Riches have wings｜リアクション

Riches have wings

　食事のために居酒屋を訪れる家族や未成年が近年増えているという。
　貞広護堂もそういうひとりだった。
　そうして暖簾をくぐり飛び込んできた光景がこれ。
　若い、やけに大騒ぎをしている女性。
　護堂はその姿を見た瞬間、溜息をつきたくなった。
　みっともない、というような意味ではない。
（ごまかしきれてねえぞ。バカだなぁ）
　単純に、笑顔の裏を感じ取ってしまったのだ。
　護堂はこういう人間を見ると、気がついてしまうと放っておけない。
　どうにかしてやれないか、そういう思いがこみ上げてくる。
「おーい！　楽しそうじゃねえかねえちゃん。オッサンも混ぜろ！」
　その女よりいくらかマシな笑顔を作り上げ、護堂は輪の中に入っていった。
「あら、あなたがオッサン？」
「おうよ」
「……同じ年くらいかしら？」
　護堂の本当の年齢は十五。
　老け顔万歳。一回り近く違うだろうが、けしてそんなことは口に出さない。
「ねえちゃんがいくつかなんて知らねぇからな」
「んじゃ、聞かないでおく」
「おう――っとおやじ、生中！」
　幸い、護堂はお酒にも強い（！）ので、バレることもないだろう。
「ふふ、私は愛破憂子。よろしくね」
「……おう」
　護堂は憂子の笑顔から目をそらすようにして、酒を煽った。

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