Riches have wings｜リアクション

Riches have wings

　通話終了ボタンを押して、八神修は電話をポケットに仕舞った。
「……真央ちゃんなんて言ってたの？」
　修におずおずと尋ねるのは花風もも。
　ふたりはいま、旧市街のアクセサリー屋の前で偶然一緒になったところだった。
「彼女もいま旧市街に居るらしい。さっそくお札の捕獲を行うようだ」
「そうなんだね。僕たちも、」
「ああ、手伝おう」
　そのとき、ももが名残惜しそうに店を見やったのを修は見逃さない。
「……買い物は、いいのか？」
「うん、もう見たからいいの」
　にこりとももは笑顔を咲かせた。
　そんな彼女に『女の子』を感じて微笑ましく思う修。
　同時に躊躇う。
　けれど、すこしでも被害を減らすために修は尋ねる。
「俺は自転車で来ているんだが、後ろに乗ってもらってもいいか？」
　女の子が、好きでもない、特別ではない男に抱きつくのは嫌ではないだろうか。
　修らしい繊細な配慮だった。
「……えっと、捕まってもいいかな？」
「ああ、もちろんだ」
「じゃあ、えっと。よろしくね」
　けれどももは、そんなことを気にして顔を曇らせることはなかった。
　ぺこんとももは頭を下げてから「ちょっとだけ、いいかな？」と言って、携帯を開いた。
　その間に修は自転車にまたがり、彼女を待つことにした。
（嫌がられなくてよかったな）
　体力がないという不安はあったが、頑張ろう。小さな決意を胸に、と、その間に修も電話を取り出した。