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- 学年：職業
- 00月00日生 00歳
- AAA000000
ある霧の向こうの
霧が濃くて何も見えない。そんな場所に、七音 侑はいた。手を握られている感覚から己の手を見てみれば、どうやら誰かと手を繋いでいるらしい。
「あ、工藤君だ！ よかったー」
相手は友達の工藤 耀だった。
現在のこの状況がいいのかどうかはさておき、きょろきょろと周囲を見回す。霧の濃い森、今分かるのはそれだけだ。さっきまでは確か、耀に誘われて庭でスイカを食べていた気がする。
夏と言えばスイカ、スイカと言えば夏。しかしここにはスイカは無い。
侑はなんとはなしに、繋いでいる手から力を抜く。合わせて耀も手から力を抜き、侑と耀の手は離れた。
その途端、２人の足元に黒い穴が出現し、落ちそうになる。
「うにょ!? びっくりした、手を離しちゃだめなんだにー」
落ちる前に互いの手を掴み合ったおかげで、穴は塞がり、この場は事なきを得る。
「離すなよ？ 絶対離すなよ!?」
これは離せというフリだろうか。いやそれにしては耀の目は真剣そのものだ。
とりあえずこの先はどうすればいいのか、と霧の中をじっと見つめる。霧の奥で光が見えた。ぼんやりとはしているが、森の奥へ続いているようである。
「とりあえずこの光を辿ればいいのかな？ 探検にレッツらゴー！」
楽しそうに耀の手を引いて、侑は歩き出す。手を引かれるまま、耀は木の棒を手に、歩き出した。
しばらく歩くと、一際霧の濃い場所に出た。耀の姿も真っ白な霧に覆われていて、見えない。手を繋いでいるのに少し不安になる。
「あれ？」
ぴたりと侑は足を止めた。
「ここなんか変な音しない？ なんかいる……？」
侑はその変な音に恐る恐る足を踏み出……そうとして、鋭い痛みを覚えた。
「痛っ！ へ、蛇だ！ 早く抜けよう！」
「うわ、蛇か……棒で大きな音を立てて進もう。威嚇してる奴には近づかねえように……七音!?」
侑は足を止めていた。どうしたのかと、心配そうな耀に、軽く笑って見せる。
「うん、ちょっと咬まれたけど、平気へい……え？」
笑った侑の表情が凍りつく。瞳に映るのは、恐怖、戸惑い、それから。
「足が、動か……ない？ なんで」
思い切って咬まれた所を見ると、健康な色をしているはずの侑の足は、蛇の毒により壊死を始めていた。
黒く染まっている自分の片足を見て、悲鳴を上げることも出来ぬまま、侑はその場にへたり込む。
「ひっ!? な、なにこれ!? なんで！ なんで!?」
これではもう走れない？
部活が出来ない？
それよりみんなと遊べなくなる？
なにもできなくなるの？
絶望が侑の心を駆け巡る。
「そんな……イヤだ、イヤだよ……」
パニックになって、侑は泣き出す。
「だってこんな足だよ……？ こんなんじゃみんなに怖がられるよ……」
「侑!!」
耀は咄嗟に名を呼んだ。
本当は、侑の足を見て、目を逸らしたかった。思わず逸らしかけた。
しかし、そんなことができなかったのは、泣き出した侑を見たから。堪えなければと思ったから。強く名前を呼んで、侑の意識を足から耀に移そうとする。
「しっかりしろ！ ……痛いし怖いよな？ でも、今は進まなきゃいけねえんだよ」
侑は泣き止まない。それでも、耀は続ける。
「ここから出なきゃ、足も治せねえだろ!?」
（もう、「仕方なく」じゃない）
耀はぎゅっと侑の手を握る。
「俺はお前の手を離さねえ」
今離したら……侑はきっと、また泣いてしまう。それは穴に落ちるよりもずっとずっと……嫌だ。
耀は肩に侑の腕を回し、支える。手を離してしまわないよう注意を払って、肩を貸す体勢になる。
そうして、光が示す方向へ、慎重に進み始めた。
（ここから、出るんだ）
ぐすぐすとしつつも、侑が泣き止んできた頃、光は途絶えて石碑があった。
石碑が光った？ と思うと同時に、そこが寝子島の、スイカを食べていた庭だと知る。
「帰ってきたの？」
「みたいだな……って、足っ！」
耀は真っ先に侑の足を確認する。壊死していたはずの脚に、咬まれた痕は全く無い。
「あ、足が治ってる！ 夢じゃないよね？ ホントだよね？ うわーん！ よかったよぉ」
侑がまた泣き出す。まるで全てが、悪い夢だったかのようだ。治ったことに安堵したのは、侑だけではない。
（治って……る……？ ……よ、）
「よかったぁ!!」
安堵の気持ちを抑えられぬまま、耀は侑に抱きつく。
あの時、壊死していく足と泣きじゃくる侑を見て、本当に心配した。だから今は心から安心している。
あの世界から脱出できたことよりも、嬉しいかもしれない。
「いっぱい泣いたから疲れちゃった……」
安堵の涙を拭いて、侑が呟く。
「……あ？ 喉渇いた？ ……スイカでも食う？」
「うん！ スイカ食べるー！ 工藤君ありがと……」
「あ、工藤君だ！ よかったー」
相手は友達の工藤 耀だった。
現在のこの状況がいいのかどうかはさておき、きょろきょろと周囲を見回す。霧の濃い森、今分かるのはそれだけだ。さっきまでは確か、耀に誘われて庭でスイカを食べていた気がする。
夏と言えばスイカ、スイカと言えば夏。しかしここにはスイカは無い。
侑はなんとはなしに、繋いでいる手から力を抜く。合わせて耀も手から力を抜き、侑と耀の手は離れた。
その途端、２人の足元に黒い穴が出現し、落ちそうになる。
「うにょ!? びっくりした、手を離しちゃだめなんだにー」
落ちる前に互いの手を掴み合ったおかげで、穴は塞がり、この場は事なきを得る。
「離すなよ？ 絶対離すなよ!?」
これは離せというフリだろうか。いやそれにしては耀の目は真剣そのものだ。
とりあえずこの先はどうすればいいのか、と霧の中をじっと見つめる。霧の奥で光が見えた。ぼんやりとはしているが、森の奥へ続いているようである。
「とりあえずこの光を辿ればいいのかな？ 探検にレッツらゴー！」
楽しそうに耀の手を引いて、侑は歩き出す。手を引かれるまま、耀は木の棒を手に、歩き出した。
しばらく歩くと、一際霧の濃い場所に出た。耀の姿も真っ白な霧に覆われていて、見えない。手を繋いでいるのに少し不安になる。
「あれ？」
ぴたりと侑は足を止めた。
「ここなんか変な音しない？ なんかいる……？」
侑はその変な音に恐る恐る足を踏み出……そうとして、鋭い痛みを覚えた。
「痛っ！ へ、蛇だ！ 早く抜けよう！」
「うわ、蛇か……棒で大きな音を立てて進もう。威嚇してる奴には近づかねえように……七音!?」
侑は足を止めていた。どうしたのかと、心配そうな耀に、軽く笑って見せる。
「うん、ちょっと咬まれたけど、平気へい……え？」
笑った侑の表情が凍りつく。瞳に映るのは、恐怖、戸惑い、それから。
「足が、動か……ない？ なんで」
思い切って咬まれた所を見ると、健康な色をしているはずの侑の足は、蛇の毒により壊死を始めていた。
黒く染まっている自分の片足を見て、悲鳴を上げることも出来ぬまま、侑はその場にへたり込む。
「ひっ!? な、なにこれ!? なんで！ なんで!?」
これではもう走れない？
部活が出来ない？
それよりみんなと遊べなくなる？
なにもできなくなるの？
絶望が侑の心を駆け巡る。
「そんな……イヤだ、イヤだよ……」
パニックになって、侑は泣き出す。
「だってこんな足だよ……？ こんなんじゃみんなに怖がられるよ……」
「侑!!」
耀は咄嗟に名を呼んだ。
本当は、侑の足を見て、目を逸らしたかった。思わず逸らしかけた。
しかし、そんなことができなかったのは、泣き出した侑を見たから。堪えなければと思ったから。強く名前を呼んで、侑の意識を足から耀に移そうとする。
「しっかりしろ！ ……痛いし怖いよな？ でも、今は進まなきゃいけねえんだよ」
侑は泣き止まない。それでも、耀は続ける。
「ここから出なきゃ、足も治せねえだろ!?」
（もう、「仕方なく」じゃない）
耀はぎゅっと侑の手を握る。
「俺はお前の手を離さねえ」
今離したら……侑はきっと、また泣いてしまう。それは穴に落ちるよりもずっとずっと……嫌だ。
耀は肩に侑の腕を回し、支える。手を離してしまわないよう注意を払って、肩を貸す体勢になる。
そうして、光が示す方向へ、慎重に進み始めた。
（ここから、出るんだ）
ぐすぐすとしつつも、侑が泣き止んできた頃、光は途絶えて石碑があった。
石碑が光った？ と思うと同時に、そこが寝子島の、スイカを食べていた庭だと知る。
「帰ってきたの？」
「みたいだな……って、足っ！」
耀は真っ先に侑の足を確認する。壊死していたはずの脚に、咬まれた痕は全く無い。
「あ、足が治ってる！ 夢じゃないよね？ ホントだよね？ うわーん！ よかったよぉ」
侑がまた泣き出す。まるで全てが、悪い夢だったかのようだ。治ったことに安堵したのは、侑だけではない。
（治って……る……？ ……よ、）
「よかったぁ!!」
安堵の気持ちを抑えられぬまま、耀は侑に抱きつく。
あの時、壊死していく足と泣きじゃくる侑を見て、本当に心配した。だから今は心から安心している。
あの世界から脱出できたことよりも、嬉しいかもしれない。
「いっぱい泣いたから疲れちゃった……」
安堵の涙を拭いて、侑が呟く。
「……あ？ 喉渇いた？ ……スイカでも食う？」
「うん！ スイカ食べるー！ 工藤君ありがと……」
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
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- 2014年02月18日
- 参加申し込みの期限
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- 2014年02月25日 11時00分
- アクション投稿の期限
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- 2014年02月25日 11時00分
