Round5【PM1:40】

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【Ｄ３通路：PM1:44】

　息を切らしながらも、立樹から逃げ切った由貴奈は脱出路となるテナントの扉の前へと辿りついていた。
「はぁ……あぁ、疲れた……」
　重いケースを持ったまま、それも止まる事無く走り続けている由貴奈だが、当然体力は底を尽き掛けている。
　後ろからは、未だ叫び声や怒号が聞こえてくるが、それでも敵がこちらに向かってくる気配は無い。
「そういえば、これ使わなかったねぇ」
　胸元を触り、もしもの為に取っておいた弾倉が空の小型拳銃に触れる。
　最後の手段ではあったが、結果としては使わずに終わっていたのだ。
「まぁいいや。後ちょっとだし……とりあえず、外に出たら少し休もうかね」
　少しくらいならその時間はあるだろう。
　既に歩きに近い速度ではあるが、由貴奈はテナントの扉を開き、外へ通じる窓へ向かい走り出していた。

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【移動判定】
　壬生 由貴奈：Ｄ３→Ｄ１

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【Ｃ２：１Ｆ中央ホール内５（マフィア＆ヒットマンサイド）：PM1:40】

　ねむると修により、立樹と海美が行動不能な中で、刀達も動き出す。
「それで、瓢にーちゃんのそれって結局嘘なの？」
　陽太が居るロビー出入り口に向かう前に、庵はそれを訪ねる。
　結果として、由貴奈を逃がす事に成功した形となった瓢の行動ではあるが、刀とジニーは何時裏切るとも分からない瓢に対しより警戒をより強くしていた。
「はっは、どうかねぇ。知らないほうが身のためってもんよぃ」
　からかうように口にする瓢だが、既に二つのボトルは邪魔になる為に片方を捨てている。
　――それは、自ら嘘である事を自白しているようなものであった。
「ほねそぎくんみたいに、皆に迷惑を掛けちゃ駄目だからね？」
　その隣で、念を押すように海が庵に話す。
「見習っても構わないのよぅ？」
「おー、見習ってもいいのか！」
　カラカラと笑う瓢に、海は両手で大きくバツを作り庵に見せる。
「三人共、そこまでですよー。今は前を向いてくださいねー」
　短い談笑はここまで。
　状況に余裕が出来はしたが、未だここから脱出出来たわけではないのだ。
　その為に、三人もまた梢の言葉に従い正面を向き、脱出の為の行動に移っていく。

　各自の位置は、前方を刀とジニー、そして二人で挟む形で瓢が立つ。
　その後ろに梢が位置し、それを守る形で庵と海が同伴する形をとっていた。
「もしもの時はてめぇを盾にするからな」
「おやおや、手厳しいねぇ」
　ジニーの恫喝に近い言葉も瓢は笑いながら流す。
　瓢自身は自らの目的の大本は達成された為に、後は流れに従うつもりである為に。
「どちらにしろ、俺達は囮になるのが一番ですから。分かってるな、骨削」
　刀もまた、その意志は揺るがない。
　梢を逃がす、ただそれだけが目的なのだから。
「はいはい、分かってますよぃ。それじゃ、一丁いきましょうかねぇ」
　まるで散歩にでも行くように、気楽に瓢は口にする。
　――それが開始の合図となり、全員が一斉に陽太が待つロビー出入り口へと向かい走り出していた。

【Ｃ２：１Ｆ中央ホール内６（ヒットマンサイド）：PM1:45】

　ホール内にある階段で身を屈め、翼はその時を待つ。
　正面に見えるのは、こちらに背を向けた修の姿と、陽太に対して向かった６人の姿。
　――陽太がどこまで敵を引き付けられるか。
　それが、翼にとって重要な事であった。
「皆、私に気づいてませんね……これなら、行けるかもしれません」
　聞こえてくる音は、二度同時に撃った銃声と思しきもの。
　ここまで何度か聞こえた音とは多少違う事に違和感を覚えるが、それでも６人の足は止まらない。
「まだ、まだです……」
　チャンスは一度切り、ただまっすぐに梢の様子だけを確認し、翼は少しずつ周囲に見つからないよう階段から離れていく。

【Ｃ２：１Ｆ中央ホール内７（マフィア＆ヒットマンサイド）：PM1:43】

　姿を見せた陽太が、足止めの為に幾つかの瓦礫をジニー達に投げる。
　それらをケースで防いだ上で、前方を走る三人はまっすぐに陽太に向かって走ってた。
「あらら、駄目みたいねん。なら、こいつじゃどうかな？」
　瓦礫を離し、陽太は片手で相手から見えないように携帯を持ち、銃口を三人に向ける。
「来るぞ！」
　刀の一声と共に、銃声音が二度、断続して鳴り響く。
　刀とジニーはケースにより極力相手が見えるように顔付近を隠し、瓢は少し下がる形でその音を聞く。
「……外れたか？」
　誰にも被害は無い。
　ジニーはそれだけを確認し、ケースでの防御を解く事無く、まっすぐに陽太に向かう。
「チャンスだ、行くぞ！」
　刀が叫び、陽太が居る長机まで後一歩まで迫る。
　差し迫ったその位置で、陽太はまっすぐに三人を見据え――銃口を突出した刀に向ける。
「無駄だ、もう弾は――」

「残ってるのよん。残念ながら」
　――ここまで何度か聞いた銃声と犠牲となった透の姿。
　間近でそれらを見てしまったがゆえに、ジニー達を含めた梢達も警戒を先ほどの銃声を本物だと認識してしまっていた。
　だからこそ――今度は本物の銃声が、陽太に肉薄した刀の避けきれない位置で鳴り響く。
「っち！ 道化、覚悟決めろ！」
　残弾は残り一発、どちらかが犠牲になるのを承知の上で、瓢とジニーは陽太の動きを止めるべく陽太へと肉薄していく。

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【リタイア判定】
御剣 刀：弾丸ノ命中二ヨリ、リタイア処理

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【Ｃ２：１Ｆ中央ホール内７（マフィア＆ヒットマンサイド）：PM1:46】

「……っ！」
　その光景を、走りながら海は血が滲むほどに唇を噛みつつ見ていた。
「刀にーちゃん！ う、うぅ……！」
　ここまで行動を共にしてきていた刀が目の前で銃弾で倒れた事に、庵も瞳に涙をためながら必死でこらえる。
「絶対逃げなきゃ、ですよー……！」
　静かに、しかし冷静に梢は状況を確認する。
　ジニーと瓢、どちらかは倒れるかもしれないが、それでも一人は残る。
　その上で、海と庵が対応に向かえば、逃げ切れる可能性は高い事を。
　――だが、それも予想通りであれば、である。
「屋敷野！ 後ろだ！」
　真っ先に気づいたのは、周囲を見渡せる位置に居た修。
　立樹を押さえる為に動けないねむるとは違い、修はそれに――走り出した翼に気づいた時点で海美を気絶させ、援護の為に走り出していた。
「やしきのさんは、そのまままっすぐ！」
「早くいけー！」
　足を止め、海と庵はこちらに向かってくる翼に向き直る。
「っ……！ お願いしますねー！」
　一度後ろに向けた視線を正面に戻し、梢はそのまま走りだす。
　後は陽太をどちらかが抑えきれるか、梢が逃げ切れる可能性はただそれだけに掛かっていた。

　――鳴り響く最後の銃声。
　その音と共に倒れたのは、瓢であった。
「あぁ、駄目かい……参ったねぇ……」
　手に持ったボトルで目潰しを、その為に動きはしたが、それよりも早く銃弾は瓢の体を貫く。
　倒れる瓢に目をくれること無く、陽太は携帯を捨て、腰からベルトを引き抜く。
「散々やってくれやがったな……」
　残弾が尽きた以上、恐れる必要はない。
　背後から迫る梢の道を作る為にも、陽太が鞭のように振るうベルトを一度だけケースで防御した上で投げ捨て、そのまま一気に距離を詰める。
「がっ……！」
　防御を捨てた接近は、陽太にとって避ける機会を奪う。
　その上で――陽太の胸倉を掴み、ジニーは全力で頭突きを当てていた。
「逃がしゃしねぇよ、まだやりたりねぇからな……！」
　伊達眼鏡の下から陽太を睨み、ジニーは静かに怒りを籠めた言葉を発する。
　先手を取られた以上、陽太もジニーに対応出来る事以外の状況が消える。
　――その為に、梢は全力で走り、ロビーの扉へと手を掛け、突破を果していた。

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【移動判定】
　屋敷野 梢：Ｃ２→Ｃ３

【リタイア判定】
骨削 瓢：弾丸ノ命中二ヨリ、リタイア処理

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Round5 End

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Next Round【PM1:50】