Riches have wings｜リアクション

Riches have wings

　宮島メグは考えて、考えた結果を行動に移しただけ。
　甘家の生活がすこしでも楽になるように……愛情表現の方法を模索した結果を彼女なりに伝えているのだ。
「喜好くんのお母様」
「どうかしました～？」
「頭をなですぎると……はげてしまうという話があるんです～！」
　強引、といえば強引だけれど。
　これは彼女なりの提案である。
　メグはそっと祥子の手を握り「見てください」と喜好の頭を指した。
　喜好はくすぐったそうにしながら、頭が見えるように上目遣いで祥子を見上げた。
「ほら、見てください、ここ……」すっと声を潜めて「なんだかうすくありませんか？」
　祥子は息を呑んだ。
「喜好君の頭のこのあたり、なでたことありませんか……？」
　メグはそっと祥子の手を引き寄せて、その手に白い絵の具がついているのを確認する。
　確かについている。
　これで祥子には喜好がハゲているように見える。
　メグのろっこん、夢現で幻覚を見ているはずだ。
　その証拠に祥子は息を呑んだのだから。
「いつも、撫でて、ます……」
　その蒼白な顔を見て、すこし罪悪感を覚える、が、ここで引いたら意味がない。
　メグはこころを鬼にして畳み掛けた。
「でも、心配ありませんよ～！
　このすーぱーふわふわぬいぐるみさんの手でなでれば、喜好君の頭ははげません……！」
　隠し持っていた手のひらサイズのウサギのぬいぐるみを取り出し、ジャーンというセルフ効果音と共に祥子に差し出した。
「なんと、今ならただであげちゃいます……！」
「わぁ、とっても可愛いね！」
　洋美も話を盛り上げる。
「まぁお得なのね！」
「ですよ～！　お母様は特別な時だけ直でなでなでしてあげてくださいね～」
「ふふ、ありがとうねぇ～」
　その勢いに乗じて、洋美は祥子に耳打ちをした。わずかにだがその声がメグの耳にも届く。
「これは内緒にしてくれって言われたんですけど……喜好君、本当は頬を撫でられるのが好きみたいですよ？」
「あら！　そうなの？」
「あ、それにあんまり撫ですぎると癖っ毛になっちゃうんですよ。僕がそうで――」
　そうしてワイワイとしていると、荒井景貴も輪に入ってきた。
「それから確かタイの国では、頭を撫でると子供に幸運をもたらす精霊が逃げていくと言われていてタブーな事だとか……」
　へぇそうなんですね……。
　感心しながらメグは耳を傾けた。
「それは大変……！」
　が、明らかに皆無理をして演技をして精一杯の案を出している。
　メグ自身も慣れないことをして、妙に肩が凝ってしまった。
「私ったら、なんにも知らなくて……気をつけないと。
　ありがとうね～教えてくれて～」
　けれど純粋に喜んでいる祥子を見ると、きっとこれでいいのだとメグは頷いた。