襲撃！　ねこっこ☆もんすたー｜リアクション

襲撃！　ねこっこ☆もんすたー

　落ち着いた色合いの壁紙の隙間から、くすんだ（というよりは汚れた）壁がのぞいている。
　抜けた床は板で補強され、つぎはぎだらけの部屋を覆い隠すようにクッションや抱き枕がひしめいていた。
　ここは猫鳴館、美崎岬の個室。
　岬は松葉杖を置いて、布団に座り込んでいた。
　キリンの抱き枕の上に自身の腕を置いて、ゲームの電源をつける。
　そして彼らを召還する。
「大変なの！　サンマさんたちがこっちに来ちゃったのよ！」
　もしかすると来てくれないかもしれない。
　そんな不安はわずかだけれど岬の中にあった。
　けれどこれだけ愛してるのだからきっと大丈夫。
「出て来て！　私の愛しい子達！」
　岬は穏やかな笑みを浮かべた。
　最初にオニックマ（モデル：吉田熊吉）が飛び出した
「うわぁい！　また会えるなんて嬉しい……っ！」
　岬が腕を広げると、オニックマが照れくさそうに彼女を抱き上げた。
　次に姿を現したのはホワイトデビル（モデル：ウォルター・B）。
「美崎、久しぶりだねぇ」
「ウォルターせんせー。ふふ、相変わらず素敵ね」
　ホワイトデビルは久々に会った親戚の子にするように、岬にハグをした。
「あとは……」
　岬が笑みを深める。
　先の二人に比べて細い腕が画面から伸びてきた。
　その様子を岬は満足げに見守る。
　顔も見え、全身が画面から抜け落ちた。
「瓢ちゃん、ハジメマシテ」
「ご、ご主人……！　よ、よろしゅう頼んます」
　最後に出てきたのはチカコーテー（モデル：骨削瓢）。
　岬は微笑んでいるのに、チカコーテーはただただ震えていた。
「駄目ね私」
　彼の姿を見て岬はあからさまに落胆する。
　チカコーテーはいやな予感がして動きを止めた。
「きっと愛が足りないんだわ」
　予想通りの岬の反応にぎくり。
「とんでもないよぃ！　ご主人の愛はわだすにはもったいないくらいだねぇ！」
　慌ててフォローを入れて、
「さて、そろそろアキカタナの野郎を捕まえやしないかぃ？」
　話題をそらす。
「それもそうね」
　岬が納得してくれたことに内心ホッとして、岬一行は寝子高に向かうのだった。

　西門をくぐり、物音一つしない部室棟を過ぎるとアキカタナと女性が言い争う声が聞こえてきた。
　斥候としてチカコーテーが北校舎脇から渡り廊下方面を覗き込む。
「アキカタナよりサカナユウのほうがもてるわよ！」
「これ以上モテる必要はないぜ！」
「……また逃げられないようにしてあげる」
　渡り廊下の向こう側、学食の前あたりで、琴村嬢がアキカタナを追いかけていたのだった。
　そのことをチカコーテーが岬に報告すると、
「じゃああのアキカタナはあの子に任せましょうか」
　そう言って他のアキカタナを探そうとした。
　そのとき乾いた音が響いた。
　チカコーテーだけでなく、今度は遠距離攻撃担当のホワイトデビルも様子を窺う。
「いでぇ！」
　アキカタナは叫ぶが、嬢は彼に触れてもいないし武器も持っていなかった。
　しばらく様子を窺っていると、再びパン！　と音が響く。
「あそこだねぃ」
「そうみたいだねぇ～」
　チカコーテーとホワイトデビルは同じ窓を指さす。
　南校舎の三階にある一室だった。
「あそこから誰かが狙撃してるのね」
　彼らのさす場所に視線をやってから、岬が確認するように言うと、
「美崎はここで待ってろ。俺が行ってくる」
　返事を待たずにオニックマが駆け出した。
「あら」
　岬の左足は義足。彼ほど早くは走れない。
　オニックマの大きな背を見送り、ゆっくりと後を追う。

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