Riches have wings｜リアクション

Riches have wings

　羽の生えたお金たちがあっちこっちで飛んでいる。
　当人からすれば悲劇だが傍から見ていれば喜劇のようなもの。
　人間を小馬鹿にするように飛び交う奴らは滑稽そのもの。それを必死に追いかける姿は笑ってはいけないが、笑える様相。
　パシャリ、パシャリと軽快なシャッター音が響く。
　お金たちは――主に千円札は体を捻らせて不思議なポーズのサービスまでしてくれた。
「いいのだ、そのポーズ最高なのだ！」
　後木真央はデジカメのシャッターを切った。
　ひと通り写真を撮ってから、スマートフォンで電話帳を開く。
　きっちり三度のコール音で相手が電話にでる。
「修ちゃん修ちゃん旧市街で羽が生えたお札が飛び回ってるのだろっこん事件発生なのだ！」
　相手は同じ新聞部の八神修である。
『――ああ、俺達もいま旧市街に居て、確認した』
「真央ちゃんはいまから臨戦態勢に入るのだ。海開き用秘密兵器のお披露目なのだ！」
『なるほど、なにか秘策があるのか』
「もちろんなのだ！」
『そうか。合流できるといいんだが、まめに連絡を取るようにする』
「わかったなのだ！」
　電話を終えると、真央は背負っていたリュックを地面において、なにやら準備を始めるのだった。