ある雨上がりの戯れ｜リアクション

ある雨上がりの戯れ

　１日の授業が終わりを告げ、放課後になる。
　サナリアナ・アークロットは帰り道、何処に寄り道しようかと悩みながら校門を出た。
　踏み出した先には水溜まりがあったのだが、水飛沫が跳ねたときにはもう遅し、あっと声を上げる間もなく水溜まりに踏み込んだ。
　不思議なことに景色が変わる。正門前だったはずなのに、サナリアナがいるのはシーサイドタウン駅前だった。
　夕方の駅前は家への帰路に着く人や、買い物をする人で賑わっている。
　そんな夕方の喧噪、雑踏の中で、場所が移動したという驚きよりも、不意に物悲しい気持ちが胸中を占めた。
　自分を見失いそうで祖国を飛び出したサナリアナ。やはり心細い気持ちもある。
　無謀だったのかもしれない……そんな思いに捕らわれて、サナリアナは空を見上げた。

「虹……」

　思わず声を漏らす。
　午後の授業を受けていたときには降っていた雨。それが上がって虹が出たのだろう。
　サナリアナは虹を見て、ある思いが込み上げてきた。ある思い。上手く説明できる自信はサナリアナ自身にも無い。
　けれど、少しだけ、さきほどまでの物悲しい気持ちが和らぐ。
　たまには電車で帰るのも良いかもしれない。

　電車の心地良い振動に身を任せながら、サナリアナは車窓から再び空を見る。
　うっすらと、消えゆく虹。
　それを見ながら、思う。

　間違ってはいない、と。
　私は私だ、と。

　そう、自分らしくあることを、再び決意した。