襲撃！　ねこっこ☆もんすたー｜リアクション

襲撃！　ねこっこ☆もんすたー

　テオによって世界が切り離される少し前のこと。
　宮祀智瑜は改造版ねこっこ☆モンスターの電源ボタンを押した。
　ゲーム内で育てているのはキリキリメガネ（モデル：桐島義弘）のキリリン。
　あれをしようこれをしようと考えながらゲームの起動を待っていると、急に画面が真っ白になった。
（え、故障しちゃったのかな……！）
　頭の中まで真っ白になってしまう。
　そうして智瑜が焦っていると画面の中から足が飛び出した。
　綺麗に磨かれた真黒なビジネスシューズ。薄青色のスラックス。
　なんとなく見覚えがあって、智瑜の胸がとくんと鳴った。
　それから、破れていないお尻部分が見えてきて、腰、腹、胸――。
「よ、」
　そして現れた顔。

　いつもと変わりない涼しげな義弘（？）が姿を現した。
「義弘先生？」
　智瑜が恐る恐る彼の名前を呼ぶ。
「いいや、キリリンだ」
　するとメガネのブリッジを持ち上げて、義弘もといキリリンが名乗りを上げた。
「キ、リリン」
　智瑜はぼんやりと繰り返す。
「なんだ？」
　逢えた喜びを抱くと同時に、ピリリと走る胸の痛み。
　そんな痛みを自覚する間もなく、
「ヘイヘーイ！　今日はイケイケだぜー！」

　寝子サンマみたいなアキカタナがそばを駆け抜けていった。
「え、っと、サンマさん？」
「いや、あいつは――」
　首をかしげる智瑜にキリリンは状況を説明するのだった。
　こうして世界は切り分けられた。

　と、切り分けられてすぐに、つまりテオの説明を受けてすぐに普堂しおりは寝子島高校に急いだ。
　もしかするとユキシロ（モデル：白沢絢子）が不安がっているかもしれないと思ったからだ。
　左手にはレジ袋。中にはプリンと片手鍋が入っている。
　右手には改造版ねこっこ☆モンスターをセットしてあるゲーム機。
　その状態でしおりは全力疾走した。
　前髪はきちんとヘアピンで止めているため邪魔にはならなかったが、地面を蹴るたびに首から下げた猫モチーフのペンダントが跳ねた。
　このペンダントを使えばしおりのろっこん『猫間飛行』寝子高までひとっとび！……のときもあるが、いまは無理だった。

　そんなこんなでたどり着いたときにはしおりの息は上がっていた。
「ユ、キちゃ、ん！」
　掠れる声で必死にユキシロの名を呼ぶ。
　ユキシロが現れる気配はなかった。
　やはり彼女はいないのだろうか。
　力が抜けて、しおりの顔が下を向く。
　ゲーム機と袋が目に入った。
　何気なくしおりはゲームの電源を押す。
　すると、

　ユキシロがゲームの中から顔を出した。
「あら、普堂さん、久しぶりね」
　前にしおりがゲームの中に入り込んだときと変わらない姿。
　猫耳・尻尾つきのクラシカルメイド姿だった。
「プリンあるよ～それから魚と鬼ごっこして遊ぼ♪」
　しおりはお鍋だけをユキシロに手渡し、
「あ、プリンはまたあとでね」
　と言って軽く準備運動をするのだった。
　アキカタナとの鬼ごっこに備えて。

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