テスト勉強はスイーツと共に？｜リアクション

テスト勉強はスイーツと共に？

「なかなか難しいな……」
解理が呟きながら数学の問題を解いている横ではあやめが必死になって数学の公式を覚えようとし……て……いたが、
「やっぱりダメですぅ～」
　と、テーブルに伏せてしまった。
「ま、まだ勉強会は始まったばかりだぞ？！」
「きゅぅ～、外国語が……外国語が混じっているとダメですぅ～」
　肩を揺する解理に、あやめが恥ずかしそうに答える。彼女の脳裏によぎったのは中間テストでの追試でワースト１となり、大変不名誉な称号まで貰ってしまった事。流石に期末テストで赤点を取ったら今度こそ留年なのでは……と、戦々恐々なのである。
「どうしたんだい？　俺でよければ手を貸すよ」
　信彦があやめと解理に声をかけ、事情を聞き出した。女の子に頼られたい信彦としては、ここでいい所をみせておきたいのだが……今解理とあやめがやっているのは数学である。
（ラッキー♪　俺の得意分野だね！）
　信彦はにこっ、と笑うと公式に関して説明をする。外国語が苦手なあやめの為に「a」や「b」を「イ」や「ロ」に置き換えた為あやめはどうにか理解する。
　二人に感謝されるそばから、今度は夏朝が困った表情で信彦の袖を引く。
「あの、よかったら物理のこの問題とか……わかる？」
「勿論。この問題なら基礎となる方式を覚えれば簡単だよ！　教科書を見せてくれる？」
　信彦は慣れた手つきで図をノートに書き込みつつ説明する。噛み砕いた表現をつかったり、上手くできたら「いい感じだね～！」と笑顔で励ましたり、とあの手この手で夏朝を手助けする。
「ありがとう。君のおかげでなんとかやれそうな気がするっ！」
「礼には及ばないよ。１年２組の学級委員として当然のことだからね」
　爽やかに笑う信彦を見ながらなぎさは小さく微笑んだ。こうして共に学び合える事はとても楽しい。まぁ、信彦としては「レディと仲良くなるチャンスはふいにできない」という事なのだが。
「そういえば、さっきから女の子ばっかり教えている気がするけれど……」
「俺の得意科目は物理や数学だからね。数字に弱いレディが多いから、必然的にそうなるのさ」
　なぎさがポツリと呟けば、信彦がニヒルな笑みで答える。彼のそんな姿に苦笑しつつなぎさが自分の勉強をすすめていると、傍らに博美がやってきた。
「どうしたんだい？」
「いや、英作文のコツがわからなくて……」
　博美が正直に言えば、なぎさは優しく笑って頷く。そして、その文章が出来上がるまで博美の傍で細々とした所も含めて教えるのであった。
　そして夏朝は信彦に教えられた箇所を解きながら、ぽつりと呟いた。
「……猫さんが絡めば覚えやすいのに。その方がすっごく解るのに……」
　というのも、彼女の場合猫関連・猫を連想させる部分限定でかなり伸びるタイプらしい。物理の問題に猫が絡めば少しはマシになるのにな、と願いを込める夏朝だった。

　一方、ミリオンバンブーの近く。そこでは海斗と神無が数学の勉強をしていた。
「数学ってのは基礎ができてないとなぁ。まずは……こいつから始めていこう」
「この教科書にある公式を使えばいいっちゃね？」
　神無は教科書を開き、基礎の公式とそれに関する練習問題を選ぶ。海斗が必死に数式を解く姿を見つつ、神無は覚え方のコツなどを教えていく。
「公式さえ覚えればあとは当てはめたり応用するだけ。意外と簡単だろ？」
「そこまでの道のりが長いっちゃ……」
　苦笑する彼を神無が窘め、なんとなく居心地がいいな、と互いに思うのだった。というより、普段より気分が軽い。勉強も苦ではないな、という感じではあるが微妙に心が弾んでいる。
　休憩を挟んだ後、今度は神無が不得意とする世界史の勉強をする事にした。……が、その後、共に学ぼうとした仲間がある引き金を引いてしまうことになろうとはこの時全く考えていなかったのである。