短夜のsparkler｜リアクション

短夜のsparkler

○祭りの後の
◆
「花火終わったらやっぱり寂しくなるなー」
ちょっと寂しそうに呟く浅沼柳司に、
「そう、だね。でも、今日とっても楽しかったよ」
誘ってくれてありがとう、と小さく微笑む桐生計都。
「写真、プリントアウトして渡すから。また、一緒に遊ぼうね……」
「おう、勿論やで！　写真楽しみにしとるで！」
おずおずと言う計都に、柳司は親指をぐっと立ててみせた。
「っと、そやゴミ片付けて帰らんと。ゴミ掃除手伝ったところやしな」
「あっ、僕も手伝うよ……」
楽しく遊んだ後だから、後片付けもきっと楽しい。

◆
楽しい時間は、あっという間。
ちょっとしんみりとしつつも、時子は片付けを終えて帰り支度に入る。
最後に、もう一度『鳥の囀り』を使用。
「怖くなかったですか……？」
鳥達に、優しく問いかける。
返ってきたのは、時子のおかげで怖くなかったという言葉。
「それなら良かった……。では、帰りますね……」
おやすみなさいと鳥達に微笑みかける。それから一緒に花火をした面々にも、
「今日は一緒に花火ができて、楽しかったです……」
一礼し、時子は公園を後にした。

「僕もそろそろ帰ろうかな。じゃあ、今日はありがとね！」
そう言って立ち去ろうとした千里に、
「万里ちゃんセンパイこんばんはなのだ」
背後から真央が声をかけた。人格だけ変わっていて見た目はそのままな関係上、こういう状況はまあ起こり得る。
「ごめん、万里じゃないんだ僕」
「えっ、そうなのだ？」
真央がきょとんとした表情になる。
「僕は桧垣万里の双子の兄だよ」
実際そうなるはずだったのだから、間違ってはいない。
「お兄さんだったのだごめんなさいなのだー！」
「気にしないでよ、なにせ見た目は一緒だしね」
色んな意味で。
「おーい、真央ー」
「あ、修ちゃん今行くのだー。それじゃあ万里ちゃんセンパイのお兄さん、さよならなのだー！」
「さよならー、万里と仲良くしてあげてねー」
とてとてと走って行く真央に手を振り振り、無事に乗り切れたことをほっと安堵する千里だった。

◆
夜は物騒だからと、修は真央と月詠を自家用車を呼んで送ることにした。
「修ちゃんありがとうなのだー」
「すまないな、八神」
「いいんだ、気にするな」
公園の中には車は入ってこれないので、出口までは歩きで向かう。
その途中、一行は敷地内をうろうろしている邪衣士の姿を見かけた。明らかに、変な方向に向かいそうになっている。
「おーい、邪衣ー」
「士ちゃーん」
士の方も三人に気がついて、
「おお……ちょうど良い所に。帰り道教えてくれ」
修はその言葉に、思わず苦笑。
「ああ、やっぱり迷ってたんだな」
「邪衣もついてくればいいんじゃないか、帰るところだし」
口で教えるよりも、そうした方が彼には良いだろうと月詠。
というわけで、士も加えて四人で帰り道を行くことにするのだった。

◆
帰り道。誠也は一人歩きながら、
（楽しかったっすね、花火）
フツウの楽しさというもの、改めて実感していた。
一学期の間は、何がやりたいかがわからなかったけど。
（これからは不器用なりに積極的になりたいっすね）
右手を軽く握って、小さく決意。
そんな決意をしたからだろうか、それともフツウの楽しさを実感したからだろうか。
右手の辺りに、少し違和感。
「あれ……？」
そういえば、と今まで気付いてなかったことにふと気付く。
そうか、これが。
「自分にできる事、やりたい事、まだまだたくさんあるっすね……」
夜空を見上げ、小さく呟いた。

◆
アトリエ。
月詠はメモを見ながら、デジカメに撮った写真に手を加えていた。
と言っても、そんな大げさなものではない。メモした花火に軌道を元に、ほんのちょっとだけ。
加工を終えたら、写真を極小サイズでプリントアウト。
丁寧に切り抜いたそれらを、一枚の用紙に貼りあわせていく。
そうして出来上がったコラージュは、全面に今日一日の思い出が散りばめられていた。
窓際に立ち、星明かりに透かすようにしてコラージュを眺める。
やがて、小さく頷いた。

それは後日、学校の掲示板に貼られたとかなんとか。

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あとがき

担当マスター：風雅宿
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ちょっと変わった花火大会、いかがでしたでしょうか。
楽しんで頂けたなら、そして手持ち花火も悪くないと思って頂けたなら幸いです。

本シナリオに参加して頂きました、全てのプレイヤーさんとキャラクターさんに感謝を。

それでは失礼致します。

またご縁がありましたら、その時はどうぞよろしくお願いします。

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