Riches have wings｜リアクション

Riches have wings

　虫取り網とかそれくらい落ちていたらいいなと淡島直行は思ってみた。
　思ってみても結局どうにもならなかったのだけれど。
　直行は思わず遠くを見る。遠くではパタパタと大量のお札が飛んでいた。
　近くでも何枚かのお札が飛んでいた。
　最初は木にお金が引っかかってくれないかなとかも思ってみた。思ってみてもやはりそんなことにはなってくれない。
　仕方なしに軽く木に登ってみたが、それでも、お金には届きそうで届かなかった。
「く……あと少し」
　直行は懸命に手を伸ばす。
　千円札は触れそうになるとわずかに遠のいて、ということを繰り返している。
「そんなの、ありかよ……！」
　直行はぎりりと歯を食いしばる。
　木が軋むような音が聞こえた。やばいと思った。
「なんだ？」
　下の方から声が聞こえてくる。
　視線だけそちらにやると、男が居た。
　目があった。
　瞬間。
　千円札たちの羽が消えた。
「あ、危な、」
　木の枝もバキッと、不快な音を立てて折れてしまった。
　直行は咄嗟に幹に戻り、下に居た男もすかさず避けたため、大事はない。
　が、つつ、と背中に汗が伝っていく。大事はなくとも、心臓に悪いというものだ。
　お金は――お金も、多少汚れたり敗れたりはしていたが無事のようだった。
　それは素直によかったと思うことにした。

　淡島直行。
　わけもわからず六千円の回収に成功。
　未回収分のほうがまだまだ多かった。