Riches have wings｜リアクション

Riches have wings

　ボウルは荒井景貴が出したのだ、ということはすぐにわかった。
　ジャンヌが飛んでいった旨を伝えてあったので、すぐに差し出してくれたが、すべてが千円札。
「Merci.景貴さん」
　お礼を告げるも、つまり五千円しかないので、飛んでいった分には及ばなかった。
　あとは、もう自分で取り戻すしかない。
　ジャンヌはこっそりと頷いてから、祥子と宮祀智瑜に向かい直った。
　祥子は智瑜の励ましを受けながらも、唇をきゅっと結んでいた。
「祥子さん、智瑜さん、すこしだけお金たちの気を引いていてもらえないかな」
「構わいませんが、」
　智瑜が不安そうにジャンヌの顔を窺ってくる。
「僕がその隙に捕まえてみるよ」
「わかりました」
　智瑜の不安は拭いきれなかったようだが、一応納得してくれた。
　ジャンヌはふたりが自分を見ていないことをしっかりと確認してから、心のなかで助けてと念じる。
　するとゆらりと景色が揺らいだ。そのようにジャンヌには見えた……というよりはそう感じたのだ。
　おそらく、他の人間にはなんの変化も感じられないだろう。
　けれどジャンヌには彼が現れたことがわかる。ジャンヌ自身が呼んで、目の前に居るのだから。
（お願いラグエル。お金を捕まえて欲しいんだ）
　ジャンヌが請うと、ラグエルは迷わずにお金たちに向かった。
　いまは祥子と智瑜とで引きつけてくれている。
「お金さん、動かないでくださいね！」
「智瑜ちゃんの言うとおりよ。観念してお縄につきなさい！」
　ジャンヌの目論見通り、お金たちはふたりしか見ていないようだった。
　ラグエルがすぐ隣に行ってもお金たちは気がつかない。
　そうして難なくラグエルはお金を捕まえた。
　まわりには突然動きを止めたようにみえるだろう。
「なにがどうなってるのかしら？」
　首を傾げる祥子に、
「僕の守護霊が助けてくれたんだ」
　とだけ告げた。
　本当はろっこんの力で、守護霊とは言い切れないのだけれどその辺りの説明は難しいから言わずに置いた。
　事実「そう、それは素敵ね」と祥子は笑顔を浮かべている。
　これでいいよね、とジャンヌは頷いて、お金を財布にしまいこんだ。
　喜好と合流するまでもラグエルには他のお金も捕まえてもらい、随分とお金は集まる。
（よかった、）
　そう思いながらもジャンヌはふと疑問を抱いた。
　そもそもこっそりとラグエルを呼んだのは、ふたりが『ひと』だろうと思ったから。
　そしてテオは『ひと』がお金を見ればお金は落ちてくると言っていた。
　するとつまりふたりとも……。
　ジャンヌの考えがそこに至ったところで、喜好たちの姿が見えてきた。