Riches have wings｜リアクション

Riches have wings

　喜好がふいにひとりになる瞬間があった。
　嬉しそうにこの騒ぎを眺めている。
　鹿嶋洋美はその瞬間を見計らって、喜好に近づく。
「喜好君はさ、お金で苦労するのは自分のせいって思ってる？」
　なんで突然そんなことを言うのだろう。喜好のつぶらな瞳がそんな思いを雄弁に語る。
「……喜好君の家のことは知らないけど、私はそんなことないって思うな。
　家のために何かやるってことは素敵だし、いいと思うけど、変な義務感で自分を追い詰めないでね」
「べ、べつにぼくは……」
　幼い戸惑いが洋美にひしひしと伝わってくる。
　その姿を見ていると、胸の奥底にしまいこんでいた気持ちや思い出が蘇ってくるようだった。
「私もね、同じかどうかはわからないけど、そうだったんだ」
　静かに洋美の言葉を待つ喜好。
　期待に応えられるかはわからなかったけれど、洋美は喜好の目を見て、にこりと微笑んだ。
「母子家庭で、なにか手伝えることないかなって。いろいろ考えたりしたの」
　喜好は無言で考えこむ。
「大変です、喜好くんのお母様！」
　そのとき、宮島メグが祥子に駆け寄った。
　洋美は喜好に「ちょっといいかな」と声をかけて、一緒に祥子の元へ向かう。