テスト勉強はスイーツと共に？｜リアクション

テスト勉強はスイーツと共に？

承：さぁ、テスト勉強だ！

　勉強会が始まり、お菓子も運ばれてくる。美味しそうなお菓子の数々に歓声が上がり、思わず貴子が窘める。しかし、こればかりは止められないだろう、と唱華はくすりと笑った。
「今日は参加してくれてありがとうございます。皆さん、この時間を活かしてしっかりお勉強してくださいね」
　メイがやんわりとそう言い、参加者たちは皆真面目に頷いた。彼女の他、今回手伝いとして来ている貴子とレイは会場中を頻繁に動いて勉強を見てくれるという。貴子は眼鏡を正すと、何時ものように引き締まった顔で言った。
「これはあくまでも期末テストに向けた勉強会である事を忘れないように。いいですね」
　相変わらずの様子に其々げんなりするなり、苦笑するなりという反応だった。彼女が風紀委員長であるが故か、はたまた性格のせいなのかはさて置き、レイも少しだけ苦笑した。
「まあまあ、そんなに気負わなくてもいいよ。お菓子でも食べながら、それぞれのペースで勉強していってほしい」
　そして、傍らで様子を見ていた唱華に生徒たちへ何かアドバイスがないか聞くと、彼女は穏やかかつ丁寧な口調で言った。
「わたくしからも、１つ。人間の集中力は、１時間程度です」
　彼女の言葉に、数名の生徒が頷く。その様子に頷きつつ、彼女は言葉を続けた。
「勉強１時間につき１５分の小休止、前半と後半に分ける場合は１時間程度の大休止を設けるのが勉強時間管理のコツでございます。糖分使いますので休憩中は甘いものを取りましょう」
　お菓子に合うお茶や珈琲も用意している事を付け加えて彼女が微笑めば、僅かに歓声を上げる者がちらほら。思わずくすくすと笑うメイであったが、貴子が咳払いをするとそれも収まる。
「説明は以上です。それでは、皆さん。テスト勉強を始めましょう」
　メイの言葉とともに、生徒達は各々プリントを取ったり、教科書を広げたりして勉強を始めるのであった。

「うわぁ、どれから食べようかなぁ～！」
「まずは勉強から始めましょうか」
　お菓子に目が釘付けになったののこを蓮が窘める。その横で円がにこっと笑って声をかけた。
「それじゃ、少し勉強したらスイーツ食べちゃおうか？」
「そうだねー♪　うん、それがいい！」
　女の子２人の反応に、蓮は穏やかな顔で頷くと早速プリントをとってこようとした。そこを円が止める。
「？　どうしたのですか、桜庭さん」
「ふと思ったんだけどさー。ののこちゃんて勉強、どこまでわかるのかな？」
　その言葉に蓮はより真面目な顔になり、考えながら答える。
「見た限りではなんともいえません」
「ののこちゃん、今年『落ちて』きたでしょ？　小学校、中学校の勉学……つまりは下地が全くなかったとしたら……って思って」
　蓮は円の危惧を考え、それと前回の勉強会などを鑑み、わずかに頷く。２人は早速ののこに小学校と中学校の教科書から見せてみる事にした。そこからわかった事は、『勉強自体は苦手だが知識はそれなりにある』という事だった。具体的に言えば中学２年までの部分はある程度できるが、中学３年レベルはあやふやな状態と言えた。
（だったら、後は勉強を楽しませるだけでしょう）
（そうすれば、もっと勉強したくなるよね？）
　蓮と円は顔を見合わせて頷き合うと、次はどうやってののこをやる気にさせるかを考えつつ……３人で家庭科の復習を始めるのだった。
　この後、２人はののこが楽しく勉強ができるよう、『ののこが自分から質問できる雰囲気』を作る。例えば問題例をののこの興味がある物（例えば猫など）に関連付けてみたり、テスト範囲外でも、学んだ事を思い出す鍵となる話題を余談にしてみたり、等だ。円と蓮はののこに勉強する楽しさを少しでも体感してもらいたかったのだ。