テスト勉強はスイーツと共に？｜リアクション

テスト勉強はスイーツと共に？

（……ん？）
　時折椿姫から解説をもらいつつ勉強している征一郎は急にうつらうつらし始めた２人の様子に僅かに首をかしげた。因みに征一郎と傍らで古文の問題に奮闘しているシグレは幸い眠くなっていなかった。
「えーっと……、うん。なぁ神嶋、この現代語訳ってこれでいいのか？」
　シグレがプリントを見せながら声をかけると、征一郎は小さな溜息をついて、少し意地悪な笑をこぼす。
「教えて欲しいんなら、それなりに誠意ってモノを見せてくれないか？　ほら、『お願いします』とかさ」
「上から目線？　なんで俺がお前にお願いしなきゃならねぇんだよー？！」
　思わず眉間に皺がよるシグレ。彼は暫くの間渋りに渋ってから、か細い声で「お願いします」と言うが、それに対して征一郎は耳に手を当てて「ん？　何かいったか？」とジト目。シグレは少々自棄になりつつも真面目な顔をして、
「あぁ、もう！　言えばいいんだろう？　現代語訳が合っているか見てください、おねがいします！」
　それが良かったのかはさて置き、征一郎は鼻で笑った後にちょっと横柄な顔をして、
「そう言うなら見てやるよ」
　とシグレのプリントを覗き込む。と、征一郎が思う範囲でほぼ完璧と言える回答が書かれていた。
（こいつ、中々やるじゃないか）
　征一郎は「まぁ、いいんじゃないか？」と素っ気なく返す。
「お前……本当に可愛げがねぇのな」
　シグレの言葉に征一郎はそっぽを向く。そんな２人のやりとりに内心呆れながら、椿姫は溜息をつく。その傍らでは笑ってはいけない、と智也が後ろを向いて笑いをこらえていた。
「お二人共、瓜山先生にも笑われてよ？」
「なっ？」
　椿姫の言葉通り、近づいたメイが笑いを堪えている。
「征一郎さんとシグレさんは、仲の良いお友達なんですね」
　その言葉に苦笑しつつも征一郎は漢文の問題を、シグレは古文の問題を見せて答えを見てもらう。するとメイはにっこり笑って合っている、と教えてくれた。智也もまた漢文の翻訳に関して質問し、椿姫と共に解説をしてくれたのだった。

　そしてその後、征一郎が持っていた万年筆が書き潰れたのか、インクが出なくなる。手が止まっている事に気づいたシグレが万年筆を貸すと、思いのほか書きやすかった。その事に征一郎は驚く。
（しかも、インクの色がいいな……）
　上手く手になじむペンと、目に優しくわかりやすい色合いのインクを彼は気に入っていた。一方、シグレは征一郎から借りたペンをノートの端っこで試し書き。まだ書けたようでくるくると綺麗にインクが出る。
「なんだ、まだ書けるじゃないか。しっかし、良い万年筆だな」
　インクもいい色だし、と笑顔になるシグレ。２人はこのまま勉強を続けてみることにした。

　ちょっと離れていた所では、椿美咲紀がメイに起されていた。
「美咲紀さん、大丈夫ですか？」
「えっ？！」
　我に帰った美咲紀は顔を真っ赤にして「ごめんなさい！」と頭を下げる。それに少し苦笑するメイ。
「もしかして、テスト勉強で疲れているのですか？」
「だだだ大丈夫！　先生、ここのあたりについて教えてください！」
　慌てて英語のプリントを見せてアドバイスを貰おうとする美咲紀。メイは優しく微笑むとアドバイスをしてくれた。
　この後、美咲紀はポトスの傍で修と会い、数学を教えてもらう。その際、何故かドキドキしてしまって頬を赤く染めるのだった。