金曜日の体育館裏｜リアクション

金曜日の体育館裏

　番組の主人公、深雪はポケットから手を出すと、きらりと輝く１００円玉を太陽にかざした。
　そして……
「ほら。金欲しいんだろ？　やるよ」
　なんという主人公だろうか……１００円玉をひょいっと校舎の方へ放り投げてしまった。

　刀はさっそく解説を入れる。
「金に目がくらんで１人が離れれば、２対２になる、そういう狙いだろう。ただ、そんな作戦が通じるとは思えな……なにっ！？」

　豚骨は見事に１００円玉を追いかけていった。
「おお！　おれっちの１００円～！！！　うおお～。おれっちの～～！」
　これで目の前の相手は、醤油と味噌の２人。人数はピッタリだ。
　が、剛は思わず手にしていた雑誌で深雪の頭をぺしり。
「１００円を捨てるもんは１００円で泣くんやで！」
　１００円玉を追いかけていた豚骨も一瞬立ち止まって振り向いた。
「そのとおり！」
「お前ら息ピッタリだな……つーか、たかが１００円で大げさなんだよ」
　深雪こそ２人の対応に呆れていた。
　そんな中、醤油は剛の持つ雑誌を凝視していた。
「それ……もしかして…………」

　ねむるはズームにしてみたが、よく見えない。
　刀は冷静に解説した。
「あれは『でも☆あっはん！』だね」
「え……？」
　ねむるは思わず、カメラを振り、刀の横顔を捉えた。
「君、すました顔して案外……」
　刀はきまりが悪くて目を逸らした……。

　番組のもう１人の主人公、剛が、手にしている『でも☆あっはん！』を見せつけた。
「ええもん持っとるやろ♪」
「それは……オレのだ！　返しやがれ～！！！」
「はっはっは。取れるもんなら取ってみたらええがな。……渡さへんけどな！」
　こうして剛と醤油の男同士の真剣勝負、『でも☆あっはん！』をめぐるバトルが始まった。
「ばかめ～。この醤油様が手ぶらでやってくるとでも思ったか！」
　醤油はどこからともなく、ヌンチャクを出してきた。
「ほわちゃあー！」
　ヌンチャクを右へ左へ振り回す、そのスピードは尋常じゃない。
　ひゅんひゅんひゅんひゅんひゅん……
「がぼべっ」
　自分の顔面に当たってうずくまってしまった。
「えっと、これ俺が相手せなあかんの？」
　呆れて空を見上げる剛。
　しかし、それは油断だった。
「あいたたたたたた」
　醤油のエロ本への執着は半端ではなかった。
　ヌンチャクが容赦なく剛を攻める。
「しゃあないな……おりゃ！」
　掃除中だった剛は、手にモップを持っていた。
　モップでヌンチャクの攻撃をことごとく防御し……そして一撃必殺！
　モップを醤油の脳天に叩き込んだ。
「お……ぱ……いい～～～」
　醤油の動きが止まった。
　剛は醤油に警戒しながらも、背中越しに声をかけた。
「おーい、深雪。そっちは大丈夫かあ？」
「大丈夫じゃねええよお～」
　深雪は味噌の攻撃を受け続けていた。
　が、よく見ると、味噌の攻撃は一発も当たっていなかった。
「なんてな」
　味噌の攻撃をかわしながら、じっくり観察していた。
　ついにイライラした味噌は、渾身の一撃を繰り出す。
「どおおおりゃあー！　濃厚味噌コーンバターアタ……ク？」
　味噌は、どどーーんと大きな音を立てて崩れていた。
　支点となっていた膝を蹴られ、体勢を崩したところで顎にきれいに拳が入っていたのだ。
　が、味噌はとにかくタフだ。
「うぐぐ……テレビの録画……忘れた…………帰らなきゃ」
　立ち上がると、深雪から逃げるようにフェンスを越え、裏山に逃げていった。
　仲間の豚骨醤油を置き去りにして……。