Riches have wings｜リアクション

Riches have wings

●旧市街にて

　店を出てしまえば、暗いばかりの夜の旧市街。
　隣を歩く人間の顔が見えるかどうか、それほど明かりは繊細なものだった。
　そこにテオの声が響いた。その声を認識できたのは自覚しているもれいびだけなのだけれど。
「……そういうことなんだね」
　銀の髪が月明かりを吸って煌々と輝く。
　その幻想的な姿に相応しい落ち着いた口調で、ジャンヌ・クローデルは事態を飲み込んだ。
　彼女の手には茶封筒。
　中身は空っぽ。
　バイト代を確認しようと封を開けた瞬間するりするりと彼らは逃げていってしまった。
「僕のお金、ちゃんと回収しないと……」
　ゆったりとした余裕を感じさせる口調。
　けれど彼女は内心焦っていた。あれは彼女が生きるためのお金なのだから。
（……僕は、自分の力で生活していくから）
　だから心配しないで見守っていて。
　ジャンヌは重たそうに目を伏せてから、飛んでいったお金を追いかけていった。

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