がした。
（まゆ、まゆみ。三つ編みのお下げ。あの少女か？）
遠巻きに眺めていたのは月だ。
「真由美ちゃーん。あ、そこにいたのね。はい、お母さん」
その少女も母親の迎えで帰っていく。
（今は人目が多い……桜台に住んでいるなら、比較的近所でしょうか）
駐車場の車に乗り込む二人を、月は追跡した。
PM16:30頃、桜台の住宅街の一角。
何故かリサちゃん人形を手に、シグレが現れた。
月が留守らしい家の植え込みから手振りで呼ぶ。
「その人形は？」
「途中で確保した。……状況は？」
「報告の通り、目標の名前は三浦 真由美と判明しました。現在、母子ともに家の中に」
話していると、プランターが並べられた1階のテラスに真由美が出てきた。
ガーデニング用品だろうか、中でも普段は使われていないらしい棚を、家の方を気にしながら探っている。
「ここからではよく見えないな……」
シグレは頭が出ないよう身動ぎしたが、茂った葉の間からは小さな背しか見えない。
その時、月はリサちゃん人形のことを思い出した。
彼女のろっこんはドールダイブ。
くちづけで憑依した人形を操り、人間では入り込めない場所まで忍んでいく。
少女の手には、可愛いプリントのハンカチ。
その上に緑色の光を纏う小鳥が横たわっていた。
小鳥のくちばしの前には、小さく砕き湿らせたクッキー。
「やっぱり……たべられない？」
真由美は目元を赤くして、たまにリビングらしき窓を気にしていた。
母に知らせようか……でも、勝手に鳥を匿っていることを怒られるかも知れない。
今にも死んでしまいそうな小さな命を前に、大人にも打ち明けられずに独りで耐えている。
だが、それも次の瞬間幕が切れた。
「真由美？ どうしたの」
心配げな母親の声に、しかし少女はびくりと震えた。
サンダルを履いて降りてくる母。
その目から、小鳥を隠すように庇う。
「まあ……どうしたの、それ」
（『それ』？）
彼女の物言いに、月は引っ掛かりを覚えた。
真由美は無言のまま母を見上げている。
「何処かでで拾ったの？ 綺麗に見えても、鳥の羽根には雑菌……病気の元が沢山付いているのよ。カラスかしら……その羽根、こっちに貸してちょうだい」
手を伸ばした母から、真由美は懸命に逃れる。
「真由美、お母さんの話を聞いてちょうだい。病気になったらとっても苦しいし、幼稚園にも行けなくなっちゃうのよ」
「……やっ！」
優しい筈の母の手を、少女は跳ね除けた。
母子が庭先で問答し潜む者が様子を窺っている中、家の前を通る道にふわりと影が現れる。
小さな手に抱かれる、緑色の小鳥を青い右目が視認した。
「……みつけた」
天吏の小さな小さな呟きは、誰に届くことなく風が浚う。
「真由美……」
母の掠れた声を聞きながら、真由美は小鳥を抱き締めて俯き、ぶるぶる震えている。
「……だったら……」
震えたか細い声が零れた。
「……ママだったら、こんなことしない……。きれいねって、まゆのあたま……なでてくれるの……おかあさんは『ママ』じゃない……」
「まゆ……み」
母親は酷く傷付いた顔をしたが、真由美は気付かない。
ただ自分の胸に収めきれない感情を、溢れさせるだけ。
小鳥が僅かに首をもたげ、小さな悲鳴を上げる。
だめだよ、と制止するように――
その時、寝子島の別の場所で。
寿司屋の主人に分けて貰ったアラを前に牽制し合う野良猫を気にもせず、日陰で目を閉じていた灰色の猫の耳がピクッと震えた。
「……だいきらい！！」
少女が叫んだ瞬間大気が唸り、見えない巨大な何かが弾けた。
（な……）
人形に憑依した月の魂は、至近距離でそれを食らう。
幼い声が思考を埋め尽くす。
ママ、ママ、ママ！
どうしてむかえにきてくれないの？
まゆ、ずっといいこにしてまってたのに……
ママといっしょに、ほんとうのおうちにかえりたいよ……！
むかえにきてよ、ずっといっしょにいてよ！！
（このままでは『持っていかれる』――）
次の瞬間、月の意識は掻き消えた。
PM14:30過ぎ、こばと幼稚園。
お迎えの時間が始まって、園庭からは賑やかな声が響いていた。
「チカちゃーん、大家のおばちゃんがお迎えにきたわよー」
「はーい。あ、おばちゃーん！」
先生の声に、ひまわりの名札が付いた半袖スモックを着た、おかっぱの女の子が元気に出てくる。
チカは下駄箱近くの廊下で座っている、同じひまわり組の女の子を振り返った。
「まゆみちゃん、また明日ね！」
溢れる笑顔に、まゆみと呼ばれた少女は黙ったままチカの背をを見送る。
その表情には何かが欠けている気がした。
（まゆ、まゆみ。三つ編みのお下げ。あの少女か？）
遠巻きに眺めていたのは月だ。
「真由美ちゃーん。あ、そこにいたのね。はい、お母さん」
その少女も母親の迎えで帰っていく。
（今は人目が多い……桜台に住んでいるなら、比較的近所でしょうか）
駐車場の車に乗り込む二人を、月は追跡した。
PM16:30頃、桜台の住宅街の一角。
何故かリサちゃん人形を手に、シグレが現れた。
月が留守らしい家の植え込みから手振りで呼ぶ。
「その人形は？」
「途中で確保した。……状況は？」
「報告の通り、目標の名前は三浦 真由美と判明しました。現在、母子ともに家の中に」
話していると、プランターが並べられた1階のテラスに真由美が出てきた。
ガーデニング用品だろうか、中でも普段は使われていないらしい棚を、家の方を気にしながら探っている。
「ここからではよく見えないな……」
シグレは頭が出ないよう身動ぎしたが、茂った葉の間からは小さな背しか見えない。
その時、月はリサちゃん人形のことを思い出した。
彼女のろっこんはドールダイブ。
くちづけで憑依した人形を操り、人間では入り込めない場所まで忍んでいく。
少女の手には、可愛いプリントのハンカチ。
その上に緑色の光を纏う小鳥が横たわっていた。
小鳥のくちばしの前には、小さく砕き湿らせたクッキー。
「やっぱり……たべられない？」
真由美は目元を赤くして、たまにリビングらしき窓を気にしていた。
母に知らせようか……でも、勝手に鳥を匿っていることを怒られるかも知れない。
今にも死んでしまいそうな小さな命を前に、大人にも打ち明けられずに独りで耐えている。
だが、それも次の瞬間幕が切れた。
「真由美？ どうしたの」
心配げな母親の声に、しかし少女はびくりと震えた。
サンダルを履いて降りてくる母。
その目から、小鳥を隠すように庇う。
「まあ……どうしたの、それ」
（『それ』？）
彼女の物言いに、月は引っ掛かりを覚えた。
真由美は無言のまま母を見上げている。
「何処かでで拾ったの？ 綺麗に見えても、鳥の羽根には雑菌……病気の元が沢山付いているのよ。カラスかしら……その羽根、こっちに貸してちょうだい」
手を伸ばした母から、真由美は懸命に逃れる。
「真由美、お母さんの話を聞いてちょうだい。病気になったらとっても苦しいし、幼稚園にも行けなくなっちゃうのよ」
「……やっ！」
優しい筈の母の手を、少女は跳ね除けた。
母子が庭先で問答し潜む者が様子を窺っている中、家の前を通る道にふわりと影が現れる。
小さな手に抱かれる、緑色の小鳥を青い右目が視認した。
「……みつけた」
天吏の小さな小さな呟きは、誰に届くことなく風が浚う。
「真由美……」
母の掠れた声を聞きながら、真由美は小鳥を抱き締めて俯き、ぶるぶる震えている。
「……だったら……」
震えたか細い声が零れた。
「……ママだったら、こんなことしない……。きれいねって、まゆのあたま……なでてくれるの……おかあさんは『ママ』じゃない……」
「まゆ……み」
母親は酷く傷付いた顔をしたが、真由美は気付かない。
ただ自分の胸に収めきれない感情を、溢れさせるだけ。
小鳥が僅かに首をもたげ、小さな悲鳴を上げる。
だめだよ、と制止するように――
その時、寝子島の別の場所で。
寿司屋の主人に分けて貰ったアラを前に牽制し合う野良猫を気にもせず、日陰で目を閉じていた灰色の猫の耳がピクッと震えた。
「……だいきらい！！」
少女が叫んだ瞬間大気が唸り、見えない巨大な何かが弾けた。
（な……）
人形に憑依した月の魂は、至近距離でそれを食らう。
幼い声が思考を埋め尽くす。
ママ、ママ、ママ！
どうしてむかえにきてくれないの？
まゆ、ずっといいこにしてまってたのに……
ママといっしょに、ほんとうのおうちにかえりたいよ……！
むかえにきてよ、ずっといっしょにいてよ！！
（このままでは『持っていかれる』――）
次の瞬間、月の意識は掻き消えた。
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
-
- 2014年02月15日
- 参加申し込みの期限
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- 2014年02月22日 11時00分
- アクション投稿の期限
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- 2014年02月22日 11時00分
