Riches have wings｜リアクション

Riches have wings

　空飛ぶお金。お札。銭。
　浪漫だと思った。
　目を細めて、うっとりとその姿を見つめる。
　あれを回収して軍資金にするのもいいが、そんなのちっともおもしろくない。喜劇でもない。
　どうするのがおもしろいか。
　ねこったーを見て考えた。
　懸命にお金を追いかける人々の姿を見て考えた。
　善人はお金を拾えば届ける。
　悪人はお金を拾えば懐に入れる。
　ならば狂人は――？
　答えが出た。
　よし、燃　や　そ　う。
　くつくつとこみ上げてくるものを抑えきれず、骨削瓢は準備してきた道具を地面に置いた。
「こんな糞暑いときに、札束で暖を取る。最高の贅沢だよねぇ」
　返事はない。返事はいらない。
　奴らは自分たちの価値をよくよく理解している。
　傷付けられるなんて、米粒ほども思ってないだろう。
　考えれば考えるほど、これから起こる出来事は楽しい物になっていった。
「さぁて、出陣さぁ」
　道具を持った。
　殺虫剤とライター。それから食用油を仕込んだ風船。
　持ってきたのはこれだけだ。
　けれどこれだけで十分。
　これだけあれば、お金は燃やせる。
「よぉ銭」
　瓢が笑うと、まずは千円札たちが小馬鹿にする用に寄ってきた。その数五枚だ。
　瓢の頬を撫でたり、お札同士で見をこすりあわせたりとバカをやらかしている。
（これが終わったら、愛破はんに会いに行かないとねぃ）
　そんなことを考えながら、瓢はライターに火をつけた。
　びくり。千円札が一気に瓢との距離を取った。
　遠巻きに瓢の動向を眺めている、という様子だ。
　ただひとつ言うならば、
「甘いねぃ」
　まだそこは射程範囲内だということだ。
　瓢は遠慮無く殺虫剤を噴射した
　ライターの火が何倍にも膨れ上がった。