◆甘家の晩餐。
その日は珍しく、甘 祥子(かん・しょうこ)の夜のお勤めがない日だった。
そのため、何ヶ月ぶりかに息子の喜好(きよし)と夕食を摂っていた。
「今日はお給料日だから奮発ししちゃった」
「ケーカク的に使ってね」
祥子が陽気に笑ってみせると、息子は不安そうにため息をついた。
誰に似たのか――少なくとも祥子には似ていないが――喜好は心配症のしっかりものだ。
だから祥子は、目の前で起こっている不思議現象について、思わず息子に尋ねてみた。
「ねぇ、喜好」
「どうしたのママ?」
「お金って羽が生えてたかしら?」
「なに言ってるのさ、そんなわけないでしょ!」
当然のごとく喜好は言ってのける。
祥子は息子に言われて、今度は自分の目がおかしいのだろうと思った。
「でも、じゃあ、あの羽が生えてるのはなにかしら?」
指差す方を喜好が見た。
羽の生えたお金っぽいものが窓の隙間をこじ開けて、外に飛び立とうとしているところだった。絵に描いたような雑な羽だなと祥子は思う。
「ママ!」
と、突然喜好が叫んだ。
「あれはお金だよ!」
「え?」
「ママ、ちなみにお給料って」
「いつも通り一週間分おろしてきたわよ?」
自分から問いかけたくせに喜好は祥子を無視して、虫取り網を手に取り、家を飛び出した。
◆金の雨が降る
この日も、
灯 斗南は淡々と日課をこなしていた。
彼の日課。
それは仮面で素顔を隠し、夜の寝子島の見回りをすることだ。
面倒くさがり屋な彼だが、見回りを面倒くさがってもっと面倒なことが起こると嫌だからという、独自の美学で、今日も今日とて見回りをしていた。
そんな彼がシーサイドタウンの外れに足を踏み入れた時、怪異が起こった。
空から、なにかが降ってきたのだ。
「……これは」
斗南はそれを避けて、思わず反射的に掌から焔を生み出した。
炎を出してから、落ちてきたものを観察する。
それは――
「お札?」
なぜお札が降ってくるのだろう?
それにこれは燃やしてもいいのだろうか?
斗南がそうしてしばらく思案していると、
『……はぁ……聞こえるか?』
駄猫。もといテオの声が頭に響いた。
どうやらまたろっこんが原因の事件らしい。
テオの言葉に耳を傾け、斗南はふぅとため息を付いた。
まずはじめにガイドに登場してくださいました灯 斗南様ありがとうございます。
もし灯様がご参加されない場合は、人知れず見えないところでお金の回収やらのお手伝いをしていてくれたのだろうというような風に思ってもらえればいいかなと!
◆概要
旧市街周辺でお金(ただしお札に限る)に羽が生えて逃げていきます。困った。
甘家は大事な大事な一週間分の生活費が飛んでいきました。ヤバイです。
ということで、喜好は虫取り網を持って旧市街を走り回っています。
以下もれいびはテオから入手済み情報。ひとは知りません。
・PC・NPC問わず、ひとが飛んでいるお金を見つけると、羽が消えてお金が降ってきます。
突然お金降ってきたというような認識になるでしょう。
・効果範囲が旧市街のJ5~L5、J6~L6、K7~L7辺りのようなので、そこから出ても羽が消えてお金が降ってきます。
・羽が生える条件は、お札の面積の1/3以上が外気に触れた場合。
つまり財布の中、ATMに入っている分には問題無いです。
中身を確認したり、買い物後にお財布にしまわないままひとの居ない場所まで行ったりするとお札に羽が生えます。
・この事件の原因は旧市街の飲み屋で飲んでいる女です。
この女は男にフラれて、ヤケになって散財しています。
発動条件:気持ちが沈んでいる時に散財する。
効果:一定範囲内にある、お金に羽が生えて自由自在に飛んで回る。
【お札の能力】
羽が生えたお金の能力は以下のようになっております。
羽が生える以外の大きな変化はありませんが、どうやら自立した意識はあるようです。(喋れたりはしません)
・1万円札 スマートに飛び立って、悠々と空を徘徊中。知能・パワーはそれなりにあるので、窓を開けたり、こちらの行動を読んで避けたりということも可能。
・5000円札 1万円札の後に続く優等生。能力は1万円札よりは劣るので比較的捕まえやすい。
・1000円札 人間たちを小馬鹿にするような飛び方をする嫌味なやつ。
(追いかけてくる人間の周りをくるくる飛んでから高いところに行ったり)
その小馬鹿にした態度につけ込む隙はあるが、甘く見てかかると、こちらが痛い目を見るかもしれない。
◆NPC
今回登場するNPCとは既知設定が可能です。
(PCがNPCと前から知り合いだった、ということにできます)
テオから聞く情報ではありませんので、
どこまで知っているかはそれぞれの関係によりけりです。
ただしきちんと理由付けをしてください。
(例:近所に住んでいる。ねこったー友達。学生時代の同級生・後輩など)
無理がある場合は採用できない可能性があります。
ガイド登場以外のNPCは登場いたしません
・散財中の女
付き合って七年の男(浮気 由自/うき・ゆうじ)にフラレて、旧市街の飲み屋でやけ酒中。
ですが、
まわりの人にお酒を振舞い、陽気に酒盛りをしています。
奢るかわりに楽しい気分にさせて。そういう感じのやけ酒です。
名前:愛破 憂子(あいば・ういこ)
詳細:
桜台在住の28歳女性。
左目の下に泣きぼくろがある黒髪美人。
大人しく見えるが、実は行動派。
趣味は読書と観劇。
好きなテレビ番組はあやうい刑事。
常備食はまたたびメイト。
ニャースブックやねこったーでは寝子島の素敵スポット等を発信している。
現在、寝子島の週刊タウン情報誌Nyago Worker(にゃーごワーカー)の編集部に所属しているライター。
生まれも育ちも寝子島。
寝子高卒業後は木天蓼大学文学部に入学し、留年することなく卒業している。
高校では演劇部、大学でも演劇サークルに所属していた。
その後取材を通じて知り合った浮気 由自と付き合い、結婚まで秒読みと言われていたところでの浮気発覚。
現在絶望の淵にいる。
・甘 喜好(かん・きよし)
貧しい家庭、働きすぎる母のために洋菓子店『Raton』でお菓子強盗を働いた10歳の少年。
なぜお菓子強盗かというと、彼のろっこんのせいで、お菓子消費量(お菓子にかかるお金)が凄まじいため。
現在薬屋『アネモネ』と洋菓子店『Raton』でお手伝いという名の社会勉強に励んでいます。
ろっこん:彼の頭に触れると、近くにいる生物に甘いものを食べさせたくなる。
詳しくは→さーさーさらさらさくさくさ。/今日も愛すべき『フツウ』の日。
現在:虫取り網を持って旧市街を走り回っています。
・甘 祥子(かん・しょうこ)
おっとりとした女性。
女手ひとつで喜好を育てているため、一日中働き詰め。
喜好は母が苦労しているのは自分のせいだと気にしている。
詳しくは→今日も愛すべき『フツウ』の日。
旧市街にあるボロアパートの一階に甘親子は住んでいます。
現在:家を飛び出した喜好を探し中。