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【新入生歓迎会】挑め！ 新入生歓迎大祭、略して……新歓祭！
●トップバッターたち
最初に舞台を踏んだのは、清らかな印象のある少女です。
「一番手を務めさせていただきます。御鏡 聖と申します」
白い着物に赤い袴、彼女は神社の巫女の扮装でした。
これは仮装ではなく本物、彼女の実家『水鏡神社』の制服なのです。すっと背筋を伸ばして立つと、涼やかで実によく似合います。
「演じものというよりは祈祷でしょうか。一年の始まりにして伝統、この新入生歓迎大祭を契機として、皆さんがこれからも健やかに過ごせるように、私はこれから、神様へ祈祷・奉納をする為の巫女神楽を披露しようと思います」
聖はマイクを使っていません。ですがその声は伸びやかに、講堂の隅々にまで届きました。
「まだ修行中の身ではありますけれど、私の想いを乗せた舞が神様まで届くように、そして、この舞を見てくれる皆さんにいい舞だと思ってもらえるように頑張ります」
深々と一礼、そして聖は左手（ゆんで）に扇、右手（めて）に鈴を持ち、しずしずと舞いました。
清流のように音楽が流れてきます。これは彼女が用意していたものです。
その音に乗せ精神を集中し、一心に祈り、四肢を動かすのです。
――未熟な私がこの衣装をまとって舞うことを、父は良しとしないでしょう。
彼女には確信がありました。
ですので彼女は父親を納得させるだけの舞を舞えるよう、ここのところ毎日、血が滲むような鍛錬をしてきた聖なのです。
優雅に見えるこの舞ですが、実は激しく体力を消耗するものでした。込める祈り……それが大きいほど、必要とされる技量は困難を極めます。途中で力尽きないようあらかじめ飲んでおいた砂糖が、胃の中でじわじわと溶けていくのを聖は感じていました。
神楽を舞いながら聖は、ゆっくりと繰り返し祝詞を唱えました。
扇を開く角度、鈴を歌わせる頃合い、いずれもぴったりと決まります。
最後に、しゃんと鈴を鳴らし、舞を終えました。
「ありがとうございました。これから舞台に上がる皆さん……皆さんのご健闘をお祈りしております」
倒れそうなほどに疲労していますが最後まで丁寧に礼をして、聖は清浄たる気持ちで舞台を降りました。
皆様に幸多かれ――これが彼女の祈りです。
幸多かれ。
「いい舞台でしたね」
舞台袖に下がった聖に、薄野 五月が声をかけました。
「ありがとうございます。あなたも頑張って下さい」
ほっとしたような笑みを聖は浮かべました。あとは着替えて、舞台袖で控える生徒たちに日本茶を注いで回りましょう。
心のバトンタッチ完了。次に脚光を浴びるのは五月となります。
幕で守られた舞台袖から、眩い光あふれるステージへ……五月は緊張気味の表情ながら、落ち着いて歩み出しました。
――この場は一年生全体の戦い。一人でステージに立つ方も、大勢でステージに立つ方も一緒。
つまりは団体戦です、という想いが五月の中にはあります。
だからこそ、同じ一年の仲間たちのために、少しでもこの場をあたためることができたら……と考えています。
中央に立てられたマイクスタンド。
マイクロフォンを軽く握って、ひんやりとした感覚を味わいつつ、右手の指でスイッチを入れます。ブツ、と音を上げて電源が灯りました。
「私たち一年生が先輩方のおもてなしをする『新歓祭』……実に、実に素晴らしいと思います。ですが私は何をしたものか……実に、実に迷いました」
そして彼女は言いました。歌を唄おう、と。
薄野五月の選んだ舞台表現は校歌の独唱です。
「それでは聴いて下さい」
五月の言葉が終わるとともに、哀愁のメロディが流れ始めました。
哀愁？ そうです。いやもっといえば、浪花節……。
いわゆるヨナ抜き音階です。そう、一般的にいうなら演歌調です。
これは五月が、祖父から借りてきた演歌のカラオケＣＤなのでした。
小節（コブシ）もビブラートも効かせ、効かせまくりで謡います……校歌を！
「♪陽光そそぐ学び舎に
我らを育む 寝子ヶ浜の風
また旅人が耳を澄ませば
波音安らかに聞こえん
自由な日々（ねこじまメモリーズ）寝子島高校 寝子島高校」
五月の祖父によれば、彼女の歌唱は「お前が作る蕎麦と一緒でまだまだ未熟」とのことですが、その歌唱力は聴衆の耳を奪うものでした。
五月は歌に魂を込めます。外から見るだけだった寝子島高校の門をくぐったあのときの何ともいえない感動と期待……そして寝子島への愛を存分に込めるです。
「ありがとうございました」
と深々と一礼したとき、ちょっとマイクスタンドに頭をぶつけてしまいましたがそれもご愛敬、笑いのこもった温かい拍手を五月は身に受けたのでした。
最初に舞台を踏んだのは、清らかな印象のある少女です。
「一番手を務めさせていただきます。御鏡 聖と申します」
白い着物に赤い袴、彼女は神社の巫女の扮装でした。
これは仮装ではなく本物、彼女の実家『水鏡神社』の制服なのです。すっと背筋を伸ばして立つと、涼やかで実によく似合います。
「演じものというよりは祈祷でしょうか。一年の始まりにして伝統、この新入生歓迎大祭を契機として、皆さんがこれからも健やかに過ごせるように、私はこれから、神様へ祈祷・奉納をする為の巫女神楽を披露しようと思います」
聖はマイクを使っていません。ですがその声は伸びやかに、講堂の隅々にまで届きました。
「まだ修行中の身ではありますけれど、私の想いを乗せた舞が神様まで届くように、そして、この舞を見てくれる皆さんにいい舞だと思ってもらえるように頑張ります」
深々と一礼、そして聖は左手（ゆんで）に扇、右手（めて）に鈴を持ち、しずしずと舞いました。
清流のように音楽が流れてきます。これは彼女が用意していたものです。
その音に乗せ精神を集中し、一心に祈り、四肢を動かすのです。
――未熟な私がこの衣装をまとって舞うことを、父は良しとしないでしょう。
彼女には確信がありました。
ですので彼女は父親を納得させるだけの舞を舞えるよう、ここのところ毎日、血が滲むような鍛錬をしてきた聖なのです。
優雅に見えるこの舞ですが、実は激しく体力を消耗するものでした。込める祈り……それが大きいほど、必要とされる技量は困難を極めます。途中で力尽きないようあらかじめ飲んでおいた砂糖が、胃の中でじわじわと溶けていくのを聖は感じていました。
神楽を舞いながら聖は、ゆっくりと繰り返し祝詞を唱えました。
扇を開く角度、鈴を歌わせる頃合い、いずれもぴったりと決まります。
最後に、しゃんと鈴を鳴らし、舞を終えました。
「ありがとうございました。これから舞台に上がる皆さん……皆さんのご健闘をお祈りしております」
倒れそうなほどに疲労していますが最後まで丁寧に礼をして、聖は清浄たる気持ちで舞台を降りました。
皆様に幸多かれ――これが彼女の祈りです。
幸多かれ。
「いい舞台でしたね」
舞台袖に下がった聖に、薄野 五月が声をかけました。
「ありがとうございます。あなたも頑張って下さい」
ほっとしたような笑みを聖は浮かべました。あとは着替えて、舞台袖で控える生徒たちに日本茶を注いで回りましょう。
心のバトンタッチ完了。次に脚光を浴びるのは五月となります。
幕で守られた舞台袖から、眩い光あふれるステージへ……五月は緊張気味の表情ながら、落ち着いて歩み出しました。
――この場は一年生全体の戦い。一人でステージに立つ方も、大勢でステージに立つ方も一緒。
つまりは団体戦です、という想いが五月の中にはあります。
だからこそ、同じ一年の仲間たちのために、少しでもこの場をあたためることができたら……と考えています。
中央に立てられたマイクスタンド。
マイクロフォンを軽く握って、ひんやりとした感覚を味わいつつ、右手の指でスイッチを入れます。ブツ、と音を上げて電源が灯りました。
「私たち一年生が先輩方のおもてなしをする『新歓祭』……実に、実に素晴らしいと思います。ですが私は何をしたものか……実に、実に迷いました」
そして彼女は言いました。歌を唄おう、と。
薄野五月の選んだ舞台表現は校歌の独唱です。
「それでは聴いて下さい」
五月の言葉が終わるとともに、哀愁のメロディが流れ始めました。
哀愁？ そうです。いやもっといえば、浪花節……。
いわゆるヨナ抜き音階です。そう、一般的にいうなら演歌調です。
これは五月が、祖父から借りてきた演歌のカラオケＣＤなのでした。
小節（コブシ）もビブラートも効かせ、効かせまくりで謡います……校歌を！
「♪陽光そそぐ学び舎に
我らを育む 寝子ヶ浜の風
また旅人が耳を澄ませば
波音安らかに聞こえん
自由な日々（ねこじまメモリーズ）寝子島高校 寝子島高校」
五月の祖父によれば、彼女の歌唱は「お前が作る蕎麦と一緒でまだまだ未熟」とのことですが、その歌唱力は聴衆の耳を奪うものでした。
五月は歌に魂を込めます。外から見るだけだった寝子島高校の門をくぐったあのときの何ともいえない感動と期待……そして寝子島への愛を存分に込めるです。
「ありがとうございました」
と深々と一礼したとき、ちょっとマイクスタンドに頭をぶつけてしまいましたがそれもご愛敬、笑いのこもった温かい拍手を五月は身に受けたのでした。
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
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- 2013年01月01日
- 参加申し込みの期限
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- 2013年01月08日 11時00分
- アクション投稿の期限
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- 2013年01月08日 11時00分
